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第55話 教会謀反

昨日はすみませんでした…


時は数刻前に遡る


王宮―謁見の間


現状を考えればありえない程の人が詰めかけていた。階段の上にはアイゼン国王、カリン王妃、リオン王子、ルーン王女。

その下では左右の壁際に国中の貴族達。そして正面では周辺国の国王とその兵士が立つ。さらに後方では神官服を着た50名ばかりの人達。


「この様な時に何の御用かな?モリス王よ」


呼びかける相手は帝国の隣の国の王。ただでさえ国が魔物に攻められて忙しい。その時に魔物とは反対側の道を通って彼等はやって来た。魔物のみに注目していたため、気付けばこのような状況になっていた。


一刻を争う事態に最早怒りを隠そうとせずアイゼン王は下座で堂々と立っている隣国の国王に問いかけた。


「いや何、其方の国が危機と聞き、急ぎ戦力を持ってきたまでの事よ」

「それはありがたい。しかし、現状では何も問題は無いので速やかにお引き取りを願う」


欠片も思って無い事をお互い言い合う。というよりこの場にいる者は全員この状況の意味を知っていた。すなわち、クーデター。

教会が裏から手を回してこの状況を作ったのだ。予想よりかなり早いのはかなり無理をした結果だろう。


教会はこの魔物騒ぎに乗じて戦力を城に入れ、私を退位させ国を乗っ取るつもりだろう。なので速やかにお引き取り願おうとしたがやはり簡単には行かないようだ。


「ほう、問題無いと…しかし今作戦の指揮はあのマコトと聞いておりますが…」


ちっ…

モリス王の言葉に貴族や兵士はわざとらしく驚いて続いて嘲るように笑った。それを見てアイゼンは内心舌打ちをこぼす。


この所貴族などの上流階級のパーティの間である噂が飛び交っていた。

曰く、今回の勇者のリーダーは落ちこぼれである

曰く、リーダーはダンジョン攻略の際、一人混乱し危うく壊滅するところであった

曰く、勉学・運動・精神どれをとっても無能

などなど…


勿論、全てが虚言であると今すぐ否定したいのだが立場上それも難しい。それに実の娘が拳を握り怒りのオーラを纏いながらも踏みとどまっているのでここは溜飲を下げておく。


「それで?だから何だと?」

「もう下らない三文芝居は辞めましょうか」


と、ここでいつの間にか戻っていたアビス司祭が急に出てきた。しかも両者の間に堂々と


「アイゼン王よ。あなたは少し出しゃばり過ぎたようですね。もう少し大人しくしておけば良かったものを…」

「貴様…何が言いたい?」

「あなたにはここで死んでもらいます」

「…ほう」


司祭の発言に場が一気に殺気立つ。


「それで?其方が私に代わって王にでもなるつもりか?」

「ええ勿論。ここは交易の要所ですからね。潰すわけには行かないのですよ」

「それで民が納得するとでも?」

「させますよ。何せこちらには…勇者が居るのですから」

「…な!?」


司祭の言葉と共に後ろの神官達がフードを下ろす。するとそこに居たのは魔物の迎撃に向かったはずの良太達であった。


「気でも狂ったか!?今ここで私を殺しても魔物が来たら国が滅ぶぞ!」


当初の王の予定では敵は相手の国の兵士だけだったのでこれならば親衛隊で充分に足止め出来ると考えていた。しかし勇者となれば話し別だ。あれは強力すぎてこちらが一瞬でやられる。しかもそれ程の戦力が戦場に居ないとなれば真琴達の勝率が下がってしまう。(実際はそんな事無いのだが)


それを懸念する王に対して司祭は鼻で笑うように告げた。


「ご心配無く。奴らは来ませんよ」

「何?」

「こちらにはこの方が居ますからね」


「王よ!お下がり下さい!」


司祭が誰かを紹介しようとした時にカインとクラリッサが血相を変えて前に立った。そんな事も気にせず司祭達は中央を開けて一斉に頭を垂れた。すると奥から4人の黒ずくめの集団が歩いて来る。真ん中の背の高い男は何故か仮面をしている。

(まさか彼がマコト殿の言っていた…)


「…煩いゴミ共だ」


仮面の男が呟いた途端その場にいた誰もが恐怖に支配された。それは司祭や兵士、勇者達でさえ例外では無い。

(何だ…こいつは…)

湧き出る恐怖に必死に耐えながら目の前の男を凝視する。


「はぁ…何だよ、この程度にも耐えられないとは…。世も末だな」


すると一瞬で身体中のプレッシャーが消える。


「き、貴様は一体…」

「俺か?俺は…魔王だよ」


(やはりか…)

以前に真琴からダンジョンであった真実を聞いたアイゼンは相手があの真琴が言っていた魔王本人だと悟る。


「これでお分かりですか?王よ。このお方がいる限り我々が魔物に襲われる事など有り得ないのですよ」


一部の例外を除き殆どの魔物は黒い魔力を有する。それにより魔物達は遺伝子レベルで魔王には逆らえないと言われている。

(もはやこれまでか…)

魔王が現れた以上どれだけ戦力を集めようと一瞬で壊滅させられるのは目に見えている。


「…分かった。私は王位を廃棄しよう」

「父上!!」「姉さん落ち着け!」


突然の事に咄嗟にルーンが声を上げるがリオンがすぐに窘める。 流石にこの状況を理解出来ないほどの人では無いのでルーンも唇を噛んで相手を睨みながらもここは引いた。


「ハッハッハ、始めからそうすれば良かったものを!しかし残念ですね。証拠を残す訳にもいかず、後々逆らわれてもウザいだけですから…」

「貴様…!」

「ここで死んでください」


(まさかここまで読むとは…)

アイゼンは司祭に対して怒りを募らせる一方である事に感心していた。それは以前に内密に真琴と合った時にもし教会が謀反を起こせばどうなるのか?と言う話題になった。王は教会がその気ならば兵士達で対抗すると言ったが真琴は言った。


「それが一番理想です。ですが教会も中々に狡猾ですよ。僕なら初めに王家を殺し事前か事後に兵士を殺して謀反の可能性をほぼゼロに抑えますね。しかも司祭はこの城で自由に出歩きしているので兵士の配置も殆ど覚えているでしょうから迅速に行えるでしょう」

と。


結局はその発言を期にアイゼンも亡命を決意したと言う経緯がある。

(しかしならば…)

アイゼンは考えた。ならば内側にスパイを潜り込ませれば…

それに対して真琴は

「確実に司祭は兵士を皆殺しにしますね」と断言。

「司祭は残忍で狡猾です。自分が少しでも不利になる事は事前に対策すると思いますよ」

その場はまさかと思っていたがここまで真琴の予想通りだとこの後は…


「失礼します」


と、その時に謁見の間に一人の兵士が入ってきた。確か兵士長のガルムだ。

「司祭様、全てが完了しました」

「ご苦労様です。さて王…いえ、アイゼンよ。これであなたは寂しくならずに済みましたね」

「…どういう事だ?」

「まぁこれを見てください」

「「「!?!?!?」」」


司祭が取り出したのは別の場所を映す魔道具(所謂監視カメラ)だ。そこには城の各所が映っていたがその全てで兵士が死んでいた。周りでは隣国の甲冑を着た兵士達が血を払っている。

(やけに手勢が少ないと思ったら…別働隊がいたのか!)

周辺国の王達が来た時に引き連れていた兵士が少ないのは準備の問題かと思ったが実際は別働隊として潜んでいて、皆殺しをする為に動いていたのだ。


「スパイがいては面倒ですからね」

「貴様ッ!あの中には教会派もいただろうに!」

「知りませんよ。彼等も教会の為なら本望でしょう。それに私には沢山の兵士がいますからね」


つまり帝国の兵士は皆殺しにして周辺国の兵士を新たに入れると言う事だろう。あまりの事に何も言えなくなる一同。と言うより固まっているのは王族と兵士だけで他はニヤニヤと笑っているだけだ。


「さて…それではガルム」

「はっ」

「ご苦労様でした」

「…は?」


そしてガルムは後ろから刺されて死んだ。突然の事に固まる王族と兵士。ガルムは己が刺された事を理解出来ないまま血の海に沈んだ。


「何だよ…殺人ってこんなもんかよ」

「頼もしいですね。リョウタ殿は」

「ま、いいや。じゃあ司祭さん。いいよな?」

「ええどうぞ」


ガルムを殺したのは良太だった。そのまま彼は剣を構えながら前進する。後ろには他の男子生徒も続く。


「確実に皆殺しにして下さいね」

「おー」


気のない返事をしながらも続々と近づく勇者達に恐怖しているルーン達。とその時に良太は急にルーンを見るとニヤリと笑った。その笑みに背筋が凍るルーン。


「なー司祭さん。女は後で遊んでいいか?」

「またですか…まぁ良いでしょう。後で確実に処分しておいて下さい」

「あはっ、やる気でてきたわー」


そんな会話に更に顔色を悪くするルーン

(助けてくれ!マコト!)


縋ったのは手の内に握られた小さい水晶玉。

城を出る直前に使用人に扮して見送っていたルーンに真琴が「もし本当にダメな時はこれを握って僕の名前を呼んで」と渡した物だ。

時間が無かったので効果は知らないが今の状況ではこれに縋る以外に何も思いつかなかった。


(助けて!!)

「任せて」


必死に叫ぶとそれに返事があった。


「え?」


前にはいつの間にか真っ黒のコートを着た青年がいた。その周りには甲冑を着た男性、白いローブを纏った女性と赤い衣服を着た女性もいる。


「バルト、やれ」

「…へぇ」


真琴の言葉に今まで黙っていた魔王が声を上げる。

そして



広間全体を眩い光が支配した。

次回!

勇者対勇者!!(一瞬で終わります)

勇者対魔王!!(けっこう続きます←予定)


また評価などお願いしますm(_ _)m

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