第2話 朝休みぐらい寝させて下さい
2017/09/04 誤字脱字修正しました
悠一と優衣と別れてから二人は軽く話しながら歩いていた。
「でも、いくら学校同士が近いからってこんなバラバラにならなくてもいいのにね」
「優樹菜、それ今更だよ?
もう高校生になって一年たつよ?
それにみんなそれぞれの進路があるだろ?」
「それはそうだけど…でもなぁ…」
優樹菜はどこか釈然としない様子である。
「でも改めて考えてみると優衣とか凄いよな。
新中央って超進学校に入試1位で入学してしかもその成績を今もキープしてるなんて。
悠一だって前はなんでも力業でやってたのに、今ではすごく細かい作業も軽くやってるし」
「あ!それは分かる。
優衣ちゃんも確かに凄いけど、悠一君は前は何でも無理矢理やって物壊して怒られてたもんね」
あははと、二人で笑いながら校門をくぐる。
と、玄関で優樹菜がふと思い出したように
「真琴君
今日こそ寝ないでちゃんと授業受けてね」
「わ、分かってるよ…多分」
「ちゃんと目を合わせて言おうよ…」
と、注意して来た。
それを適当に流しながら教室へ入る。
「はよー」
「よう真琴、お前ら相変わらず仲良いな」
「おはよー」
「真琴君おはよー」
いつも通りのクラスメートからの挨拶を返しながら自分の席(窓際の最後尾)へ向かう。
ちなみに優樹菜は廊下側の最後尾だ。
(この季節にこの席で寝るなと言う方がおかしい。ああ、ポカポカしてて最高だ…
これは僕が悪いのではなくこんなに暖かいこの席が悪い。うん)
などと適当な理由を並べ早速寝る準備に入る。
それを見た優樹菜は
(あー、さっきあんなに言ったのに…もうっ後でお説教だね)
などと、不満(?)を募らせていた。
「いやー…
やはり彼氏さんが気になりますかね?
優樹菜さん?」
「え?か、かれ!?」
どこか面白そうに前の席の女子生徒、三和風花が優樹菜に話しかけてきた。
ちなみに席順はくじ引きなので男女の順番はわりと適当だ。
そして考え事をしていて不意討ちをくらった優樹菜はその言葉に思いっきり同様してしまう。
「あれれぇ?
まさかまだ告白してないの~?」
ニヤニヤ
「え~?優樹菜まだなの~?」
ニヤニヤ
「い、いやだ、だから私と真琴君はまだそんな…」
「え?今まだって言った?」「言ったね!」「言った!」
「ち、違、いや、だからこれは…」
「よし、言質はとった!」
「ま、待ってだから私は…うう…」
などと優樹菜をからかって借金取りのようなノリで友達数人が騒ぎだすと、それをきっかけに周りの女子生徒達も集まり結果優樹菜が墓穴を掘って顔を真っ赤にしてうずくまった。
それを女子達はとても楽しそうに見学しつつさらに囃し立てヒートアップさせていく…
それを見て男子生徒達は真琴に嫉妬の視線を送り軽く殺意をたぎらせていた。
余談だが優樹菜は「桜ヶ丘高校の聖女」略して「桜の聖女」と呼ばれるほど美人で校内でも1、2を争う程の人気だ(本人は知らないが)
…そして当事者である工藤真琴本人は
「…すやすや」
とっくの前に(主に席に座って約十秒後から)夢の世界へ旅立っていた。
((((((殺))))))
その後さらに殺気が増したのは言うまでも無いだろう。
そんな最早お馴染みとなってしまった朝休みを終え、チャイムが鳴りホームルームが始まる。
「はーい、皆さん席に戻ってくださーい。
後誰か工藤君起こしてねー」
開口一番そんな教師らしくない一言を付け加えつつ入って来たのは少し小柄で優しそうなほんわかした雰囲気の女性…真琴たちのクラスの担任、西田三咲である。
ちなみに三咲先生の一言を受けて男子生徒のほとんどが嬉々として真琴の背中を叩きに向かった。
「痛い痛い痛い痛い!」
男子の集団から真琴の悲鳴が聞こえたのも空耳では無いだろう。
「おいお前ら!起こすならもっと優しく起こせよ!」
そんな真琴の抗議も華麗にスルーし男子達は自分の席へ戻り、
「だったらまず学校で寝ないようにして下さい!」
「う…そ、それは」
三咲先生の言葉で真琴はあえなく撃沈した。
「それではホームルームを始めます。
日直は号令かけてー」
「起立!礼!」
「「「おはようございます」」」
「着席」
「はい皆さんおはよう。それではまず連絡から…」
そうしていつも通りの朝が始まった。
他の学校やクラスとは少し違うかもしれない。
それでもこのクラスにとってはいつも通りの朝だった。
この時はまだ、僕も他の皆もこれからいつも通りの1日が始まると、何の疑いもなく信じる事が出来た。
そう、この時はーー
しばらく2日で投稿出来るように頑張ってみます