第34話 フォードダンジョン
遂に来たダンジョン攻略当日
真琴はまだ日が昇り始めた頃に中庭に行き、素振りを始める。最近の真琴の1日は朝早くにカイン達と素振りをする。その後朝食を作る。午前に魔法、午後に剣術の授業を受け夜はパーティや貴族との対談に行ったりしていた。休みの日は精霊の森に行ってティターニャ王女に会ったりもしている。
(まぁこんなもんか)
素振りを終え、軽く息をつく。
最近体の調子がやけに良いのはやはりアルン達の軽い身体強化のおかげだろう。つまり神龍や魔族と契約した影響だ。やっぱりすごいな。ちなみにそれを意識してからは出力なども調整出来るようになり毎朝カインさん相手に練習している。
ある程度時間が経つと朝食を作る為に部屋へ戻る。
「あ、真琴君おはよう。朝からお疲れ様」
「おはよう真琴。アルンちゃん達は起こしても良い?」
「おはよう優樹菜、優衣。アルン達はお願いするよ。ついでに彼氏も起こしておいて」
部屋へ戻ると優樹菜と優衣がいた。前に皆で朝食を食べている時にルーンが椅子が少ないと言って人数分の椅子、更にいつでも泊まれるようにと毛布を僕の部屋へ入れたのだ(ちなみに真琴が意見を挟むスキは無かった)。以来こうして毎朝皆で朝食を食べて、時々誰かが部屋に泊まったりしている。てかほぼ毎日皆泊まってる。最早シェアハウスならぬシェアルームだ。
(いや、それでいいのか?女性方は。ちょっと無防備すぎやしません?)
まぁ今更言っても仕方が無いので朝食を作る。しばらくするとルーンもやって来たので皆で食べる。
「んーやっぱり真琴君のご飯は美味しいね」
「そうだな。城のご飯も美味いのたがマコト殿のご飯はなんと言うか…」
「家庭的で優しいな味付けね」
「そう、それだ。ユイ殿の言う通り優しい味付けだな」
「あーうん、ありがとう。でも不味かったらちゃんと言ってよ?」
「「「それは無い」」」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
そんな感じで朝食は僕が作っている。皆が満足してくれてるなら嬉しいな。
「そういえばいよいよ今日はダンジョンだな!」
「そうだね。悠一は準備は大丈夫?」
「おう、ばっちりだ」
「はは、頼もしいな。まぁ問題は…リョウタ殿達か」
その言葉に皆が黙る。彼らのここ1ヶ月は特に酷かった。毎日のように暴力やセクハラなどの被害が報告されそれの対応に真琴達各校の代表、副代表は追われた。しかも時々教会派の貴族と会っているのを見かけるらしい。
「しかも訓練もまともに受けて無いくせに妙に強いからな」
「男子高校生なんて体力のありあまる時にこんな力貰ったらそりゃ暴走するよ」
悠一、真琴は同じ状況で気持ちが分からない訳ではないだけにため息が出る。
「こんなんで連携とか無理だろ」
「まぁあいつらほとんど力押しだしね」
「気にしていても仕方ないよ。とりあえず優樹菜と優衣は自分の身の安全を第一に考えて行動するように。余裕があったら周りにも伝えておいて。それとルーンも貴族達との付き合いを極力控えておいて」
ここ1ヶ月でだいぶルーンの呼び捨ても慣れた。
「ユキナ殿達は分かるがどうして私もなんだ?」
「…あくまで勘だけどどうも最近教会が妙だ。何処かかなり強気になってきてる」
「それは…いや、分かった。気を付けよう」
真琴の表情が真剣だったのでルーンも真剣に頷く。
「さて、そろそろ時間だ。準備をしたらまた集合だな」
とりあえず話を切り上げ、準備に移る。各自も準備をしに部屋へと戻った。
「マコト、私達はどうしたら良い?」「おいてけぼりはやだよ」
クロの後ろからアルンも不安げに見つめる。
「ごめんな、もう置いてかないよ。むしろ今回は頼りにしてる。とりあえず僕の中に入っていてくれるか?」
頼りにしてると言うと二人共笑顔になって頷いた。
「マコト、あれは使うの?」
「いや、予定通りに進めば使わないで済むはずだ。切り札はギリギリまで伏せて置こう」
僕とアルンはこの1ヶ月の特訓である力を手に入れた。
(出来れば使わないで済みたいが…どうにも嫌な予感がするな)
予測はあくまでも予測、考えていても仕方が無いので準備をして集合場所へ向かった。
「さて諸君。今回私達はこの帝国内にあるフォードダンジョンへと向かう。諸君の力を存分に奮ってどれだけ進めるのか今から楽しみです」
今回は僕達転移者と騎士団が一緒に行く。とは言え人数が多いので不参加を申告した約半数の生徒は参加していない。(戦闘が苦手な者と不良グループの約半分だ)
そして団長は兵士長でもあるガルムだ。
(本当に大丈夫だろうな?それよりも…良太がいない)
ふと地球組を見ても何処にも良太の姿が無い事に不安をおぼえつつも、とりあえず後ろの方で優樹菜達と固まりながら付いて行く。女子生徒も優樹菜達がしっかり連絡してくれたおかげか、必ず数人のグループで固まっていた。前の方では男子生徒がやや興奮気味に歩いている。
それからゲートと呼ばれる特殊な道具で瞬間移動のような事をして出た所に大きな塔が建っていた。しかし実際のダンジョンは登るのではなく下へと潜るそうだが。どうやらここが目的地のようだ。
中はかなり広い。流石に上層の魔物は弱いので先頭がどんどん進んで、気付けばもう20層ほどだ。
ここまで大きなトラブルは無かった。
次の層は魔物がほとんど居らず真ん中に広場があった。
「諸君。ここらで一度休憩だ」
ガルムがそう言うとほとんどの生徒は座り込んだ。
(まさかとは思ったけどやっぱり初めて装備を着た生徒が沢山いた)
戦闘中の動きを見ているとやはりたどたどしかった。なので疲労が多いのか皆座りこむ。
『マコト』(分かってる…まだいるのか)
自分の内側から警戒するようなクロの声が聞こえる。
「真琴君どうしたの?さっきからずっと周り見てるけど」
ふと周りを見ると他の代表、副代表達は僕を心配そうに見ている。
(丁度良いか…彼等なら信用出来るな)
そう考え皆に向かって小声で告げた。
「皆、そのまま落ち着いて聞いて。さっきからずっと何かがこっちを見てる。しかも囲まれている」
その言葉に皆が固まる。そもそもこの階層は変だ。魔物がほとんどいないし、中心がこんな開けている。まるでここで休ませるように。そして周囲ではずっと何かがこちらを見ている気配がする。
「これは…!」
魔法で探ったのか優衣が青ざめる。その瞬間周囲の魔力が一気に高まった。
「全員武器を構えろ!」
咄嗟に叫んだが、ほとんどの生徒は魔力が感じられず怪訝そうな顔をする。
すると地面全体が幾何学模様を描いて光りだした。
(魔法陣!?)
本で読んだ内容によると魔法陣は個人では扱えない規模の魔法を発動させる為に用いるそうだ。それがこの階層全体に発動された。
「うぉ!」「きゃっ!」「な、何だ?」
一斉にパニックが起こる。
そして…床が落ちた。
全く予想していなかった現象に咄嗟に身体強化をして身構える。
そして全員が一階層下へ落ちた。
あちこちで悲鳴やうめき声が聞こえる。
「落ち着け!周囲の状況を確認しろ!助けが必要なら周りを呼べ!
各自この場に集合し、代表は点呼してメンバーを把握!急げ!」
パニックによる二次被害を防ぐ為、敢えて命令口調で指揮する。幸い皆すぐに集合した。怪我人、行方不明者もゼロだった。
「ガルムさん、この階層は?」
癪だがここは経験者に知恵を借りる。ガルムも状況が状況なだけに私情を捨てて協力する。
「21層で間違い無いだろう。その証拠に奥に崖があるだろ?あそこは落ちたら絶対に帰れないぐらい深い。我々でも底は把握していない」
「そうですか。とりあえず皆今すぐ戦闘態勢を取れ。盾持ちを前にして壁際を背に階段まで後退だ」
その言葉を受けて兵士と一部の生徒が即座に動く。が、ほとんどの生徒は戸惑って動かない。(一部の奴らに至っては僕が指揮を取る事に不満を述べだした)
「分からないのか?魔法陣が発動したと言う事は誰かが意図的に落としたと言う事だぞ?」
ただ床が落ちただけならまだ良かったが魔法陣が発動したなら十中八九あの視線の奴らの仕業だろう。ようやく自分達の危険な状況に気付いた生徒も動き出した。
しかし
「ほう、そちらはかなり指揮官がいるようだ。情報と少し違うが…まぁこちらの方がやり甲斐があるだろう」
そこに男性の声が響く。生理的に嫌悪感を抱くような、神経を逆なでする声だ。そちらを見ると端の方に尻尾と翼を生やした男性が立っていた。更に後方からまだ出てくる。
「魔族…だと…」
それを見てガルムが呻く。
「いかにも。我らは魔族だ。偉大なる魔王様の命により貴様等を抹殺する」
その言葉を合図に魔族が一斉に駆け出した。
攻撃目標は…僕達だ
ちょっとダンジョンまでの道程が雑になってしまいました…
ゲートはあらかじめ定めた地点同士を魔力を込めたら何時でも移動出来る道具です。




