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第68話 再会


「兄さん…」

「そろそろ、かな?」


今、真琴とルナはとても緊張した面持ちで時が過ぎるのを待っていた。全ての原因はあの三咲先生からの手紙だ。あれを読んでから頭の中を整理しつつ次の食事の時まで待っている。その時に少しルナに真琴の過去について教えたのでルナも何となくだが緊張している。


その時通路の奥から足音が聞こえて、ルナが反射的に真琴の腕にしがみつく。

(来たか…)

さて、どうなるのか…とても緊張する。


「み、三咲ちゃん…本当に大丈夫かな?」

「まだ言いますか…ちゃんとして下さい梨花さん!大丈夫ですよ!」

「うぅ…大丈夫かな?真琴分かるかな?」

「あぁもう!いつもの威勢はどうしたのですか!ほら背筋伸ばす!」

「は、はい!」

「か、肩!肩の力抜いて下さい」

「はいぃ!」

「もう先輩落ち着いて!スグそこですよ!」

「え?いや、どうしよう声とか…」

「バッチリ聞こえてますよ多分!」

「う、どうしよう…」


…とても緊張、する?


「…兄さん」

「ルナ、お昼寝しようか」

「え?ちょっ兄さん良いのですか?」

「ほっとこう」

「え?え?えぇ!?」


もうさ、ほらシリアス?何それ美味しいの?ぐらいの勢いだよ。さっきまでの緊張返せ。

と、ここでようやく先生達が牢の前にやって来た。

(…え?)

が、牢の前の人影を見て真琴は一瞬フリーズしてしまう。そこに居たのは何処か申し訳無さそうな顔をした三咲先生、そしてその後ろにフードを被った人物。

(え?待って、あのフードって確かドライとか言ってた人が被って…)

思わず動揺して固まる真琴、どうしていいか分からないルナ、そして何故か驚いた顔で固まる三咲先生。

そんな奇妙な沈黙を破ったのは


「ちょっと三咲ちゃんどういう事!?何で真琴が、こんな」


フードの女性…いや、母さんだった。彼女はいきなりフードを取ると牢の鉄格子を蹴り破り(比喩では無く本当に蹴り破った)真琴に走り寄ろうとする。真琴はフードの下から本当に母親の顔が出てきた事に驚き固まっている。


「ち、ちょっと待ってください!」

「…あなたは?早く退いてくれるかしら?」


が、そこに今まで固まっていたルナが割り込むと両手を広げて行く手を遮る。梨花はかなり苛立った様子で仕方なく立ち止まった。一方ルナは恐怖で全身を震わせながらも意地でも退かないと母さんを睨んでいる。


「わ、私はルナです。あ、あなたこそ何ですか!いきなり兄さんにこんな事」

「何よ、目の前で息子が怪我してるのに治したらダメなの?だいたいあなたは一体真琴の………え?"兄さん"?は?」

「む、"息子"?え?」

「…ちょっと真琴、これはどういう事?」

「…ちょっと兄さん?どういう事ですか?」


そんな二人して僕を見ないで下さい。


「いい加減にして下さい!」

「あたっ」「にゃっ」


ついに見るに見兼ねた三咲先生が両者の頭を叩いて割り込んだ。


「ちょっと三咲ちゃん!」

「梨花さんも落ち着いて、ほら真琴君も固まってるし」

「え?あ、いや…その…」


そこでようやくこの状況を思い出したのか母さんは小さくなって下がる。


「て、違う!真琴、ほら早く傷、怪我見せて!」

「だから落ち着いてって言ってるでしょ!」

「あだいっ」


今度は割と本気で拳を叩き込んでようやく母さんは止まった。


「る、ルナも落ち着いて」

「けど兄さん、あの人は」

「大丈夫、多分……と言うよりほぼ確実に僕の母さんだ」

「え?でも兄さんのお母さんは…その」

「…死んだ、はずなんだけど」


他でも無い真琴自身が母さんが事切れるのを看取った、なので本当に死んだと思っていた。しかし今自分の目の前に居るのはほぼ間違いなく自分の母だと真琴は言える。彼女の口調、性格、雰囲気、立ち振る舞い…どれをとっても真琴の記憶している母親のそれだった。他人ではここまで再現はほぼ不可能だろう。

(一体…何が)


と、ここで両者落ち着いたのを見計らって三咲先生が口を開く。


「ちょっと色々ゴタゴタしていますが、とにかくご飯にしませんか?」




三咲先生の言葉で全員がとりあえず腰を下ろした。全員が一息ついたのを見計らって三咲先生が口を開く。


「それでは改めて、お久しぶりですね真琴君」

「ご無沙汰してます先生。えぇとそれで」

「その前にいいですか?真琴君」

「せ、先生?」


唐突に居住まいを正すと頭を下げた三咲先生。真琴は全く訳が分からずに混乱する。


「今まで…いえ、今もですけど私の勝手な判断で真琴君をこんな目に合わせてしまい本当にすみません」

「…真琴、私からもいいかしら?」

「母さん?」


と、ここで母さんも三咲先生の隣で頭を下げた。


「多分今の状況を正確に理解していないでしょうけどこれだけは勘違いしないで。三咲ちゃんが今回やった事は全部私が指示した事なの。彼女はなんの非も無い、それだけは分かって」

「…」

「それと、あの時の事を含めて何を今更って思うかもしれない。あなたに本当に大きな迷惑をかけてしまって、本当に…すみません」


辺りを少し静寂が包む。


「…二人とも顔を上げて下さい。さっき母さんが言った通り僕は今の状況を全く理解してません。だから今は判断出来ません。ただ…三咲先生、あなたが何故あんな事をしていたのか、ちゃんと説明をお願いします」

「もちろんです」

「それと…母さん。僕は正直まだ半信半疑だけど多分本当に僕の母さんだと思ってます。だからそんな他人行儀じゃなくて工藤梨花として、僕の母さんとして普段通りにして下さい。じゃないと僕の方が変な気分になります」

「…分かったわ。ありがとう真琴、それと「ごめんなさいは無しですよ」…」

「それはさっき聞きました、もう充分です。とにかく説明をお願いします」

「ええ、分かったわ。

その前に…真琴、あなたの怪我を治療をさせてもらっていいかしら?」

「お願いします」


とりあえず謝罪は終わったようだ。真琴としても担任と母親に頭を下げられて中々に居心地の悪い時間だった。

一息ついた時に横で魔法で傷を癒しながら母さんが口を開く。


「それで…真琴、そろそろこっちをすっごい睨んでるあの娘を紹介してくれるかしら?」

「え?あ、」(ヤバいルナの事忘れてた)


慌てて横を見ると真琴の腕を掴んで隠れながらも目だけはしっかり母さんをロックオンしているルナがいた。


「ほらルナ、この人が僕の母さんだよ。母さん、この娘はルナって言って僕の……妹?だよ」

「…はじめまして、ルナっていいます。よろしくです」

「は、はいこちらこそよろしく。真琴の母の工藤梨花です……じゃなくて!え?あれ?私一人しか産んで無いよね?あれ?三咲ちゃんこれ私がおかしいの?」


案の定母さんは混乱している。話をふられた三咲先生もよく分からないって顔をしていた。


「えーと母さん、実は——」


一応ルナに確認を取ってから事情をひと通り説明する。


「ーという事があって」

「なるほど、ね。事情は分かったわ。つまりルナちゃんは私の娘って事ね!」

「な、何でそうなるのですか!」


ここで今まで黙っていたルナが慌てて声を上げる。


「え?だってルナちゃんのお兄ちゃんは真琴でしょ?」

「そ、それは確かに兄さんはマコトさんですけど」

「なら私の娘って事よね!」

「ぐぬぬぬ…」


何故か認めようとしないルナだが母さんの言葉に反論出来ずに悔しそうに唸る。


「母さん嬉しいわ!こんな可愛い子が娘なんて!」

「私は!絶対に認めませんからね!」


そう怒鳴るとルナはいじけた感じで真琴の横にしゃがんだ。それを母さんは楽しそうに見ていた。


「さて、それではそろそろ事情を説明しましょうか」

「その前に…ここ寒くない?ちょっとごめんね」


一区切りついたところで三咲先生が話を切り出す。が、その前に母さんは魔法で部屋の端にストーブのような物を出す。大分暖かい。

物理的にも心理的にも場が暖まったところで母さんは話し出した。


「…そうね、何処から話しましょうか。とりあえず三咲ちゃんは私が行っていた大学の後輩で普通に地球の人だからそれは安心してね」

「とりあえず…まぁそうですけど」


割と雑な紹介に三咲先生は渋面になりつつも同意する。


「そして私はあなたの母親…今の私がそう言って良いのかしらね。とにかくあなたを産んで育てたのは私よ」

「…」

「とにかくこの状況を説明するには私とダッド…大介さんの過去から話す必要があるわね。でもその前に…真琴、今までの事で私達の事をあなたが信じれなくなってるかもしれない。それを直せなんて言うつもりはサラサラ無いわ。でも今から話す事は全て真実、それだけは信じてくれる?」

「う、うん」


滅多に見ない母の真剣な顔に背筋を伸ばす。


「ありがとう。そうね…この世界、アースハイドは私と大介さんが生まれて出会った、私達の故郷。つまり私達は地球ではなくこの世界出身よ」

「…は?」

「あなたは不思議に思わなかった?自分の祖父母の事とか。そもそもなんで地球とこの世界が繋がっているのか。なんで自分達が呼ばれたのか」

「…!」

「最初は本当に偶然だったの。ある研究チームが時空を超える魔法の研究の過程で偶然地球を発見した。研究者達は歓喜したわ、この星とほぼ同じ気候で魔物という脅威の無い星の発見に」

「その研究者って」

「ええ、その中に私と大介さんはいた。元々少し特殊な事情を抱えていた私達は遠い辺境の村に住んでいたんだけど研究チームにスカウトされて一緒に研究していた。そしてあの星を見つけたの」

「いや…でもなら何故地球に?」

「そうね…私達はずっと安全で安心出来る場所を求めていた。だからあの星を見つけた時に移住しようと考えた」

「移住…」

「もちろん凄く揉めたわ。何せ向こうは右も左も分からない未知の世界だったから。でも私は大介さんとなら何処でも行ける、そう確信して二人で立候補したの。それからも凄く時間をかけて議論して結果私達を含めた10人が地球に飛んだの」

「…」

「飛んでからも色々大変だったけど何とか言葉を覚えて、大学で学んで、暮らせるようになったの」

「ちなみに他の人達は?」

「…彼らはどうも馴染めなかったみたいでね、私達以外はすぐに帰ってしまったわ」

「母さん達は?」

「私達はすぐに…とは行かなかったけどまぁ馴染めたわ。それに三咲ちゃんを含む色々な人に優しくして貰えてね、何とか暮らせたの。それと…どうも事故が起きたらしくってね、他の8人が帰った後で壊れちゃったのよ、ゲート」

「…え?なら母さんは」

「帰りたくても帰れなかったの。それでかも知れないけどどうもこの世界では地球ですぐに死んでしまった事になってるらしいのよね。帰ってからびっくりしちゃった」


そう母さんは寂しそうに笑う。

(それって…つまり他の8人は母さん達みたいに馴染めずに逃げた事を隠すためにわざとゲートを壊した?自分達の失敗を隠すために。そしてそのせいで母さん達は故郷に帰れずに地球で)


「あ、でも勘違いしないでね。確かに心残りはあったけど元々私達は地球で定住するつもりだったのよ。だからそこまで深刻な事にはならなかったの。それに三咲ちゃん達もいたしね」

「いや、でも母さんは…」

「それにね、私には大介さんが居たし大介さんには私が居た。そして何より私達には真琴、あなたが居た。私達は決して一人じゃ無かったの。だから私達もそこまで言うつもりは無い」

「…」


真琴としては不本意ではあるが母さんがそれで納得してるなら、と引く。


「話を進めるわね。さっきも言ったけど私達は帰れなくなったけど三咲ちゃん達が居たおかげで家も出来たし、収入を得る事が出来た。地球で生きていく事が出来たの。だけどそんな生活は10年ちょっとが限界だった、彼が…私達の研究リーダーが来たの」

「…まさか、魔王って」

「リーダーの名前はペイン、今は魔王って名乗ってる人よ」

「…」

「私達が居ない間にアースハイドはかなり変わったらしくてね、彼は何かの為に他の星を乗っ取ろうとしていた。だから地球に目をつけた。でも唯一のゲートは壊れてしまって使えないから何とかして声を地球に届けようとしていたらしいわ」

「い、いやちょっと待って。奴の、ペインの話だと父さんが」


ペインは前に真琴に大介がアースハイドに来ようと研究していたと言った。でも母さんの話だと戻りたがった様に見えない。なら父さんは何で…


「大介さんがゲートの研究をしていたって言ってた?」

「…うん」

「それは…本当の事よ」

「な、何で!?母さんはさっき」

「…やっぱり、帰れないって言うのは想像している以上に辛い事だったのよ。私には大介さんと真琴が居た、三咲ちゃんが居たからまだ大丈夫だったけどあの人は…大介さんは私達を守る立場として色々大変だったのでしょうね。私達が何かあった時に避難出来るように何とかゲートを復活させようとしたの」

「なら…」

「それと時を同じくしてペインも同じ事をしていた、だから大介さんは彼に体を乗っ取られたの」


突然だがこの世界には相手を乗っ取る魔法は存在する。ただそれは自分の魂を相手の体に無理矢理入れるので相手が自分より強かったり、相性が合わなかったりすると失敗するためあまり使われてない。

しかし今回はアースハイド側と地球側の両方から繋げようとした為、ペインは自分の魂を地球に飛ばす事が出来たのだろう。そして父さんは元はアースハイド出身だ、相性もそこまで悪くは無かったと思う。だから乗っ取られた。


「もちろん大介さんも抵抗したと思うわ。でもペインは狡猾だった、何回にも分けて徐々に乗っ取ったの。だから周りの人は気付かなかった。私が気付いた時にはほとんど手遅れだった」

「…それで?」

「大介さんがまだ正気を保ってる時に三咲ちゃんと三人である計画を立てたの。このままだといずれ私達は殺される。だからわざと殺されたように見せかけて仮死状態でアースハイドに戻ろうって」

「っ!?」

「でも一人だとどうしても私を運ぶ人が居なかったから三咲ちゃんにお願いして手伝ってもらったの。具体的にはペインの下に入って、大介さんを戻す方法を探ってもらってたの」

「もぅ…本当に大変でしたよ。後で何か奢って下さい」

「あら?生意気な後輩ね」


そしてまたふざけ出す二人。そんな彼女たちを呆然と見ながら真琴は今の話を整理しようとしていた。

(…え?じゃあ母さんは殺されたんじゃ無くて死んだふりを?それで父さんとこっちへ?え?でも、なら…何で……)






「さーてここで問題です。何故真琴君は置いて行かれたでしょーか?」

「…え?」

「「「…!?」」」



本能的に忌避する声が響く。

生理的嫌悪感が身体を駆け巡った。


「梨花さん!」「ちっ、早いわね」「兄さん!」「…」


全員が身構える中、通路に三人の人が立つ。



「これはこれは皆さんお揃いで。皆で仲良く何の話をしていたのか…是非ともお聞かせ願いたいね」



そう言って彼は…ペインはニヤリと笑った

という訳で軽く両親過去に触れました

いかがでしたか?多少は皆さんの疑問点も解決出来たと思います。

こんな感じで次回も解説回になる予定ですのでよろしくお願いします

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