第44話 森へ
その後、部屋の掃除と準備を終えて少しアルン達と話していると悠一が来た。
「…何で武装してんの?」
流石にフルプレートでは無かったが最低限の防具と武器を装備している。
「え?いや…なんとなく?」
「なんだそれ」
「てかむしろお前達はなんでそんな軽装なの?」
そんな武装した悠一に対して真琴は普通にシャツとズボンのみだ。精霊2人は安定の何時もの格好。クロ曰く精霊は服も魔力で作れるので汚れてもすぐに綺麗に出来るそうだ。便利だな。
「え?だってティターニャに会うだけでしょ?」
「え?てか魔物とかどうすんの?今回はお前だけじゃ無いし」
「あー…」
(そういえばそうだった。今更だけどルーンって王族だったよな)
確かに王族同伴でこの格好は失礼か。なので真琴も武装する。とは言え、真琴は悠一と違いプレートはあまり付けないので、服を着替えコートを羽織るぐらいだ。(注・コートは既に真琴お手製のカスタム済)
「何時見ても思うけど真っ黒だな。色変えなかったの?」
前のダンジョンでボロボロになったので少し直したのたが色は黒を基本に所々赤のラインが入ったぐらいだ。
「まぁ前の服直しただけだからね。これでも色入れた方だけどな」
改めて見てみるがそんなに黒いか?かなり妥協したけどな。
「ま、とりあえず着れてるから良いんじゃね?」
「だよね」
そして笑う男子2人。真琴も悠一も基本服装はTPOさえ守れていれば大丈夫と思っているのでファッション?何それ美味しいの?の精神だ。
(なので地球では服を買いに出掛ける度に優樹菜と優衣が頭を抱えている)
それが分かったのかクロが冷めた目で2人を見ていた。
「お待たせー。やっぱりあんた達早いわね」
「お待たせ。お邪魔します」
そんな話をしている内に優樹菜達も終わったようでやって来た。やはり2人共フル装備ではないが多少武装しているようだ。
「どうぞ入って。そんなに待って無いから大丈夫だよ」
実際まだ30分ほど時間はある。
「あれ?ルーンさんはまだなんだ」
「まぁ色々準備があるんじゃないかな」
「それよりも真琴、どう?私達の格好」
すると、前で優衣が軽くポーズをとって真琴に聞いてきた。
「え…いきなりだな…」
横を見れば優樹菜もちょっと俯きながらも真琴を見ていた。
「ど、どうかな…?」
上目遣いは反則だと思います。
そんな優樹菜は白いローブ…と言っても全身を覆うタイプでは無くワンピースの腰の部分にベルトを巻いて絞ってある感じだ。また袖も垂れないでいるのでローブというよりコートとスカートといった感じだ。またポニーテールと控え目に施されたアクセサリーが普段とはまた違った魅力を出している。
一方優衣は動き易いようにか短パンの上にスカートを穿いている。上半身はシャツと薄い上着とシンプルな装いだ。しかし赤系統で統一されたカラーが優衣のイメージにぴったりで、ピンで上げた前髪もいい感じだ。腰には片手剣を差してある。
以前から服装については良く聞かれたので率直な感想を述べておく。
「―て感じかな。優樹菜も優衣も美人だから凄く似合ってると思うよ」
「び、美人…あ、ありがとう」「はぁ…」
すると、優樹菜は顔を赤くして小さくお礼を述べて優衣には呆れられた。何故だ…?
「どうした?優衣」
「いや、何でそうやって相手の服装褒められるのに自分の格好はそんなシンプルなの?」
「いや、そんな事言われても…それに褒めたんじゃなくて率直な感想を述べただけだよ」
「だから質が悪いのよね」
「…?」
優衣はさっきから何を言っているんだ?それと優樹菜、まだうずくまってるってそんなに嫌だったのか…
勿論そんな訳が無く、優樹菜は真琴の感想と美人のフレーズにより緩んだ顔を見せまいとしているだけだ。内心は幸せ一杯である。
(…相変わらずの鈍感と天然ね…)
そんな優樹菜と困った顔の真琴を見た優衣は再び深いため息をついた。まぁ何時もの事である。
え?悠一?
…まぁ人には得意不得意があるんだよ。ちなみにこのやり取りの間悠一は完全に蚊帳の外であった。
「済まない。遅くなった」
「失礼するよ、マコト君」
そうこうしているとルーンが来た。何故か弟のリオン王子も一緒だ。
「あ、あれ?ルーンは分かるけど何故リオン王子が?」
「酷いな、マコト君。姉さんは呼び捨てなら僕もリオンで良いよ。むしろそう読んで欲しいな」
「え?あー、じゃあ何故リオンがここに?」
もう何でこの姉弟は立場を理解しないかな…まぁ本人達が良いと言っているので呼び捨てにさせてもらう。その方が気が楽だしね。
「本当は父上を呼ぶつもりだったのだが生憎忙しくてな…」
「で、その代わりに僕が行く事になったんだよ。改めまして、ルーンの弟のリオンです。よろしく」
そういえばまだ優樹菜達はリオンとは面識無かったな。なので一通り自己紹介をしていく。
「さて、自己紹介も終わったしそろそろ行こうか」
「そうね。ところで真琴、どうやって行くの?」
「確かけっこう距離あったよな?」
優衣と悠一の質問はもっともだ。他の人も気になっているようだ。
「うーん…いつもなら練習がてら霊装で飛んで行くけどこの人数だからね…仕方ないかアルン、クロお願い出来る?」
流石にこのメンバーで出歩く訳にもいかないので秘策を披露する事にする。アルン達も分かったようで嬉しそうに頷く。
「任せて!」「じゃあやるわよ」
「「《精霊の森へ》!」」
アルンとクロが片手を繋ぎ、空いた手を前に出して元気良く告げる。
「「「??……!?!?」」」
すると突如目の前に黒い楕円形の空間が現れた。皆は相当驚いたようで固まった。
「ま、マコト殿…これは?」
「まぁ簡単に言うなら小規模なゲートですかね。あらかじめ定めた座標に一瞬で移動出来ます」
勿論個人でそんな事は出来ない。クロとアルン、それに真琴の魔力があって初めて実現する方法なので特に隠さずに教える。
「な、じゃあさっきのアルンちゃん達のあれは…」
「うーん…まぁ呪文ですかね」
先程アルン達の唱えた《精霊の森へ》は精霊の森へ繋ぐ為の呪文だ。
(魔法はイメージか…本当便利だよな)
授業で習ったクラリッサ先生の言葉を元に色々試した結果、アルンの母であるティターニャのいる場所に帰るというイメージが上手く作用し、この呪文を唱えると精霊の森(性格にはティターニャのいる村の前)へ繋がるようになった。
(でもこれ魔力けっこう使うからな…)
しかし欠点もあるので現在改良中である。
「これでまだ完成では無いとは…は、はははははっ、いいね、やっぱりマコト君は最高だ」
「え、あ、あの…リオン?」
…この人こんなキャラだっけ?
(と、こんな事してる場合じゃない)
当初の目的を思い出して切り替える。関わりたく無いとかじゃないよ。現実逃避じゃないからね。
このゲートの欠点の一つに持続時間が短いという事がある。実際空間を一部とはいえ改変しているのでそれ相応に魔力の消費が大きいのだ。なので皆を促してゲートを潜らせる。それを抜けた先には青々とした木々の生える幻想的な森があった。
「お、おぉ」
「うわぁ…」
「綺麗…」
「おお、ここが…」
「凄い…」
あまりの美しさに皆言葉を失っている。分かるよ、僕もそうだったから。
と、その時に沢山の護衛を引き連れて絶世の美女が奥から歩いて来た。言わずもがなティターニャである。ふと真琴と目が合うと、パッと花のような笑顔を浮かべて小走りに寄って来る(最早護衛の方々も仕方ないなって顔してる)。そして真琴に抱きつくようにするとにっこり笑った。
「待ってましたよ、あなた」
その微笑みは正に女神の如く。思わず見蕩れるレベルだ。しかしその瞬間背後の空気は凍った。
(あぁ…やっぱりここは暖かいな…)
ここで現実逃避をした僕は悪くないと思う。
今回はゆっくりした回でした。
あと2、3話精霊の森の話が続きます




