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第51話 修行――そして


早朝

まだ日もまともに昇ってない時刻

城の中庭には熱心な兵士達が己を鍛えるために自主訓練に励んでいた。その中で、兵士達から一目置かれた2人組がいた


「…脇が甘いですぞ」

「っ…なんの!」

「次はこちら側です」


片方は剣を片手に変幻自在に切りかかる初老の男性…カインだ。相手は何故か盾を持ちながら剣ではなく拳で戦う体格の良い男性…悠一である。


「ふむ…まぁこんな物ですかな」

「はぁ…はぁ…ダメだ、全くスキが無え」

「しかしそのスタイルも大分上達しましたな」

「そうですかね」


悠一の戦闘スタイルは盾と拳という何とも珍しい組み合わせだ。盾で防御しつつ接近、一気に近距離戦闘に持ち込むという感じである。見た目は微妙だが悠一の性格と精霊…エテ吉との相性を考えた結果こういうスタイルになった。そして悠一の課題「より実戦に近い戦闘訓練」を果たすために日夜修行に励んでいる。


とはいえ、悠一の戦闘スタイルは凄く珍しい為教えられる人がおらず、結局カインや格闘技の得意な人に教えてもらい、それを自分なりに組合わせたスタイルとなっている。そして、より己を鍛える為にカインが必ず自主訓練を行う時間(早朝)に来て組み手の相手をしてもらっている。


「それにしても…ユウイチ殿はこれでよしのですか?」

「これでって?」


少し休憩している時カインはさり気なく周囲を人払いし、多少の会話なら聞き取れないようにしてから悠一に聞いた。


「そのままの意味です。私は王の護衛で初めて知りましたが、皆さん色々と動いているようですね。ですがユウイチ殿はほぼ1日中訓練をしておりますので…」

「あぁなるほど…」


カインは国王が極秘に森へ行った時に唯一護衛として同行した。その時に亡命の件の存在を知ったのだ。だからこそ疑問があった。そしてようやくカインの言いたい事が分かった悠一はどう説明しようかと少し考えて話す。


「何ですかね…そういう役目、なんですよ」

「役目…ですか」

「カインさんの知っての通り俺達はずっと一緒にいました。その中で自ずと自分の役目みたいな物が出来たんです。例えば真琴、あいつは何でも完璧にこなしていくリーダーです。優衣はそんな真琴の頼れる参謀と言った所です。優樹菜はそんな2人が行き詰まった時の、まぁ助っ人ですかね」

「なるほど…確かに皆さんそんな感じですな。ならユウイチ殿は?」

「俺は…非常用ですかね」

「…は?」


困った顔で呟いた悠一にカインは思わず聞き返した。


「俺は真琴みたいな決断力は無い。優衣みたいな頭も無い。優樹菜みたいな機転の良い発想も無いんです。だから、非常用です」

「いや、すみません。おっしゃる意味がよく」

「うーん…あいつらって凄く賢くて、とにかく色々凄くて…そしてバカなんですよね」

「と、いいますと?」

「特に真琴がなんですけどあいつらは身内に甘過ぎる節があります。だからこそいざと言う時に壊れやすいんですよね。そんな時の為…ですかね」


少し気恥ずかしそうに話す悠一をカインは何処か眩しそうに見ていた。


「ユウイチ殿は…強いんですね」

「え?いや…ある意味俺が一番ダメなんですよ。今のこの関係が気持ちいいからそれを壊したくなくてこんな事になってるんですし」

「でも…いや、だからこそですな。今のあなたはとても強いですよ」

「ははは、何かありがとうございます」


「さて、では始めますかな」

「うす!お願いします!」


そしてまた、中庭には打ち合う音が響き出した。




○○優衣side○○




皆が自分の目標に向かって訓練を始めてもうすぐ二ヶ月が経とうとしている。


「あと一ヶ月ぐらいか…」


ふとその事を思い出して私は呟く。今はこの部屋には私しかいない。

(まぁ図書館なんだけどね)

時刻は昼頃。中庭では悠一が兵士の人と打ち合っている。その近くでは優樹菜がクラリッサ先生から魔法を教えてもらっている。


『主は行かなくて良いのか?』

(私は今からなの)


己の内側からの声に返事をする。これは優衣の精霊の鷹―カルの声だ。あれ以降精霊とは順調に良好な関係を築けている。


(てかいつの間にか呼び方ご主人から主に変わってるし)

『不満か?』

(いやそれでいーわよ。むしろご主人とか鳥肌立つわ)

『ふむ、そんなものか』

(そんなものなの)


とはいえ優衣は何も図書館へボーとしに来たのではなく人を待っている。


「優衣さん。お待たせしました」

「や、三咲先生。わざわざすみません」

「いえ、これも教師の務めですので」


待っていた人物…真琴達の担任の三咲先生が来た。


「それでは始めましょうか」

「お願いします」


優衣はここで最近美咲先生からこの世界の常識など色々な知識を教えてもらっている。と言うのも、美咲先生ともう一人の教師は唯一の大人と言う事で一足先に様々な事を教えて貰ったそうだ。なので序盤は顔が出せなかったと美咲先生が言っていた。


(でもなんだかな…)

『やはり気になるのか?主よ』

(その居なかった期間の生活が不明じゃあね)


優衣は何度か美咲先生に誰に何を習っていたのかや、何処に居たのかなど聞いてみた。その度に先生はスラスラと応えた。


(何か…模範的過ぎるのよね)


なんというか答えが完璧すぎるのだ。まるでそう答えれば、はいそうですかと納得してしまう程に疑う余地の無い解答なのだ。しかし、よく良く考えてみると核心については何一つ話して無い。例えば具体的な場所とか教えていた人が誰だとか。だからこそ優衣は疑い、この先生に接触している。


つまり優衣は訓練や勉強のフリをして様々な疑いのある人物に接触しているのだ。

(私はどっかのスパイですか)


まぁそれは置いておいて今現在怪しいのはこの美咲先生だと優衣は思っている。勿論表面上は良い先生だが。


(召喚から約三ヶ月程の行動が不明な教師2人。しかももう一人は今も行方不明。そして何より…王様曰く2人を教育したのはあの教会らしい)

『だが何も見つかっていないぞ?』

(だからこそ探すのよ。その為の私達でしょ)

『ふむ、そうだな』


表面上は美咲先生の話をよく聞き、真面目に授業を受けながら裏で精霊と密談するという離れ業をこなしながらその日は終わった。


ちなみにこの件は一度真琴に相談した。

優衣の意見に真琴は考えるように少し俯くと呟く。


「美咲先生が、ね…」

「疑いたくないのは分かるけど」

「いや、その逆だよ」

「え?て、あんたまさか」

「優樹菜には内緒な。優衣はおかしいと思わないか?偶然僕達が召喚される。しかも3校、それも各校1クラスづつ。そしてそこに居たのは幼馴染み。いくら何でも出来すぎだ」

「偶然、で片付けたいけど無理があるわね」

「だから仮説だ」

「こっちの世界じゃ無くて地球、しかも私達を知る人物がこの召喚に関わっている」

「そして召喚直後姿を消した教師がいる。その先には教会だ」

「…ちょっと調べる必要があるわね」

「くれぐれも優樹菜には内緒な。多分これ知ったら本人に突撃かけるから」

「あー、あの子ならやるわね」

「とにかく優衣は直感を信じて行動してみて。でも危「危なかったらすぐ引くわ」…くれぐれも頼むよ」

「任せなさい。何か分かったら報告するわ」


そして美咲先生と接触し、今日に至る。

(にしても証拠出ないわね)

決定打が無い事にイラつきながらその日は眠った。






事件は次の日に起きた


早朝、何となく騒がしい気配がして優衣は目を覚ます。部屋には悠一、優樹菜、ルーンさんが居てまだ寝ている。机の上には真琴お手製の朝食。


(…別に変わった事は無い…わね)

『主、これはマズイぞ!』

(うわっ!?びっくりした…どうしたのカル?)

『魔力の流れがおかしい』

(どういう事?)

『恐らく誰かが世界樹に手を出した』

(世界樹って…どこにあるかも分からないんじゃないの?)

『そのはずなんだが…』


カルの話では急に魔力の流れが変わった、らしい。


(それってどんな影響が?)

『それは…』

(え?)『なん、だと』


その時、優衣がカルと協力して仕掛けた情報収集用の網にある情報が入った。その内容に一人と一匹の雰囲気が変わる。


「皆起きろ!!今すぐ!!」


すると突如ゲートが開き、切羽詰まった様子の真琴が現れた。事情を理解している優衣は一度頷くと急いで他の人を起こして戦闘準備を行う。




30分後、魔族が襲撃を仕掛けに来たと王城に連絡が走った





それは長い長い1日の始まりを告げる鐘の音でもあった

さてさて、いよいよ次回は戦闘が始まりますよ!(予定)

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