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第49話 修行―精霊の森―


それからは各自己の課題を決めてそれに向かって修行している。

悠一ならより実戦に近い戦闘訓練。優衣ならもっと高度な精霊との連携。優樹菜なら更に上の魔法の習得。といった感じだ。


初めはは皆霊装を、と言っていたが霊装は難易度が非常に高い。それこそ20年、30年のベテランでさえ厳しいと思える程だ(真琴の場合は色々と例外なのでこれには当てはまらない)。なのでもっと身近な事から始めている。

そして真琴は


「1167…1168…1169…117、うわっ」


湖に落ちていた。しばらくして湖から上がった真琴にエクは話しかける。


「ふむ…19分半、中々良い調子ですね」

「まだ20分にも届いてない…このままじゃ…」

「マコトさん、焦りは禁物ですよ。集中を乱しては元も子もありません」

「…すみません」

「とりあえず1度休憩しましょう」


現在真琴がいるのは精霊の森の奥にある湖だ。目下の真琴の課題である、霊装の完全化を目指して修行中である。その為の訓練メニューである霊装の状態での上空待機(安全の為湖の真上)を行っていた。

ちなみに霊装の場合は動いているより止まっている方が難易度が高い。なのでこれはモロに集中力が鍛えられるのだが、目標の30分には中々届かない。


水気を払いながら木陰へ移動する。


「マコト!お疲れ様!」「お疲れ様ー」

「ありがとうアルン、クロ、それとティターニャも」

「旦那様こそお疲れ様です。さ、とりあえず座りましょ」


木陰ではティターニャ達3人が既にテーブルセットを出してお茶の準備をしていた。そこに真琴が座り(エクさんは別の場所で奥さん達と休んでいる)話しながらお茶を飲む。

(もう、一ヶ月か…)


あの亡命の話し合いから既に一ヶ月が経過していた。そのほとんどを真琴は精霊の森で過ごしている。真琴の部屋は未だ優樹菜達が使っているようで時々片付けて貰っている。真琴本人は夜遅くに帰り、少しの仮眠の後まだ誰も起きないうちに森へ行って修行していた。


その甲斐あって霊装を完全にする事は出来た。しかしそれからが本番だったようだ。魔力のコントロールが上手く出来ない。そのせいで当初は魔力垂れ流し状態だったので霊装から5分で魔力切れをおこしてぶっ倒れていた。それからはずっとこの訓練を繰り返している。


(けどまだ全然ダメなんだよな…)


ちなみに真琴は1人で魔力をコントロールしようとしている。通常は精霊がコントロールし、契約者が戦闘を行う。しかし、それでは万一の時の不安が残るので1人でも戦えるようにとこの訓練をしていた。 アルンはこの事を知らない。というより知ったら自分はいらないのかと泣いて怒るだろう。

1度アルンがコントロールを担当してみた時は丸1日は余裕で飛べた。


(けどそれじゃダメなんだ。アルンに頼ってばかりじゃ…)


そして現在に至る。


「マコト!マコト!」

「ん?どうしたアルン」

「今日ねアルン九九全部覚えたよ!」

「お、それは凄いな」

「9×9」「81!」「7×8」「56!」


横から突然問題を出したクロにも余裕で答える。

(おぉ、凄い。ちょっと前まで足し算出来なかったのに)


「1+1」「1!……あ」

「フッ、まだまだね」

「きぃぃい!」


クロのドヤ顔に地団駄を踏むアルン。今のはちょっと大人気無くないか?あとアルン、お前それどこで覚えた?


アルン達は真琴が訓練している間は時間があるのでティターニャを始めとした何人かの人から授業を受け、勉強している。まぁクロは僕の頭から色々勉強したようで高校レベル。アルンも飲み込みが早いのですぐににクロに追いつくだろう。

(それに比べて僕ときたら…)


「旦那様」

「え?あ、どうしたのティターニャ」

「今は休憩中ですよ?」

「え、あー…すみません」


どうやら顔に出ていたようだ。若干アルン達と比べてブルーになりかけた所をティターニャが止めてくれた。それに気付いたのかアルンとクロもこちらを見ている。


「もう、修行も良いですけど今は家族の時間ですよ」

「あぁ本当ごめん」

「はぁ…まぁそんな真面目な所もいい…」

「え?何て?」

「い、いえ!ところでそんなに上手く出来ませんか?」

「うーん…何だろな、感覚が掴めない…かな」


元々魔力なんて無い世界から来たのだ。それを感じ、コントロールしろとは中々出来る事では無い。かと言って周りに聞くと


「えーとね、何かギュッ!でフッみないな」「え?スッとしてポーンじゃないの?」


精霊二人はこんな感じ。ちなみにこの回答は別に語彙力が低い(それもあるかもしれない)とかでは無く、この世界の人なら大半そう答える。この世界では魔力が当たり前なのでそれをコントロールするのも日常茶飯事なのだろう。僕達だと例えば呼吸のやり方を聞かれた、みないな感じだろうか。確かに上手く説明出来る気がしない。


「まぁでもなんとなくだけど分かってきたからもうちょっとかな」

「それは良かったわ。それで、今だと全力でどれぐらいもつの?」

「大体10分ぐらい…かな」


補足しておくが霊装者が本気を出せば1分で万の軍勢を潰せる程である。


「ならもう充分…って訳ではなさそうね」

「…うん、そうだね」


脳裏にはあの仮面の魔族…魔王の事だ。そんなイマイチな真琴の顔を見てティターニャも察する。


「そういうティターニャの方は?」

「ちょっと前に王様が直々に来て謝罪と受け入れの感謝をして行ったからね。まだ人族にもマシな人がいた、みたいな空気ね。あの人なら大丈夫って種族はいたわよ」

「はは…でも、印象は程々な感じで良かったよ」


少し前にアイゼン王が直接赴きティターニャを筆頭に各種族の長達に謝罪を行った。勿論非公式の為表面上の変化は無いが。その場では一応は納得してくれたようでこれは真琴にも朗報だった。

現在は修行の合間に未だ納得してない種族(主に脳筋)を説得(場合によっては物理)している所だ。それもほぼ終わっているので亡命はほぼ問題無いだろう。


現状を確認し、色々と今後について考える。と、横から言い争う声が聞こえた。


「あ、ちょっとアルン!それ私の!」「え?でもずっと残ってたよ?」「最後に食べようとしてたの!」「…美味しかったよ?」「そうじゃない!!」

「え?で、でもいらないのかな…って」

「うぅ…ま、マコトー!」

「あぁ、はいはい落ち着いて」


どうやらクロが最後まで取っておいたクッキーをアルンが食べてしまったようだ。イマイチ反応がズレたアルンにクロが怒っているが、最終的にこっちに来た。とりあえず二人共落ち着かせる。


「はいはい、喧嘩しないの。クッキーならまだありますから。ほら、アルンもクロに謝りなさい。クロも早く食べないからですよ。だからそんなにアルンを怒らないの」


横から母の一声。ティターニャは籠から新しいクッキーを出しながらあっという間に解決していく。


「ほら、アルン」

「はい、クロもいつまでもスネないで」

「うぅ、そのごめん」

「い、いやアルンこそ食べてごめんなさい」


「はい、二人共謝ったら食べていいわよ」


その言葉にまた仲良く話しながら食べるアルンとクロ。ふとティターニャと目が合うとどちらからと無く苦笑する。


(今ぐらいは…いいかな)

時間は刻刻と迫っており、今は一刻を争う状況だ。でもせめて今ぐらいは…もう少し「家族」の時間を過ごしたいと思う真琴だった。周囲では暖かい日差しが降り注ぎ、緩やかな風が吹いている。

(この後はちょっとお昼寝したいかな)

アルン達の世話を焼き、ティターニャと話しながらのんびりと考える真琴。それは傍から見れば何処にでもいる普通の家族の風景だった。













そんな平和はただ嵐の前の静けさに過ぎない事を誰よりも真琴が知っていた。

いかがでしたか?

今回はちょっと修行パートのような感じです。

あと2話程伏線のようなことをしていよいよ激しくなります(予定)


↓これからの予定

1優樹菜の修行

2優衣?悠一?の修行

3さぁ戦闘だ!!


このような流れでやりたいと思います

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