第69話 父さん
長い間すみませんでした!
投稿再開します!
「それで…」
「三咲ちゃん!」「行きます!!」
ペインが言い切るより早く彼女たちが動く。
それに左右に居たフードの二人が反応するが
「させないわ!解放!」
梨花がそう叫ぶとある魔法を起動させる。すると彼女たちに突然光る鎖が巻き付けられ、身動きを取れなくする。おそらく事前に仕込んでおいたのだろう。
「これは!?」「…生意気」
「アイン!?ツヴァイ!?ちっ、キサマ!」
「余所見は厳禁です!解放!」
ペインの気が逸れたスキに三咲が後方に回り、梨花と挟む形になる。そして三咲の魔法で先ほどと同様の鎖がペインに巻き付く。
「梨花さん!」
三咲の声に一度頷くと梨花は目を閉じて静かに言葉を紡ぐ。
「"天上におわす我らが神よ、かの者の内に住みし悪霊を払いたまえ、打ち消したまえ…かの者に自由を"『ディスペル』!!」
(これは…古代魔法!?)
以前図書館で読んだ本によると古代魔法とは、はるか昔に使われていた魔法だ。威力はとても強い、しかしその難易度の高さと詠唱の複雑さから現在はほとんど使用されていない。
梨花が浄化の魔法を唱えるとペインは光の柱に包まれた。一瞬ペインの姿がブレて見えたと思ったら目も開けられ無い程に強く瞬いた。
そして光が収まるとそこには一人の男性が倒れていた。
「ん…こ、こは?……梨花?」
「おはようございます大介さん。気分はどうですか?」
「…あぁ、そういう事か。うん、大丈夫だ。
…ただいま、梨花」
「おかえりなさい、大介さん」
そう言って彼らは抱き合った。
「…さて、少々名残惜しいが話を進めようか。とりあえず三咲さん、ありがとうございました」
「い、いえ私は別に…とにかく大介さんが無事に戻って来られて良かったです」
「三咲ちゃん、私からも改めてお礼を言うわ。私と大介さんを戻してくれてありがとう」
「…どういたしまして、です」
「それと、真琴…だよな?」
「…はい」
かなりの急展開に置いて行かれそうになりながらもなんとか返事を返す。目の前にいるの人は姿はペインの時と同じだがその時とは少し違う…何というか本当の父さんだと思えた。
その父さんがまっすぐにこちらを見て、頭を下げた。
「今まで、本当にすまなかった」
「…え?」
これまた急な事に固まってしまう。
「お前は多分俺を恨んでいるだろうし、憎んでいるだろう。今更許してくれなんて口が裂けても言えないし言う資格も俺には無い。これはただの自己満足だ、それは分かっている。ただ本当にあんなに迷惑をかけてすまなかった。今まで…本当にごめんな」
「…」
ただ黙って父さんの言葉を聞いていた。それは本当にただの自己満足だ、ただ父さんが勝手に言っただけでその言葉で全てが無くなる訳がない。だからこんな言葉を聞いても
「兄さん…何で、泣いているのですか?」
(…え?)
「あれ?」
ルナに声をかけられて初めて自分が泣いているのに気付く。
「あ、はは、おかしいな?あれ?何でだろ?」
「真琴…」「真琴、ごめんな」
気がつくと父さんと母さんに抱きしめられていた。
「ど、どうしたの?急に」
「真琴、お前を置いて行って本当にごめんな」
「あなたを一人にして…ごめんなさい」
全身に感じる温もりを感じて自然と言葉が零れる
「…はは、何だよ今更」
「ああ、本当に今更だ。本当に…」
「今までずっと黙ってて、急に出てきて」
「ごめんなさい、今更どの面下げてって思うかもしれないけど」
「…本当に…本当に今更だよ」
真琴は静かに泣いた。
両親に抱きしめられながら静かに涙を流した。
(あぁ…僕は寂しかったんだ。口ではあんな事言ってたのに…ただ一人が怖かったんだ)
その時にようやく真琴は自分はただの寂しがり屋だと気付いた。両親に置いて行かれて寂しかった、だから自分を見てあそこまで必死に謝ってくれる二人を見てすごく嬉しかった。自分はいらない子では無かった。忘れられてた訳じゃ無かったと気付けたから。
だからこそ涙が出てきた。初めて間近に温もりを感じる事が出来たから
「…おかえり、父さん」
「…ああ、ただいま」
「おかえりなさい、母さん」
「…ただいま、真琴」
そうして3人は再会を喜び静かに抱き合っていた。
それを少し後ろで見ていた三咲は近くに少し寂しそうな顔のルナを見つける。
「あなたは行かなくていいのですか?」
「…今私が行ってもただのお邪魔になるだけです」
「それは…そうかもですね。でもなら何でそんな顔をしているのですか?」
「それは…」
「大切なお兄さんが取られて寂しいですか?」
「そ、それは!それは…でも兄さんに悪いです」
「…あなたはもっと甘えても良いと思いますよ。きっと真琴君もそれを望んでいます」
「…でも」
「ルナちゃん、私の手を握ってもらえますか?」
「…別に、いいですよ」
唐突な三咲の言葉によく分からないまま手を繋ぐ。すると自分でも驚くぐらいの安心感が心を満たす。
「ありがとうございます。やっぱり人と触れ合うのはいいですね」
「…ありがとう、です」
「はい」
三咲の裏表の無い笑顔にルナは少し恥ずかしそうに俯いた。
「さて、それでは改めまして」
あれから少しして、お互いに落ち着いた辺りに三咲先生のこの言葉でとりあえず全員が円になるように座る。順番は父さん→僕→ルナ→母さん→三咲先生だ。
「…ルナはそこでいいの?」
「め、迷惑でしたか?」
「いや、ルナが良いならそれでいいよ」
何故か僕にぴったりとひっついて座るルナ。三咲先生が笑っているので恐らくさっき何か吹きこまれたのだろう。でもまぁ良しとしよう。
ちなみにさっき全員の簡単な自己紹介は済ませた。
「でも父さんと母さんに2つ名前があったなんて」
「まぁでも私はどっちも同じだけどね」
「俺はどうしても響きが合わなかったからな」
そこで知ったのは両親に2つ名前があった事だ。二人とも異世界出身なので当然こっちの世界の名前もあった。父さんこと工藤大介はダッド、母さんこと工藤梨花はリカだそうだ。地球に来たときに戸籍登録の際漢字を当てはめようとしてこうなったそうだ。
(そう言えば母さんが時々ダッドって呼んでたな)
「それで…ええと二人はどうして僕を置いて行ったの?」
それはある意味一番気になる事。何故両親はあの事件の時に真琴を連れて行かなかったのか。
「それは…置いて行ったというより連れて行けなかったと言った方が正しいな」
「連れて…行けなかった?」
「あぁ、あのゲートを超えるのはそれなりに体力、精神力が要る。それと俺達は奴に対してお前を守って戦うだけの力が無かった。だからお前は連れて行けなかった」
「なるほど…」
「まぁでも唯一にして最大の誤算は…予想以上にペインの動きが早かった事だな」
「というと?」
「本当はあと1ヶ月後のはずだったんだ、今までの支配速度から考えて。だから俺達はそれに合わせて計画を立てた。当初の予定では俺はペインに悟られ無いように自分から異世界に戻りそこで一回奴に体を渡す、梨花は後を追ってこっちでさっき奴に放った古代魔法で祓う。これが最善だった」
「あれ?でもあの時」
おかしい。父さんの話だと今までの言動に矛盾点が生じる。
「あぁ、それはあくまでも最善策だ。でも現実には俺は完全に乗っ取られ梨花は仮死状態、想定していた最悪のケースになった」
「…」
「奴は俺達の計画を知っていた。だからわざとゆっくり支配して、あの日に一気に俺を支配した。突然すぎて俺もなす術が無かった。そして奴は俺達が二度と歯向かう事の無いように完全に支配しようとした」
「完全に、支配?母さんも?」
ちなみにこの世界の魔法での支配には二通りの方法がある。一つは対象の自我を封じる方法。しかしこれは今回のようにいつ、何かの拍子に自我が蘇ってしまう事が多いのが欠点だ。しかしそれを防ぐ方法、つまり永久に支配する事も出来る。それが2つ目の方法、対象自我を封じた上でその対象の心を折る方法だ。これをすると対象は二度と目覚めず、ただの抜け殻と化す。これなら確実に支配出来るが、そもそもの難易度が非常に高く現在ではほぼ不可能だと言われている。
(わざわざそうな難易度の高い事を?ならいっそう殺したほうが…)
口封じなら殺したほうが早い。なので母さん達を支配する(それも完全に)その必要性が分からずに首を捻る。すると反対側の母さんが理由を話す。
「さっきも言ったけど私達は生まれがちょっと特殊でね、それが彼にとって利用価値があると見込まれたんでしょうね。ペインは異世界に帰るついでに私達の身体も手に入れようとしたの」
「だから…支配を」
「と言うか私達の心を折って完全に自我を殺そうとしたのよ」
つまり実験か何かのために父さんと母さんの身体が必要だったから父さん達の自我を殺そうとしたと。
「でもどうやって?」
「それは…」「奴は…お前と梨花を殺そうとしたんだ」
真琴の質問に母さんが言いにくそうにすると横から父さんが言った。
「僕…を?」
「ああ、奴はわざわざあの日俺を完全に支配するのでは無く僅かに五感を残したんだ。だから俺は異変に気付いた梨花がお前を庇って奴に殺されかけ、お前さえも殺したかけるその全てを感じていた。自分の身体が勝手に動いて家族を殺そうとするのはものすごく怖かった」
つまりペインはわざと父さんの身体で母さんと僕を目の前で殺す事で完全に支配しようとした?
「でもギリギリの所で私は自分に仮死状態になる魔法をかけれた。だからペインは私が死んだと思ったの。それに真琴は…気絶してたから」
(て事はペインは母さんは仮死状態、僕は気絶したのを見て死んだと判断した。それで利用価値のある母さんと一緒に父さんの身体で帰った)
「まぁそんな感じでペインはゲートで俺と梨花をこっちに運び、お前は瀕死で残されたのさ」
「…よく助かったな、僕」
改めて聞くと物凄い話だ。ていうか何で僕は助かったんだ?
その疑問が顔に出てたのか母さんが答えた。
「ちなみにあなたを助けたのは三咲ちゃんよ」
「…先生が?」
「そ、実は真琴が気絶したすぐあとに三咲ちゃんが来てね、あなたを助けて警察に通報してくれたの。まぁ本当なら真琴は三咲ちゃんに育ててもらうはずたったんだけどね」
「…え?」
寝耳に水のような言葉に思わず三咲先生の方を見る。すると彼女は申し訳なさそうに顔を伏せた。
「でもそこで私はペインに同行するように言われたので…。ようやく地球に帰れたと思ったらかなり時間が経っていてびっくりしましたよ、真琴君も何とか自立してますし。だから私は先生という形であなたを見ていたんです」
「それであの日…」
「…ペインから急に帝国が勇者を召喚するのでそれに干渉して真琴君とその弱点であろう人を転移させろと言われて」
「なるほど…」
物凄く突飛な話だがこれで一連の流れは理解出来た。
「でもなら何故ペインは僕を召喚したんだ?」
しかしこれだけが解せない。それに未だにペインの目的すら分からない。
「知りたいか?それは俺がずぅとこの状況を待っていたからだよ」
唐突に何も無い空間から声が上がる。
初めて聞く声だが独特の神経を逆撫でするような喋り方はそのままのようだ。
「何でもう起きてんだ?ペイン」
そう父さんが警戒しながら声のした方を向くとそこに闇が集まってきた。比喩でも何でもなくただ部屋の暗さも明るく思える程の漆黒の闇が集まる。するとそこに人影が現れた。
背丈は父さんと同じくらい、整ってはいるがどこか疲れたような顔つきをしている30代ぐらいの痩せ型の男だ。
「おいおいダッドぉ、久しぶりの上司にその態度はどうなんだ?」
「さんざん人を実験台にしといてよく言うよ。特別手当がほしいぐらいだね」
「はっ、冗談はその顔だけにしとけ」
会話の内容は軽いがお互いに目をそらさずに睨み合っている。
「真琴は下がってなさい。三咲ちゃん、頼むわよ」
「はい」
「兄さん…」
「ルナは僕の後ろに」
その後ろでもいつ戦闘が始まってもいいように構える。そんな僕達をペインは面白そうに笑いながら見ていた。
「アイン、ツヴァイそろそろ来い」
「「はっ!」」
ペインの奥からフードの二人組も戻ってきた。
「もうあの鎖解いたのね、割と自信作だったのに」
「あの程度」「余裕」
「まあまあその辺にしとけ。で、ダッド中々面白そうな事してるじゃねぇか。俺も混ぜてくれよ」
「お断りだ。それにお前の計画もここまでのようだしな」
「ほう…なら聞こう、俺の計画は?」
「この世界の完全支配。その為に私達の身体や真琴の魔族化を進めて一気に方をつけようとしたんだろ?」
「まぁ…大筋は間違っちゃいねぇな」
「…」
どうやらまだ何か隠しているペインを訝しむ父さん。だがペインはそんな事気にせずにその後ろを、未だ鎖に繋がれている僕を見てニヤッと笑う。
「でも残念、ハズレだ」
いかがでしたか?お父さん復活です!
梨花が古代魔法を使えた事や大介の過去などは折を見て説明出来たらな…と思っています。
感想、意見お待ちしておりますm(__)m




