第43話 これから
「…んで?どうすんの?この国は悪くないって事でも確実に教会はアウトだろ?」
皆で朝食を食べていると唐突に悠一が話始めた。
「証拠無いけど教会の奴ら絶対魔族と繋がってるし」
「それなんだよな…一応アイゼン王にはそれとなく伝えたけど」
「ああ、それなら父上から聞いたぞ。証拠も上がってる」
ルーンがあっさりと証拠があると告げた。
「え?なら教会は」
「ユイ殿、気持ちは分かるがそれは無理だ」
「…貴族達ですか」
「ああ、奴らはかなり教会と癒着しているからな。だが流石に事が事だ、証拠を公開しない代わりにマコト殿の処分は無しという事になっている」
要はお互い無かった事に…その言葉に何とも言えない4人。
(なんだろう、この見たくも無い政治の裏側を見せられた感じは…)
「まぁそれについてはありがたいですね。しかしそんな状態は…」
「ああ、持って3ヶ月ぐらいか」
「え?どういう事?」
唐突な展開に付いていけず優樹菜が疑問符を浮かべる。優衣と悠一も分からないようだ。
「優樹菜、この世界の国は何もこのフォード帝国だけじゃないよ」
その言葉に優衣があっ!と声を上げた。
「なるほど…外国ね」
「ああ、この国だけならそれで王族も教会も互いに不干渉で済んだだろう。でも教会は他の国でも布教活動をしている」
「つまり外国から圧力をかけられたらこの国が教会に乗っ取られてしまう」
「え?何で教会が乗っ取るの?」
再び優樹菜が質問する。
「今回の件は教会でも極秘中の極秘だ。何せ人族の敵である魔族と繋がっているのだからな。このまま父上が国王でいると何時か何かしらの方法で公開されるかもしれない」
「だから教会としては証拠が見つかったからには一刻も早くアイゼン王を国王という立場のある役職から引きずり下ろしたい。平民にでもなればいくら言っても所詮戯言と言える」
やっと話が理解出来たのか優樹菜は嫌そうに顔をしかめた。
「でも国内はもう不干渉で話が終わってる。だから外国から圧力をかけて国を乗っ取りたいのね」
「そういう事。そして外国からの圧力が影響を及ぼすのが…最短で3ヶ月ほど」
「てなると俺達の扱いはどうなるんだ?」
「…多分、というより絶対に教会ね」
優衣の返答に悠一が露骨に顔をしかめる。しかし実際僕達を召喚したのは教会の魔術師達なので司祭達が主張すれば誰も否定出来ない。
「ルーン、この国が乗っ取られたら王族はどうなる?」
「…よくて幽閉、最悪打ち首だな」
「そんな!何で!?王族は何も悪くないじゃない!」
優樹菜が信じられないと立ち上がる。
「気持ちは嬉しいがユキナ殿、これはほぼ確定事項だ。死体は何も話さないさ」
「そんな…」
「…恐らく教会の奴らは適当な理由を付けて武力でクーデターを起こすだろう。その方が私達を殺しても文句が出にくいからな」
「だからって…酷い…」
優樹菜が項垂れ、周囲も若干重苦しくなる。そんな中で、優樹菜の肩を叩きながら真琴はあっさりと言う。
「まぁ何も策が無い訳では無いよ。勝てないなら逃げれば良い」
その言葉にルーンは力無く笑う。
「しかしだなマコト殿。今やほとんどの国に教会はある。だから逃げると言ってもすぐに見つかるのがオチだ」
「あるじゃないですか。教会は無い。かつ人族との関わりの無い場所が」
その言葉に優衣ははっと顔を上げた。
「あんたまさか…」
「精霊の大樹林だ。あそこなら教会は手を出せない」
「い、いやしかしだな…マコト殿は知らないかもしれないが人族と精霊は」
「『聖約』についてなら知ってますよ」
『聖約』
それは過去に人族と精霊達との間で交わされた条約。
かつて精霊と契約する事で強大な力を手にする事を発見した人族がこの世界の事をまだ把握していない精霊達に一方的に理不尽な条件で結んだものだ。
例を挙げるなら
・精霊の住処を精霊の大樹林のみにする代わりに人族は精霊の大樹林に手を出さない。
・国王が必要と判断した場合には大樹林への立ち入りを許可し、その際は精霊側は拒否をせずサポートを行うこと。
…etc
これを初めて知った時に真琴は驚愕した。
(これじゃあ不干渉なんてあって無いようなものだ。要は王が許可すれは人は何時でも入れるけど精霊は大樹林から出られないって事か…)
これらの事を掻い摘んで説明すると優樹菜達も唖然としていた。
「なら分かるだろ?マコト殿。精霊達はあまり人族に良い感情は持って無い。今までならまだしも、今の精霊達のトップはあのティターニャ王女だぞ。彼女はとても賢いから行っても拒否されるだけだ」
「まぁそれについては多分大丈夫ですよ。アルン、ちょっといい?」
「…は?」
真琴が精霊達の王的な立場である事を知らないルーンは訳が分からないと混乱する。優樹菜達も似た感じだ。
(…そういえばまだ誰にもティターニャの事話して無かったな)
ちなみに呼び捨てなのは「さん」付けだと他人行儀で寂しいと言われたからだ。
とりあえずアルンに声をかける。…クロと最後の唐揚げを取り合いしていたので自分のを渡しておく。
「なに?マコト」
「ティターニャに今から行って良いか聞いてくれる?」
「ちょっと待ってね〜」
アルンは念話のような事でティターニャと連絡が取れるらしいのでお願いする。いよいよ混乱を極めたルーン達。
「そういえば僕達って今どういう扱い?」
「あ、あぁ。確か未だ混乱しているから訓練には参加しないとか勝手に発表されて実質俺達4人は軟禁状態だな」
「それなら好都合だ」
「…ところで真琴君。ティターニャって誰?」
混乱から戻ったのか優樹菜が質問して来た。ニッコリと笑いながら。
「うぇ!?あ、そのアルンのお母さんだよ。うん」
何故か背筋に薄ら寒い物を感じながら答える。
「アルン殿は確か龍族…ティターニャ王女は龍族だが…いやまさか」
「ルーン、多分そのティターニャ王女で合ってますよ」
その言葉に遂にルーンはフリーズした。
「ふーん…で、何で真琴君はそのティターニャ王女とそんな親しげなのかな?」
「え?いやだからアルンとね」
「マコト〜確認出来たよ〜」
その時にアルンが声を出した。
(助かった!)
「あ、ティターニャは何て?」
何故かティターニャを呼び捨てにすると一層深く笑う(目以外)優樹菜を置いてアルンに聞く。
「いつでも来てね、旦那様。だって〜」
…爆弾が投下された。アルンの言葉に皆の動きが止まる。
「ま…真琴、お前…」
「え?アルンちゃんって確かティターニャ王女の娘って言って…え?」
「…マコト殿、子持ちだったのか」
「……」
あ、優樹菜がフリーズした。いやいやいやそうでは無く。現実逃避を辞めて事情を説明する。
〜数十分後〜
「ああ、なるほど」「それで魔力無かったのね」「マコト殿が精霊王だったのか!」「…(良かった)」
優衣と悠一は素直に納得し、優樹菜は何故か胸を撫で下ろしていた。それよりも…
「ルーン、僕が精霊王って何かあったの?」
「あ、ああ。ティターニャ王女は時々この国に挨拶に来るのだがつい1月程前に精霊王が存在するから自分は代表ではない。なのでもう挨拶には来ないと言ってな。まぁしばらくは騒然となったがそれから全く音沙汰無いので皆不思議がっていたよ。一部では挨拶が嫌になったのでは無いかとか言われていたな」
…まぁあんな美貌を持っていたら色々苦労しそうだからな。
「なるほど…まぁそんな事情で僕も精霊王とか言われてますけど実質何もしてませんがね。まぁとりあえず行きますか」
「い、今からか!?」
「え?そうですけど?あんまり待たせると悪いし」
「い、いやそうなのだが、その…色々と準備が…それに、父上とか」
忘れてはいけないがティターニャは精霊達のトップだ。通常こんな軽々と会える相手では無い。それに皆は寝起きなのでかなりフラットな格好をしている。
(うーん…確かにちょっと急ぎ過ぎたかな)
「そうですね。では今から二時間後にこの部屋で良いですか?」
「あ、ああ。そうだな」
「優樹菜達もそれで良い?」
「おう、そうだな」
「はぁ…精霊2人と契約したと思ったら霊装、次は女王ね…まぁ私も準備してくるわ」
「そうだね。じゃあ一回部屋に戻るね」
そう言って皆は一度部屋へ戻って行った。
(…そういえば一人一部屋あったな。最近皆この部屋で寝てるし着替えも持ってるから忘れてた)
今更ながら女性方には無防備過ぎないか?と問いかけたい。一応こっちは思春期真っ盛りな高校男子なんだから。
(ま、いいか)
ここで流す真琴も大概である。
「ほら、アルンとクロは早く食べて。片付けして準備するよ」
「「は〜い」」
精霊2人の間延びした声を聞きながら真琴も動き出した。
そういえば真琴君まだ精霊王って言ってなかったな…




