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第36話 サティバ


丁度階層の端にある崖の近くで魔族と対峙する。他の皆もこちら側に来た。まさに多勢に無勢、圧倒的にこちらが有利なのだが奴は余裕で剣を構えている。


「ふむ…確かにあなたは強い。力だけでなく状況もしっかり把握し、更にそれらを的確に処理する頭がある」

「それはどうも」

「そんなあなたに敬意を表しましょう。私の名前はサティバ、死んだ生物であれば操る事が出来ます」

「僕の名前はマコトだ。召喚された勇者って事になっている」


ゆっくりと構えスキを伺う。


「ではその体を貰い受ける事にしましょう!」

「ごめん願いたいね!」


サティバが斬りかかった。恐ろしい加速で気付けば目の前だ。身体強化でかろうじて残像が追えるレベルだ。


「や…ろう!」


咄嗟に前に倒れて難を逃れる。お返しとばかりに着地を狙って足払いをかける。


「ほう…初撃を避けますか。ですが甘い!私は魔族ですよ?」


言うが早いかバランスを崩したサティバは飛び上がった。そうだ、奴には翼がある。そしてサティバは上空から魔法を撃ってくる。

(空とか反則だろ!)

なす術なく必死に躱し続ける。


「真琴君!」

「邪魔ですよ?ちょっと遊んでなさい」


魔法組が支援しようとするがサティバは再び魔族を召喚すると兵士達へ向かわせた。止む無くガルムの指示の下対応するが真琴への支援が出来なくなる。


「余所見するなよ」


優樹菜達へ注意が逸れたスキに真琴は魔法を放つ。イメージするのは槍。炎を極限まで細くし、空気抵抗を減らす。そしてそれを勢い良く射出する。音速でサティバに迫るも花唄混じりに回避されてしまった。

(くっ…速い、やっばり強い)

そして再び魔法の雨。

(なら…!)

真琴はサティバの魔法を避けながら頭上に先程より太めの槍を多数射出する。


「どこに撃ってるのです?

気でも狂いましたか?」


「どうでもいいけど下だけで良いのか?」


「何!?」


突如サティバより上から無数の炎の槍が降り注いだ。

真琴は先程魔法を上空に打ち出し、それが弧を描いてサティバに降り注いだのだ。サティバは咄嗟に翼で頭上をガードする。


「き、貴様ぁぁ!」


着弾


絶叫と轟音を響かせながらサティバは地面に落ちた。トドメはさせ無かったが翼はもう穴だらけで使えないようだ。


「くふっ、やりますね…いいですよ?殺してさしあげましょう」


どうやら逆鱗に触れたようだ。額に青筋を浮かべたサティバは今まで以上の力で斬りかかって来た。頭上で受け止めるが有り得ない程の力で押し込まれる。

(くそっ!馬鹿力め…なら!)

剣の向きを調整し相手を受け流す。相手は激昂していて冷静では無いのでかなり効いた。だがそれでも強い。力技ばかりだがこちらが先に限界が来た。何合か打ち合った時に真琴の剣が耐えきれずに折れた。


(ちぃ!なら素手だ!)


多少は武術の心得はあるので相手を躱してカウンターを決める。

(取った!)

右ストレートが入りサティバはよろめく。そのスキに手首に蹴りを入れて相手の剣をはじき飛ばした。


「はぁ…もう充分ですか?」

「…痛いですねマコトさん。酷いじゃないですか」

「もういいでしょ?いい加減引いて下さい」


ちらりと背後を見ると勇者サイドはかなり善戦しているようだ。


「思い上がるなよ?人族風情が!」


やはりダメなようだ。サティバが素手で殴りかかって来る。身体を屈めて拳を避け、お返しとばかりに中段へ突きを入れた。

(これで…!)

が、1つ真琴は思い違いをしていた。それは今は殺し合いをしているのだと言う事だ。つまりルールなど無い格闘戦闘…ただの殺し合いだと言う事だ。なのでサティバが真琴の頭を掴んで膝蹴りを放った時に反応出来ずにモロにくらう。


「がぁ…やろぉ…!」


そこから猛攻が始まった。しかし相手は魔族、真琴は防戦一方で反撃が出来ない状態が続く。

しかし、それにも終わりが来た。真琴のカウンターをサティバがかわし、突きを中段へ入れた。モロに食らいマコトが後ずさる。そのスキを見逃さずサティバが追撃をかける。


「《爆炎》」


そこにマコトが魔法を放った。完璧な不意打ちだがサティバは構わず拳を放つ。フォームも威力も完璧な渾身の一撃だ。受ける為に腕をクロスさせた時にマコトの内側から悲鳴が上がった。


『マコト…もう…無理!』

(な、クロ!?)


気付けば五分以上戦っていたらしくクロに限界が来た。しかもタイミングが悪すぎた。真琴の身体強化が解除された瞬間にサティバの拳がぶつかる。


「がっ!ああああああああ!?」


バキッ!という決して人体から鳴っていい音では無い物が響く。例えようの無い激痛が真琴の脳を支配する。魔族の本気の突きを生身で受けたのだ。幸い完全に身体強化が完全には解けて無かったのでそのまま穴が開く事は無かったが突きの衝撃により両腕はボロボロだ。

更にインパクトを殺しきれず真琴は斜め上に打ち上げられる。そして束の間の浮遊感と共に崖へと飛び出してしまう。

(な!?崖か!?)

下へ落ち始める。しかし、唐突に何かに握られる感覚と共に浮遊は終わり全身の骨が悲鳴を上げる。サティバは勝ち誇ったように笑みを浮かべ拳を突き出しながら、真琴を見る。


「念には念を込めましょう」

「がぁぁぁぁあ!?」


どうやら魔法でサティバは真琴を掴んでいるようだ。更に凄まじい力で握られる。


「ふむ、普通の人族ならこれで放置なのですが…マコト、貴方は危険です。他の勇者よりも強い。それに己の役割も理解し、最大限の仕事をする為の頭脳も持っている。このまま成長されると間違いなく我々魔族の脅威となるでしょう」


語りながらサティバは空いている手に魔力を溜める。


「素晴らしい勝負でしたよ。私も久しぶりに本気で戦いました。最後がこれとは心苦しいですが貴方は生きていると確実に厄介な存在になります。それではさようならマコト」


(な、にを?)

未だ握られている状態で身動きが取れない。そんな真琴に向かってサティバは特大の漆黒の槍を放った。見るからに威力の強そうな巨大な槍だ。


「な!?」


「真琴!」「ま、真琴!?」「いやぁぁ!真琴君!」


ようやく戦闘を終えた優樹菜達が見たのは空中で奇妙に止まる真琴と無慈悲に槍を放つ魔族の姿だった。


咄嗟に優樹菜は手を伸ばす。






そして数瞬後






槍が着弾し爆音と共に真琴は爆発に包まれた。

おや?テンプレの予感が…

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