第29話 vsカイン
「…行くぞ!」
そのカインの宣言を聞いた瞬間に真琴は全力で前へと踏み込んだ。上段に振り上げた木剣をカイン目掛けて降り下ろす。それを見たカインは今までどおり鞘から剣を抜き真琴の木剣を弾こうとする。
(そこだ!)
「なっ!?」
カインから驚きの声が上がる。なぜなら真琴がカインの剣の刃に対して直角になるように木剣の腹を当てたのだ。
そうするとどうなるのか?
答えは、真琴の木剣が折れる。
通常なら弾かれるだけだが、カインの剣速と威力は異常だ。加えて真琴も身体能力は多少向上している。カインの刃に対して剣の弱いところで受けたら折れるのは必然だ。そんな試合を捨てたような真琴の行動にカインの動きが一瞬鈍る。
(これで…!)
それを見た真琴は木剣(ほぼ持ち手だけ)の残骸を捨て空中を舞う剣先を掴み、降り下ろす。
「くっ…なんの!」
しかし、カインは身体強化を使って強引に後方へ跳ぶ。二人の間に空間が出来た。
(今のを避けるのか…
出来れば決めたかったが…さて、どうしよう)
さっきの攻防で真琴の武器は折れて剣先だけになった木剣。対してカインは攻められたとは言えそのまま木剣は持っている。
「ははは!素晴らしい!私が身体強化をしてもここまでやられるとは。いやいや世界は広い」
カインさん何故かすごくテンション上がってます。
(この人典型的なバトルジャンキーだ!…いやまぁ僕も人の事は言えないけどさ)
目を爛々と輝かせるカインさんを見て軽く溜め息が出そうだ。しかし真琴もある意味この勝負をどこか楽しんでいる事は否定出来ない。とりあえず真琴は剣先を右手で逆手に構える。それを見てカインさんも構え直す。
(さあ、どう来る?)
今度はカインさんからだ。力強く前へ踏み込む。しかも身体強化をしているので一瞬で目の前まで来た。
「んな!…ちょ、まっ」
慌てて回避するため体をずらす。真横を神速の剣が通る。その威力は凄まじく、避けたものの地面に衝突した余波で吹き飛ばされる。
「惜しかったか…だが、次で決めましょう」
そう告げると再び構え直す。
(くっ…そ、バトルジャンキーめ、今殺す気だっただろ!そっちがその気なら…)
カインの目の前で吹き飛ばされた真琴が立ち上がり、次は左手で剣先を逆手に構える。そして右手は鞘を持つ。
「この期におよんでまだ何かありますか。いいでしょう、かかって来なさい」
その言葉を受け真琴はカインに向かって駆け出した。左手は後ろへ回し右手の鞘で殴りかかる。それに対してカインは真琴の頭ごと叩くつもりで、水平に薙いだ。
(これでこの勝負は…!)
カインが勝利を確信した瞬間、真琴は右手の鞘を一瞬離し、逆手に持ち変えると前方に倒れるようにカインの横をすり抜けた。
「なぬっ!?」
カインは咄嗟に振り返る。身体強化の恩恵で瞬時に振り返えっても、周りをブレずにはっきり見る事が出来る。
しかし振り替えったカインが見たのは大量に舞う草と土埃だ。その奥で鞘を両手で構えて跳び殴りかかる真琴が見えた。
「なんのこれしき!」
そう叫ぶといつもの様に、左の鞘の位置から右上へ振り上げる。
真琴の鞘が吹き飛ぶ。
(マコト殿の剣先は…?)
真琴は両手で鞘持ち構えて跳びかかって来たので今鞘を吹き飛ばし何も持って無い。カインは戸惑い一瞬動きが鈍る。
それを見た真琴は、
(き…た!)
口の端を吊り上げニヤリと笑う。それを見たカインは背筋をゾクリと寒気が駆け抜ける。
カインの目の前で未だ跳んでいた真琴が自由になった左手を降り下ろす。すると次の瞬間、真琴の手に剣先が表れた。
真琴の袖口から。
(な、なんと…!)
真琴はそのまま腰を回転させ袖口から出した剣先を右手で掴み、降り下ろす。カインは木剣を振り抜いた体制であり受けるのは不可能。後ろへ跳ぼうとしてもその位置は真琴が始めに踏み込んだ場所で少し沈む。
普段ならば問題無いが今はその一瞬が致命的なスキとなる。
「もらったー!」
真琴は勝利を確信し、右手を降り下ろす。
だが、カインは諦めなかった。
「なんの!」
ダンっ!!
そして決着が着いた
「な…に…?」
始めに言葉を発したのは真琴だった。その目は信じられないと見開かれている。そしてその目に映るのは…空。
そう、カインはあの瞬間に後ろへ飛ばなかった。むしろ前へ踏み込んでいたのだ。そのまま真琴の下に身体を入れて一本背負いの要領で投げ飛ばしていた。その結果がご覧の通りである。
悔しげに顔を上げると涼しい顔のカインさんがいる。
「…参りました。僕の負けです」
「何をおっしゃる。身体強化した相手にここまでやれたマコト殿こそ勝者だ。まさか私がここまで追い詰められるとは思わなかった…」
そう感慨深そうに言うとふと真面目な顔で小声でカインが聞く。
「一つだけ教えて下さい。マコト殿は本当に身体強化を使っていませんか?」
「……ご想像にお任せします」
その質問に真琴は気まずげに返す。実は真琴は身体強化は使って無いがそれに似た物を使っていた。以前にクロから聞いていたのだが真琴は今大量の魔力を保有している為、多少なりとも外へと漏れ出してしまう。それの影響で常時軽い身体強化を発動している様な状態になっているとか…。今回ギリギリまでやれたのはこの身体強化(仮)やカインさんが連戦で溜まっていた疲労などのおかげだろう。
ちょっと答えにくそうな真琴をしばらく見たカインさんはふっと笑った。
「またいずれ教えて頂きたいものですな」
「すみません…また相手をお願い出来ますか?」
「勿論です。何時でも歓迎します」
そして、カインと真琴が握手をすると周りの兵士達から拍手が沸いた。それにつられて生徒達も拍手をしだす。
(半分強の生徒は気に食わなさそうに去って行ったが)
何だか気恥ずかしくなり真琴はカインに礼を告げると優樹菜達のところへと戻った。
「真琴君お疲れ様」「流石真琴だな!かっこよかったぞ!」「いやー、やっぱりあんたは規格外だね」
「何言ってんの。負けたんだよ?僕」
「いやいや真琴さん?相手プロだよ?しかも身体強化してたんだよ?普通無理だって」
「そうかな?」
((((そうだよ!!!))))
この会話を聞いていた全ての人の心が一つになった瞬間だった。
「ま、とりあえず部屋に戻ろうか」
「そうだな。もうけっこう暗いしな」
勝負に夢中で気付かなかったが、もう日は落ちて周囲はけっこう暗くなっていた。
「じゃあ、戻るか」
もう一度周りの兵士さん達に礼を告げてその場を後にした。…カインさんはまだ素振りをしていたが。あの人ほんとに人間だろうか?
「さてと、とりあえず称号だな」
部屋に戻り腰を落ち着けると早速ステータスプレートを出して称号を見る。
(アルンとクロは疲れたのか寝ていた。そういえば昼には戻れなかった)
マコト (17)
称号 勇者のリーダー☆
転移者☆
精霊王☆
神龍の主
魔族の主
ドラゴンテイマー☆
成長する鬼☆
剣術を極めし者☆(New)
…あれ?何か増えた?てか普通に特殊効果のあるやつ多いな…カインさん曰く初めの称号は大体大きな特殊効果が付いているがそれ以降はほとんど無いそうだ。
まぁ良い、とりあえず自分に効果のある称号を確認する。
勇者のリーダー☆
全体的な身体能力の向上に加え、空間認識力が向上する。
転移者☆
転移先の言語を習得できる
精霊王☆
契約していない精霊も双方の同意があれば行使出来る。
ドラゴンテイマー☆
契約していない龍族でも操れる
成長する鬼☆
成長速度が倍になる
剣術を極めし者☆
剣術を行使する場合身体能力が向上する
…なんだろう。かなり大雑把な説明だな。
(まぁ恐らくカインさんと戦えたのは成長する鬼とかいう称号のおかげもあるだろう)
とりあえず一つ一つ自分なりに解釈していく。
「まぁ基本的に身体能力の向上がメインだな。とりあえず今まで通りにやっておこうか」
色々と気になる事はあったが今はお腹が空いたのでとりあえず、とご飯を作る真琴だった。
初めての戦闘シーンでしたがどうでしたか?




