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第39話 代償


時は数分前に遡る


このままでは間に合わないと判断した真琴は痛覚の共有を防ぐ為に精霊との接続を切る。しかし迫り来る2体の剣を受けたり避けている時間は無い。

ならばどうするか?

答えは無視する。


(片腕ぐらいくれてやる!)


真琴は剣のど真ん中に突っ込むと左手を犠牲に無理矢理剣を退けて強引に2体の間を駆け抜けその先にいる優樹菜達の所へ向かった。まさかそんな行為に出るとは思わず瞬間的に動きが止まった2体を無視し、魔王と悠一達の間に間一髪で割り込んで横から魔法を弾いたのだ。その後、背を向けた魔王に剣を放った。

そして現在に至る。


「真琴…お前」


悠一達が見上げる先では片腕を無くし、翼の片方が折れた満身創痍の真琴がいた。腕からは尚もまだ血が流れ出ている。


「ま、真琴君!治療するから早くこっちに来て!」


血塗れの真琴を見て優樹菜が悲鳴混じりに呼びかける。しかし、真琴はそれに応えず魔王を睨みつける。


「もう…いいだろ?さっ…さと…帰れ…それとも…まだやるのか?」


息を切らしながらも残った右手で剣を構える。そんな真琴を見た魔王は呆れたように鼻で笑った。


「はっ!ボロボロで魔力も切れかけ、部分欠損。その上霊装も消えかかっている。その状態で良く言えるなぁ…いいぜぇ、殺してやるよ」


その言葉に優樹菜達が慌てる。実際魔王の言う通りでむしろまだ意識があり、霊装を維持している事の方が奇跡なのだ。迫る脅威に優樹菜達が身構えた瞬間、急に魔王は動きを止めて脇腹を見た。

そこは未だ真琴の剣が刺さっている。


「ちっ…ちょっとくらい過ぎたか…これじゃあ決めきれないな。おい坊主!命拾いしたな。今日はこれで帰るとするよ」

「ざっ…けんな…」

「はっ!口だけは達者だな。だがそんなんにやられる程この魔王様も腐っちゃいないぜ!」


そう言うと魔王は背後に黒い円を作り出した。


「じゃあな。俺様を倒したかったらさっさと魔王城まで来い。いつでも歓迎してやるよ!お前ら帰るぞ」

「「はっ」」


そうして未だ状況が掴めず混乱する悠一達を残して魔族達は忽然と消えた。それと同時に真琴も霊装が解除され地面に落下する。ギリギリで悠一がキャッチするが既に真琴は気を失っており、血を流し過ぎたのかかなり顔色が悪く呼吸も浅い。


「なん、だったんだ?あいつら」

「そんな事より!悠一君!早く真琴君を!急いで!」


呆然とする悠一を優樹菜が叱咤する。はっとすると真琴を抱え直して優樹菜達の元へ向かった。が、回復魔法をかけようにも全員魔力が底をついており応急処置もまともに出来ず、遂に優樹菜が半泣きになる。


「ほら優樹菜、とりあえず立って。ここじゃ危ないわ」

「ゆ、優衣ぢゃん、真琴君が、真琴君がぁ」

「さっきも帰って来たから今回もきっと大丈夫よ。それよりも本当にここだと危ないから早く出るわよ」


忘れかけているが此処はダンジョンなのだ。今の状態でまたモンスターが出て来ると普通に危ない。それを思い出した優樹菜も泣きながらも立ち上がる。それを見た悠一は真琴を背負ってとりあえず出口を目指す。


「勇者様方!ご無事ですか!?」


その時頭上から声をかけられそちらを見るとカインを先頭に沢山の兵士がいた。


「「「カインさん!」」」


正に天の助け。心強い味方の登場に3人が声を上げる。こちらに気付いたカインが慌てて降りて来た。


「ユウイチ殿、ユイ殿、ユキナ殿ご無事でしたか」

「そ、そんな事よりも早く真琴君を!」


無事を確認し、安心するカインに優樹菜が血相を変えて訴える。その時に初めてカインは悠一の背に誰かがいる事に気付いた。


「な、マコト殿!?これは一体…」


あまりの容態に言葉を失うが直ぐに切り替えて状況を確認する。


「我々は魔族が表れたと報告を受けたのですが敵はいずこに?」

「えーと…帰りました?」


優樹菜はまともに応えられず、優衣が優樹菜を宥めているため必然的に悠一が答える。しかしその悠一の答えもどこか不明瞭だ。


「…は?」

「俺達も良く分かりませんが、真琴が剣を刺したら急に帰りました」


悠一も激戦の後の疲労で未だ混乱しかけているのでまともに頭が回らない。


「…では敵はいないと?」


状況が分からないのでカインは端的に質問する。


「恐らく」

「では急ぎ地上へ帰還します。ユキナ殿、申し訳ありませんが我々は討伐軍なのでまともに治療が出来ません。もうしばらく辛抱下さい」


治療役のいない討伐軍。これはどう考えてもおかしいのだが今はそれよりも真琴を治療しなければいけないのでカイン率いる討伐軍の中央に混じり、優樹菜達4人は最短距離で地上へ帰還した。




こうして勇者達の初ダンジョン攻略は幕を下ろした。





それから3日後。王城内の医務室にて真琴は目を覚ました。

(何で医務室?)

ふと体温を感じて毛布をめくると腰のあたりにアルンとクロがしがみついて寝ていた。


状況が把握出来ず混乱していると突如横で何かが落ちる音がした。釣られてそちらを見ると入口付近でこちらを見て固まっている優樹菜、優衣、悠一がいた。足元には果物と籠が転がっている。アルンとクロも物音に気づいて起きたが何故か二人も真琴を見て固まる。


「えーと…おはよう?」


良く分からないがとりあえず挨拶をする。


「真琴君!!」

「うぉ!?」


いきなり大声で呼ばれたと思ったら優樹菜が駆け寄って来て思いっきり抱きつく。


「いっ…ゆきな…ちょ、いっ」

「真琴君!…本当に、真琴君だ」


ここは医務室で真琴は病人、というか重度の怪我人。そこに全力で抱きつく優樹菜。色々な意味で真琴は悲鳴を上げる。


「優樹菜!優樹菜落ち着いて!真琴が死んじゃう!」

「…え?……あっ、え?あ…ご、ごめんなさい!真琴君、大丈夫?」

「あぁ、うん、大丈夫だ…よ?」


ギリギリで止めに入った優衣のおかげで起きてすぐ気絶はしなかった。優樹菜は改めて真琴を見ると身体中を触りだした。


「とりあえず真琴君大丈夫だった?何処か痛い所無い?もう血は止まった?」

「え?ちょ…ゆ、優樹菜!?ちょっとタイム、落ち着いて。悠一、優衣!ヘルプ!」

「いやいや真琴。お前本当に大丈夫か?何とも無いのか?」

「あんた3日寝てたのよ?本当に大丈夫なの?」

「マコトが起きた〜良かった〜」「ま、まぁ私は知ってたわよ。とりあえずあんたは落ち着きなさい」


先程とはまた違った事態に焦って悠一と優衣に助けを求めてみるが、逆に二人にも同じ事を聞かれる。何故かアルンは僕が起きた事を泣いて喜びそれをクロが慰めている。


何で…3日も寝ていた?


「とりあえず落ち着いてって。皆さっきからどうしたんだ?僕はこの通り…え?」


とりあえず立とうとすると、バランスを崩して倒れかける。慌ててベットを掴もうと左手を出そうとした。そこで初めて違和感を覚える。

ベットが掴めない。

いや、掴む腕が無い。

ちょっと待って。何で…あれ?


「真琴君…その、大丈夫?」


横から優樹菜が心配そうな声で僕の顔を覗き込んだ。そこで初めて自分が床に倒れていて優樹菜に支えて貰っていたと気付く。そしてその横では悠一と優衣が心配そうにこちらを見ている。アルンとクロも僕を見ていた。


「あぁ…そっか…」


やっと思い出した。そういえば魔王とかと戦ってたんだ。そして最後の一撃を防ぐ為に…


「えーと、皆大丈夫?怪我とかしてない?」


こうしている時点で大丈夫だと思うが一応確認しておく。


「私達はそこまで深い怪我はしてないわ」

「ああ、どっちかって言うとお前の方が色々と…」


悠一が言いずらそうに言葉をすぼめるがどうやら皆無事帰れたようだ。


「真琴君本当に大丈夫なの?」


優樹菜が再度尋ねてくる。


「ああ、ごめんね優樹菜。もう大丈夫だよ」

「でも…その、腕が」


優樹菜も気まずそうに言う。横で悠一達も若干気まずそうにしている。

(大方自分達のせいで、とか思ってるのかな)

真琴は座り直すと優樹菜の肩に手を置いてこっちを見させる。


「優樹菜、確かに僕は左腕が無くなった。でもそれだけで5人を守れたんだ。僕はむしろこの怪我を誇らしく思うよ」

「で、でも…」「いや、それでもお前」「せめて何か…」


優樹菜が泣きかける。横の二人も不服そうだ。

(うーん…困ったな)


「だったら、また色々助けてくれるかな?左腕が無くなってちょっとバランス感覚が狂っちゃってさ」


片手を挙げて参ったポーズをする。多少は分かって貰えたかな?


「またってお前…」「今まで助けた事あった?」「真琴君がそれで良いのなら…」「アルンに任せて!」「当然よ」


一応は皆納得して貰えたようだ。その後に聞いた話によると、とりあえず今回のダンジョンは終わったらしい。サティバの言ってた事を考えるとこれからはかなり大変になりそうだが。

まぁそれでも今ぐらいちょっとゆっくりしても良いかな。


確かにこれからはかなり忙しくなるだろう。しかし、今真琴は自分の無事に喜んでくれている5人を見ながら心の底から思う。


5人が無事で…皆を守れて本当に良かった。


またこうして皆と話せて本当に良かった。


と。





======勇者組第1次ダンジョン遠征結果報告=======

参加人数 42名

到達階層 21階層

獲得魔道具 12点

死亡者 0名

怪我人 38名

生還者 42名


特筆

・今回の遠征によりリーダーマコトは片腕損失

・他の参加者は骨折等の怪我はあったが一生傷は無し。

尚、リーダーマコトが霊装を使用したという証言があるが未だ未確認の為真偽は不明。また、今回の遠征で魔族の出現報告が出されたが実際は功を焦ったマコトがトラップを発動させてしまい、その効果で全員が幻覚にかかり、その状態で魔物の襲撃を受けた事が真実である(兵士長ガルム証言)

これには同行した兵士、数人の勇者が同意している。

マコト本人は未だ気絶している為、意識が戻り次第事情聴取を行う。


以上



制作者 モール教司祭 アビス

三咲先生による補足説明


「皆さん!私の事覚えてますよね!

真琴君のクラスの担任の三咲ですよ!

ちょっと出番がな…ゴホン時間があったので時々この枠で説明役をやりますね」


異世界転移した時は生徒+先生で90前後でした。

今回の遠征では真琴君達30人+兵士で行ってます。それ以外の戦闘が苦手な人と良太君達は皆さん城にいるようですが何やら良太君達が怪しいですね…

とりあえず真琴君が早く復帰出来る事を願ってます。それでは今回はこの辺で。


読んで下さってありがとうございます。

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