第72話 神と呼ばれた者
真琴が呟くと黒い魔力が暴れた
それらは一切の容赦なく優樹菜達に襲いかかる
"死ぬ"その場にいる者全員がそう悟った
「おいペイン!これはどういう事だ!」
「知るか!何故だ?何故自我が降りていない!?」
大介はこの状況を作った張本人、ペインに聞くがペイン本人も分からないようだ。そうしている間にも魔力は暴走を続ける。かつては魔力が吹き荒れるだけだったが今では鎖のような形へと変化し、それが触れたものは例外無く生命を奪われていく。
ペインの当初の計画は真琴の心を折り、魔神化させる。魔神が真琴の身体に馴染むまでの僅かな時間はどうしても無防備になるのでそのスキに魔神ごと真琴を殺す予定だった。
しかし実際はどうだろう?魔神という自我はこの世界に降りず、ただ魔神の力を暴走させる存在が誕生したではないか。だからこそペインは焦る。
(マズい…このままだと、"二人を護れない"!)
「アイン!ツヴァイ!下がれ!」
「しかし!」
「うるさい命令だ!お前らでは足手まといだ!」
「…くっ」「…了承」
ペインの言葉に渋々と言った様子でアインとツヴァイは離れた。
「おいペイン!まさかお前まで逃げねぇよな?」
「…ちっ、分かったよ。あれを抑える」
奇妙な事に先程まで殺し合っていたペインと大介は共同するように鎖を避けながら真琴に近付きだした。
「何で…おじさんが」
「まぁ優樹菜ちゃん達は不思議でしょうね」
「おばさん」
「あれでも昔はお互いが背中を預けるぐらいに信頼しあっていたのよ…まったく不思議よね」
「一体…なにが?」
刻々と移り変わる状況に着いていけず混乱する優樹菜達に梨花は苦笑しながら話した。向ける視線の先ではついに真琴の眼前まで迫った2人が近接戦闘を繰り広げていた。
「…すげぇ」
「何であんなに連携出来るの?」
「本当、男って分からないわね」
「不思議ですよね」
「あの…俺も一応…」
優樹菜達が見つめる先では代わる代わる真琴に攻撃を加え、周囲の鎖を迎撃する2人がいた。
その中で唯一の男である悠一は若干気まずそうにしながらも目だけは離さずに見ている。魔神は2人の対応で精一杯なのか優樹菜達の所には鎖が届いてない。
「さ、そろそろ私達の出番ね」
「え?どういう」
「真琴を取り戻すんでしょ?まぁここからは王女様が説明してくれるわよね?」
「何故ご自分でやらないのですか…まぁいいですけど」
そう言ってティターニャは説明を始めた。
「とは言ってもそこまで難しい事ではありません。要は外側から干渉出来ないなら内側に入り直接旦那様を取り戻せばいいのです」
「内側?」
「旦那様の心の中のことです」
「え?待って、そんなの出来るの?」
「私達がいるわ」
「クロ、アルン」
優衣の疑問にクロが答え、横でアルンも自信満々に胸を張る。
「そうです。この娘達は旦那様の魔力が入っているので旦那様の内側に入り込めます。ただついていけるのはアルンとクロとあと一人が限界でしょう」
「ありがとう王女様、まぁそういう理由。それにしても旦那様…ね」
「…それはまた後程」
「そうしましょうか。で、私としてはあなた達の中から一人選んで貰いたい…というより優樹菜ちゃんに行ってほしいわ」
「わ、私ですか?」
ティターニャの説明が一段落ついたところで再び梨花が口を開き、優樹菜の方を見た。優樹菜は驚きを浮かべていたが優衣と悠一はどこか納得した表情だ。
「行ってこいよ優樹菜」
「悠一君…」
「それであいつを連れて帰って来い、そんで大団円だ」
「いやでも私は…」
「いつまでもうじうじしない」
「優衣ちゃん…」
「決めたんでしょ?ちゃんと伝えるって。正々堂々、全部伝えて来なさい」
「…分かった!」
「決まったようね」
2人に励まされ意思を固める優樹菜を微笑ましそうに見ながら梨花は声をかけた。
「大介さんとペインが真琴を抑えてるうちにアルン達と内側に入ってもらうわ。そっから先は自分を信じなさい」
「おばさん…分かりました」
「そんであの寝坊助を起こしてちょうだい。あ、あと呼び方はお義母さんでもいいわよ?」
「え?あ、いやそれは…あの、その…」
「離れろ!」
真っ赤になる優樹菜に少し場が和む。しかしそこに大介の鋭い声が飛び、全員が咄嗟に飛び退くとそこにペインと大介が飛ばされて来た。
「大介さん!何が…」
「してやられた」
「…え?」
「あいつは魔神なんかじゃない!」
しかし大介が答える代わりに横のペインが叫んだ。
「どういう…」
「そもそもが間違っていた!魔神なんて居なかったんだよ!」
「…は?」
その言葉に梨花は"何言ってんだこいつ"みたいな顔になる。先程まで魔神魔神と言いまくっていた奴が急に手のひら返しをしたのだ、そんな顔にもなるだろう。困惑する梨花は大介を見る。
「…おそらくその通りだ。真琴を見てみろ、理性があるように見えるか?」
「…いえ、でもこの力は」
「おかしくないか?この力は間違いなく魔神レベルだ。だったら何故魔神自身の自我が降りてこない?始めは暴走した事が原因かと思ったがそうじゃない。俺達が魔神と呼んでいたのは多分別次元に存在する膨大な力の塊だ。それが少しこの世界に流れ込んでいるんだろう。恐らくそれが魔族だ」
「な、なら真琴君は」
「あいつは今その力がある次元とこの世界を繋ぐパイプみたいなものだ。しかし上手く体外に出れずに今もあいつの中で暴れ回ってる」
「もし、このままだったら」
「完全に真琴という人格が消えれば奴はただ無限に強化され続ける死と破壊の化物に変わり果てる。ただ永遠に殺戮をし続けるだけの兵器になるさ」
「そんな…」
「その証拠にこの短時間で俺達2人をすっ飛ばすぐらいに成長したんだ。もうだれもあれを止められない」
優樹菜達の質問に大介とペインは己の仮説を説明する。確かにそれなら全てに辻褄が合ってしまう。
(でも…)
「な、ならどうすれば真琴君を」
「心配するな。やる事は変わってない」
「助け…え?」
「要は真琴が心を取り戻せばいい。後は自分で何とかするさ」
ペインの投げやりな返事。しかし言っている事は間違っていない。
「…そうですね」
「やろうか」
「うん!」
「でも…どうやって近付けば」
「クロちゃん…でいいか?俺が鎖を一瞬退けるからそのスキに飛び込め」
「…分かったわ」
みんなが気合を入れ直す中でふと思った疑問を上げるが大介達が何とかしてくれるようだ。しかしそこでペインが待ったをかける。
「ちょっと待て。行くのはダッドと内側に行く3人だけにしろ」
「え?どういう」
「…来たか」
優衣の疑問に答えず一言呟くと次々と武器を構えるペイン達。ペインは辺りを警戒しながら説明した。
「恐らく魔族が誕生したのはその力を浴びた影響だ。そして真琴は今その力の塊だ。当然周囲には魔物が生まれる」
「え?」「そんな…」「こんなに…」
ペインの言葉を証明するように次々と暗がりから魔物が起き上がる。その数は優に100を超えるだろう。
「早く行け、今あいつは力の使い方を分かってない状態だ。近付くなら今以外無い」
「優樹菜ちゃん行くぞ」「優樹菜行って!」「真琴起こしてこい」
「旦那様を、頼みます」
「…はい!」
みんなの声を背に優樹菜、アルン、クロ、大介の4人は未だに暴走する真琴に突っ込む。
「…優樹菜ちゃん、息子が迷惑をかけるな」
「真琴君が困っているなら助ける、こんなの当たり前の事ですよ」
済まなさそうな大介に優樹菜は何を今更と言うように返す。そんな彼女に大介は少し驚いてから可笑しそうに笑う。
「ああ、そうか当然か。あいつは幸せなやつだ」
「それは…」
「お話中のところ悪いけど来るわよ」
話の途中でクロの警告が飛ぶ。前方から鎖が飛んできてその奥では真琴が中途半端に霊装を纏った状態で頭を抱えて苦しんでいた。
「5秒、それが絶対に稼げる時間だ」
「任せて!」「それだけあればお釣りが来るわ」
「そうか…君たちも、真琴を頼むよ」
「うん!」「ええ、当然よ」
「よし、行くぞ!」
大介の号令で一気に突っ込む。迫り来る鎖は全て大介に任せ、ただ走り抜けた。
「ユキナ!手を!」
「アルンちゃん!」
「行くよ!」
3人で手を繋ぐと倒れ込むように真琴にぶつかる…直前で少しの浮遊感と共に優樹菜は意識を落とした。
(もうすぐ…もうすぐ行くからね!)
いかがでしたか?
魔神とは実は別次元に存在する膨大な力の塊でそこから力が異世界に流れ込んでそれを浴びた結果魔物(魔族)が生まれる。
これが真相でした!
さあ、力が暴走し続ける真琴はどうなるのか!?
明日投稿する予定なのでよろしくお願いします!
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