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第41話 聴取

ちょっと暗いです


暗く長い廊下をふらつきながら真琴は歩く。バランスを崩して時々転けるが兵士は助けようとせずただ黙って見下ろしていた。

(ちっ、こっちは病人だぞ)

いくら喚いても仕方ないので無理矢理進む。城の廊下を異常に長く感じながら謁見の間に入った。


まず目に付くのは奥の階段を上がった所で座るアイゼン王。階段下でニヤニヤ笑うフォード司祭ほか数名。壁際に沢山の貴族。

恐らく国中の貴族がいる。

…そして反対側には良太を筆頭に不良グループがほとんどいた。

(最近見ないと思ったら…最悪だな)


止まっていても進まないので中央まで進み膝をついた。


「マコト殿。此度のダンジョン遠征ご苦労であった。しばらくは休んで貰いたいのだがどうしても確認しなければいけない「陛下」…どうした?アビス司祭」


王が口上を述べている途中で司祭が割って入った。本来なら死刑並の重罪だが誰も咎めない。

(…八割方というよりほぼ全員って感じじゃないか)


「長話はマコト殿も辛いでしょう。なので単刀直入に尋ねます。マコト殿、あなたはダンジョン内で功績を焦りトラップにかかりましたね?」


有無を言わさない。ほとんど断定的に司祭が問いかける。しかしここで認める訳にはいかない。


「それは虚偽ですね。私達はダンジョン遠征の際に敵魔族の罠にかかりました。その魔族は何とか撃退しましたがその後魔王と名乗る仮面の魔族、それと女性の魔族が2体現れました。彼らは圧倒的な実力を有しており私達は壊滅。何とか生き延びカイン様と合流、帰還しました。これが今回の遠征の顛末です」


真琴が語り終えると周囲から嘲笑が響いた。


「ははは、マコト殿。そうまでして貴殿の失態を隠したいのですか?せめてもう少しまともな嘘をついて貰いたいですね。魔族や魔王がこの国にいる訳が無いでしょう。あぁ、貴方はこの世界に来たばかりですから知りませんでしたか。でしたら残念ですねぇ」


司祭は笑い混じりに言った。


「いい加減認めたらどうです?私が功績を焦りました。皆様に迷惑をかけてすみません、と」


そう茶化して言うと貴族や生徒から笑いが上がった。

(馬鹿かこいつらは。一応は他の意見と照らし合わせるなりやるだろ普通)

一通り笑いが収まると司祭は何度も認めるよう迫ったが、真琴は頑として認めなかった。


「…はぁ、埒が開きませんね。仕方がありません。少しキツイお灸を据えましょうか」


暗に拷問にかけると脅すが、真琴は知らん顔で受け流す。しかしこの流れにもう黙っていられない人がいた。


「アビス司祭!もう充分であろう!マコト殿も病み上がりだ!流石にこれ以上は…」


アイゼン王だ。司祭を睨みながら声を上げる。実際の所、現在の真琴は姿勢を保つだけでも精一杯なぐらいに体力が無い。正直ここで帰りたい。

(はぁ…布団が恋しい…)


「はぁ…甘いですね。ここで見逃せばまた今回のような行為で皆を惑わすかもしれません。何、少しお話をするだけですから。おい、誰か王を自室へお連れしろ」


通常なら従うはずが無い兵士達は当然のように王を部屋から出そうとする。王が何か言ってるが知らん顔だ。その時に真琴が大声で言った。


「ああ、そうそう。サティバが言ってましたよ。『情報と違う』と」


その言葉に司祭が固まる。


「は、まさか私達の中に魔族に内通している人がいると申しますか」

(…ふーんそんな事言うんだ)

「おや、私はただサティバがそう言っていたと述べているだけですよ。いつ、サティバが魔族だなんて言いました?それとも、司祭様はサティバと知り合いに?まさか教会の司祭ともあろうお方が?」


今まで真琴は魔族の名前については一言も話して無い。また、名乗られたのも真琴だけなので他の人は知らないはずの情報だ。


「か、会話の流れですよ。…おい、早く王をお連れしろ」


動揺しながらも王を早く追い出そうとする。流石にここまで来たら王も分かったようだ。真琴を1度見ると今回は抵抗せず早々に退出して行った。

(まぁ多分今から教会について洗いざらい調べるだろな。これで魔族対策に動いてくれると良いけど…)

王に希望を託しつつ前を見る。するとそこには怒りを顕にした司祭がいた。


「よくもあんな虚偽をぬけぬけと言えますね」


周りの目があるので虚偽で通すつもりだ。そして司祭はニヤリと笑いながら続ける。


「穏便に、と思ってましたが少々はしゃぎ過ぎのようですね。まぁ、魔族を倒したのなら相応の実力があるはず。丁度そこに他の勇者様方がいるので戦って下さい。勿論余裕ですよね」


どうやら良太達と戦うらしい。とはいえ、真琴は病み上がりな上体調不良。更には片腕が無く体力も限界に近く精霊もいない。(この部屋には許可した精霊以外入れない特殊な結界が張ってあるらしい)

これでは勝負ではなくイジメだな。司祭は自分と勇者のみを残して他の貴族を退出させるとニヤリと笑う。


そして良太達は武器を構えてかかってきた。誰もが真琴がボロボロになる姿を想像した。







ところが蓋を開けてみればどうだろう。

開始10分。

現在立っているのは真琴を含めて数人、残りは周囲に倒れている。これは別に真琴が特殊な力に目覚めた訳ではない。単純に相手が馬鹿だったのだ。

(確かにおかしいぐらいに強くなっている。真剣勝負なら僕もキツイな)

では何故勝てたのか。それは真琴が相手はまだ力を使いこなせて無いと見抜くと相手を避け軽く流して別の相手にぶつけたのだ。要はフレンドリーファイアを誘発させた。それを繰り返している内に勝手に相手は壊滅してくれたという訳だ。


が、奇跡はここまでのようだ。


「死ねぇぇクズがぁぁあ!」


相手が減った事で乱戦にならず、先程の戦術はとれない。その時に奇声を上げながら前後から二人が飛びかかって来た。


「くっ…」


転がりながら回避するが完全には避けられずかすり傷を負う。


「おーおー無様だな、代表様ァ…やっぱりこの程度かよ」


良太が剣で肩を叩きながら来た。

(げ…最悪)

ある意味1番会いたくない相手だ。


そこからは一方的だった。今までの奴らはまだ力に振り回されている感じだったが、残りの人は慣れたのかある程度使いこなしている。あっという間に真琴は右腕に関節を決められて司祭の前に引きずり出された。


「いい加減認めたらどうです?」


再び司祭が問いかけた。答えるは変わらない。


「…魔族が、いた。

これが…事実だ」


肋骨が折れたのか上手く呼吸出来ない。突然顔に衝撃が走る。


「…っ」


どうやら司祭に蹴られたようだ。


「はぁ…往生際の悪い。貴様がさっさと認めたら良かったものを。怪我をさせても特に効果は無いようですし何か他に手は…」


もう取り繕わないのか口調が荒っぽい。そして何か思いついたのか意地の悪い笑みを浮かべた。


「そう言えば副代表にいましたな。名前は…ユキナでしたか?」

「…!?」


(何でここで優樹菜が!?)

一瞬で動揺した真琴を見て司祭はますます悪い顔をする。


「彼女は美しいですね。私達の間でも噂になってますよ。何でも元の世界でも聖女と呼ばれていたとか…そうですね。彼女に教会に入って貰いましょうか」


訳:認めないと優樹菜がどうなっても知らないよ?


(こ…の、クズが!!)

真琴は激昂するが良太に後ろから無理矢理押さえつけられる。尚ももがく真琴を見ながら司祭は続ける。


「丁度良いでしょう。彼女を筆頭に女性の勇者様方には兵士達の慰問に行ってもらいましょうか。兵達も喜ぶでしょう。そうですね…護衛はリョウタ殿達でどうです?」


フラッシュバックするのは中学生の時の事件。どう転んでも悪い展開しか無いような提案だ。兵士と言えばほとんどが成人男性。その中に女子高生が集団で行けばどうなるかなんて火を見るより明らかだ。狼の群れに羊を放り込むような物だ。


「き…さまぁぁぁあ!」

「うっさいんだよ」


殴りかかろうにも体力は尽き体はボロボロ。その状態で良太に押さえつけられているのだ。動ける訳が無い。


「…話は変わりますがマコト殿はダンジョン遠征で何がありましたか?」


何食わぬ顔で司祭は聞いてくる。ご丁寧に録音用の魔道具まで出してきた。

(ここまでか…)


「……何もありませんでした。私が勝手に動き皆を危険な目に会わせてしまいました」

「…最初からそう言えば良いのですよ。しかし王が余計な事をすると面倒ですね…処分は保留しましょう」

「な…司祭殿!話が違うでは無いですか!」


と、ここで意外な人物が声を上げた。良太である。


「貴方方にはそうですね…手伝って頂いた礼としてメイドを1人付けましょう。よろしいですか?」

「ふん…まぁいいだろう」


こんな奴にメイドを1人。どうなるか何て考える必要さえない。実際良太はニヤニヤ笑っている。だが、それを止める力は今の真琴には無い。

(くそっ!何で僕はこんなに弱いんだ…)


「あぁ、マコト殿ももう帰ってよろしいですよ。貴方は長期間の療養が必要ですね。しばらくは訓練は参加しなくても宜しいですよ」


司祭達はそう告げると足早に去って行った。もう必要無いのかさっきまでと打って変わってぞんざいな扱いだ。


「…対策を考えないと」


真琴は己の無力さを感じながらも今後について考えながら部屋へと戻った。



それでもいくら考えようが肉体は限界のようだ。ただでさえ病み上がりで片腕が無い。その上であの聴取…という名の暴力か。意識がある事の方が奇跡だ。

(あーダメだ…考えが纏まらない)

ふらつく身体を何とか部屋まで進ませ扉を開ける。が、そこまでだったようでそのまま玄関で倒れた。


「…と君!」


部屋から何か聞こえたが最早それさえも認識出来ないまま真琴は意識を落とした。

かなり暗い話になってしまった…


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