第60話 残された者達#2
今回は悠一視点でお送りします
「悠一!助けて!もう優樹菜が、優樹菜が…」
そう優衣が涙を流しながら言ってきたのは俺達がこの島に来て1週間と少し経った頃だった。
あの日、俺達がこの島へ飛ばされた日に真琴の魔力が途切れた時の俺を含めた全員の取り乱し様は凄まじかった。
ティターニャさんでさえ半日はマトモに指示が出せない程だった。アルンとクロの二人は泣きじゃくった後1日ほど眠りそれからはただ何をするでも無く無気力に過ごしている。王族の人達もあまりに突然の事に取り乱し、特にルーンさんは凄かった。泣きながら嘘だと言い、単身城へ戻ろうとしたぐらいだ。今は何とか抑えているが。
そして俺達3人
俺と優衣は魔力が途切れたという事実がありながらも何処か予感めいたところで真琴は生きていると信じて、なんとか1日程で立ち直れた。と言うより未だに死んだという事を信じていない。しかし優樹菜はこの島のメンバーの中で一番と言える程に酷かった。まず魔石が砕けたショックで三日ほど寝込んだ。その後も悲鳴混じりに叫びながら飛び起きては、また寝込みうなされる状態を繰り返している。
ここが地球なら即刻専門家に見てもらうレベルだ。
食べ物もマトモに受け付けず、日に日に衰弱していっている。今はほぼ付きっきりで優衣が看病してくれているおかげで何とか保っているが、何時壊れてもおかしくないギリギリの状態だ。
が、流石に優衣にも限界が来たようだ。確かに現状を何とかしないと優樹菜が死んでしまう。そして冒頭へ戻る。
「ああ、とりあえず落ち着け優衣」
「落ち着けって…でも優樹菜が!」
「分かってる、分かってるからとりあえず」
「分かってる…分かってるって何よ!早く、早くしないと優樹菜が!」
「優衣!!」
あぁ、これはダメだ。
優樹菜程では無いが優衣にも少なくないショックはある。今回は希望を信じて何とか持ち直せたがあんな状態の優樹菜を毎日相手にしていればかなり精神的に参ってしまうだろう。
(また俺は…自分の彼女がこんなになるまで気付かないなんて)
軽く錯乱している優衣の肩を掴んで、名前を強く呼ぶとようやくマトモに俺の目を見てくれた。
「優衣、分かってるなんて軽く言ってごめん。でも、今一番優樹菜の近くにいる優衣が必要なんだ。頼む、とにかく現状を教えてくれ」
「ぁ…ご、ごめん。私、こんな取り乱して」
ようやく我に返ったのか今までの事を謝る。そんな彼女にニカッと笑って悠一は告げる。
「気にすんな。こんなになるまで任せっきりだった俺もダメなんだ。とにかくこの事はこれでお終い。優樹菜の事を教えてくれ」
「ええ、分かったわ。あれから…」
それから聞いた状態は予想以上に酷かった。何とか食事は摂っているようで、身体はギリギリ保っているようだ。しかし精神面がかなりボロボロだった。優衣曰くもう自分で自分の感情をコントロール出来ないぐらいになっているらしい。
「…かなりヤバイな」
「もうこのままじゃあの子…」
「分かってる。大丈夫だ、俺に任せろ」
「悠一…」
こんな大言壮語しておいて無理だったでは済まないだろう。しかし悠一にはある考えがあった。
(話を聞く限り優樹菜は…もし優樹菜がまだ変わらずに真琴を好きでいるなら上手く行くはずだ)
一応予測ではあるが悠一は上手く行くと信じている。そんないつもの自信に溢れた悠一の顔を見てようやく優衣もいつもの調子に戻ってきた。
「本当、あんたにお願いしてよかったわ」
「おう、彼氏に任せなさい」
「あら、ならちゃんとやってよね」
「当たり前だ」
「やだ私の彼氏カッコイイ」
悠一と優衣がお互いを茶化して言い合うとお互いにどちらからと無く笑い出す。それは極々小さく、日常からすれば笑いと呼べ無いぐらいであったかもしれないがそれでも優衣達には充分だった。
「さて、優樹菜の前に…」
「どうしたの?…て、きゃっ」
悠一が唐突に優衣を抱きしめるとの優衣は普段聞けないような可愛らしい悲鳴を上げた。珍しく優衣はかなりテンパっている。
「ち、ちょっと悠一?いきなり何?」
「なぁ、優衣。確かにおれは頼りない彼氏だけどさ…でもお前が苦しんでいる事ぐらいは分かるつもりだぜ?」
「…!な、何を急に」
「お前がずっと頑張ってるのは知ってる。優樹菜が心配で、同じぐらいに真琴も心配してる事も知ってる。それを優樹菜に悟られないように一生懸命になってるのも、知ってる」
「…」
「でもさ、今ぐらいちょっと肩の力抜けよ。それぐらい頼ってくれよ。俺だって皆が心配なんだよ。お前が、心配なんだよ」
優衣を抱きしめながら心中を話す。確かに皆心配だった。でもそれ以上にいつも苦しそうに、でも何でもないように振舞っている彼女が凄く心配だった。
そんな悠一を言葉を聞いた優衣は無言で悠一の胸に頭を寄せ、ポツポツと呟く。
「…ねぇ、悠一」
「…どうした?」
「ちょっと、いいかな?」
「ああ」
「少しだけ、少しだけ休んでもいい…かな?」
「ああ、当たり前だ」
「ごめんね。ちょっと、疲れた、みたい」
「大丈夫、大丈夫だ。心配するな。俺はここにいる。どれだけでも休め」
「…ありがとう」
優衣だって不安だった。怖かった。心細かった。でもそれを見せると皆が不安がってしまう。特に優樹菜が壊れてしまう。でも今この瞬間には悠一がいる。普段は頼りないけど本当にヤバイ時には必ず傍に来てくれる。胸を貸してくれる存在がいる。
だから
ごめんね
ちょっとだけ
休むね
ゆっくりと優衣の頭を撫でていると不意に寝息が聞こえてきた。
腕の中を見ると安心しきった顔で寝ていた。今まで凄く頑張っていたんだ。今ぐらいゆっくり休んでくれ。
優衣は普段はピシッとしていとても頼りになる奴だ。でも人間だ。一人の女の子なんだ。何でも一人で出来る訳が無い。一人でこなせる訳が無い。辛い時だって悲しい時だってある。そんな何処にでもいる一人の人間なんだ。
だからこそ俺は優衣がどうしようもなく困った時、行き詰まった時、そんな時に一番に駆けつけられる、そんな存在でいよう。
悠一は腕の中の優衣を見ながら改めてそう決意するのであった。
という訳で今回は悠一と優衣の話でした。
悠一は普段はあまり目立ちませんがこういう時に凄く頼りになる存在です。ある意味隠れたヒーローみたいな?
そして今回で60話になりました!
今まで読んで下さった皆さん本当にありがとうございます!これからも頑張るのでご意見、感想などありましたらお願いします。
これからもよろしくお願いしますm(_ _)m




