第26話 寝たいのに
「この部屋だったな」
「ええ。すみません、こんな時間まで」
「いや気にするな。私が好きでやっただけだ」
「それでもありがとうございます。助かりました」
ところ変わって真琴の部屋の前。ルーン殿下案内のもと、真琴はアルンとクロを抱えながら戻って来た。
(あぁ!やっと寝られる早くベッドにダイブしたい)
何だかんだでけっこう疲れたので早く休もうと部屋へ入った。
「真琴君おかえりなさい。お疲れ様でした」
そして扉を開けると妻が…失礼、優樹菜が出迎えてくれた。
(いや、あの台詞は夫婦間のものでしょ。ちょっと妄想しちゃったよ)
「あれ?優樹菜?何でいるの?夕飯食べてそのまま部屋に行ったんじゃ無かった?」
「真琴君がお腹空いて無いかな…て。迷惑だった?」
くそ、そんな上目遣いで言われたら迷惑とか言えないでしょ。てかむしろ積極的に嬉しいよ!そして確かにソファの横の机には幾つかの料理があった。
「ありがとう優樹菜。ちょっとお腹も空いてたから助かるよ」
とりあえずベッドへアルンとクロを寝かせる。そして振り替えると何故か優樹菜の顔が扉で固定されていた。
(何かあったか?…あ、ルーン殿下忘れてた)
とても失礼な事を考えつつ扉の方を見ると案の定ルーン殿下も優樹菜の方を見て固まっていた。
そしてゆっくりと微笑みながら優樹菜が口火を切った。
「こんばんは殿下。こんな時間に何故ここへ?」
「こんばんはユキナ殿。私はマコト殿の案内役で来たのだが。しかし逆に聞くがユキナ殿は何故マコト殿の部屋に?確かもう間もなく就寝時間のはずだが?」
「私は真琴君が何も食べて無いかなと思って料理を準備していたからですよ。ほら、私料理得意ですから」
「あら、そうですか。こんな時間まで大変ですね」
「いえいえ私なんて。それより殿下、案内ありがとうございます。もうここは大丈夫ですからどうぞ気を付けて帰って下さい」
「いやいや。ユキナ殿こそこんな時間まで大変だったであろう。今日はもう休みなさい。後は私がやっておこう」
「いえいえそんな」
「いやいや」
等々…
怖い!怖いよ!何か二人とも目がガチだよ!美女二人が笑顔って凄く絵になるけど目がヤバイよ!ちょっと寒気するレベルだよ!
てかまだ何か言ってるよ…
「えーと…優樹菜料理ありがとう。殿下も案内ありがとうございます。今日はもう遅いので二人とも休んでk」
「「真琴君(殿)は座ってて!」」
「はい。すみません」
とりあえず声をかけると二人から怒られた。どうぞチキンと言ってくれ。二人とも普段がおとなしいから怒ると余計に怖いんだよ。てか何に怒ってるんだよ…
とりあえず椅子に座ると目の前には美味しそうな料理が。恐らく食堂から食材を貰ってきて優樹菜が作ってくれたのだろう。
(うーん…確かにお腹空いてるしな)
優樹菜とルーン殿下はまだ話していたので、とりあえず真琴は食事を始める。決して現実逃避では無いと言っておこう。
(優樹菜と殿下が話してる内容?恐ろしくて聞いて無いよ)
この状況で周りをスルーして食事が出来る真琴もかなり大者だと思う。
食事を始めて少しすると話は終わったのか優樹菜と殿下はソファーに座った。そして目の前の二人は何故か凄く仲が良くなっている。
(…この数分で一体何があったんだ)
二人とも話しているうちに真琴の話題で意気投合した結果なのだがそれは真琴本人は全く知らない事である。
(まぁ仲良くするのは大切だよな。うん)
そして食事も終わり(優樹菜と殿下にはもっと食べろと怒られたが)軽く紅茶のような物を飲みながら三人で話していた。
「それでその時に真琴君がね…」
「ほう…そんな事が」
「ちょっと、優樹菜さん?」
訂正、実質二人で話していた。しかも内容は僕の昔話だ。これは一体何の拷問だ…
このままでは羞恥心で死にそうなので食器を片付けてシャワールームへ避難した。正直風呂へ入りに大浴場へ行きたいが、この時間は閉まっている。
流石は王城。この城には男女それぞれ大浴場が1つづつある。そして個室にも小さいがシャワールームがあるのだ。しかしやはりお風呂と言うのは日本人としてかなり魅力的でゆっくりお湯に浸かりたい真琴だった。
身体を洗いさっぱりして戻ると
(まぁだと思ったよ)
案の定と言うべきか優樹菜と殿下は二人仲良く眠っていた。
(さて、どうするか…このままだと風邪引くかもだし)
風邪を引かなくても流石に座ったままでは腰に響くだろう。
とりあえず真琴はクロとアルンをソファーの隅へ移動させ(これだけ動かしても起きない二人は凄いと思う)優樹菜と殿下をベッドへ寝かせた。
ベッドに二人は狭いが詰めればそれ程でも無かった。そして改めてアルンとクロをソファーへ寝かせる。小柄なので普通に横になれた。
(まぁこれで寝られるだろう。さて…僕どうしよう)
以前もそうだったが、この部屋はあくまで一人部屋である。
(…前と一緒だな)
そして真琴は椅子に座り机に寝そべって眠った。
これでぐっすり朝まで、
(出来る訳無いよね)
元々机に寝そべると腰に響くのだ。そう易々と寝付ける訳がない。
そんなこんなで朝まで浅い睡眠を繰り返した。
あー朝か。
軽い疲労感を覚えつつ真琴は洗顔して動きだす。
(まだ起こすのは早いかな)
日が昇り始めたぐらいなのでまだ早いだろう。実際ほとんどの部屋から人が動く気配はしない。部屋には小さなキッチンもあるのでとりあえずそれで昨日の残り物から朝食を作る。
その後、少し時間が出来たので真琴は前に図書室で借りた魔法に関係する本を読む。文字が読めるのも例の称号のおかげだろう。
(でもやっぱり自力で読めた方が良いよな)
この世界の魔法の概念は大雑把に言うと原子論に似ていた。まぁそれもかなり適当だったが。ならばもっと深く理解すればもっと強力な魔法が出来るのではないか。そう考えた真琴はこの時間を利用して更に本を読んでいく。
(精霊の力が集まって魔法が発動ね…ならこうしたら…いや、こう考えるべきか…?)
「…ん~」
「ふぁ~…あら?」
しばらくすると優樹菜と殿下が起きた。そして見事にベッドの上で固まる二人。
「おはよう二人とも。良く眠れた?言っておくけど僕は何もしてないからね」
前にもこんな事あったなー、などと思いながらとりあえず両手をホールドアップして無実を訴える。
そんな僕を見て状況を理解したのか優樹菜は顔を真っ赤にしてうつむく。
「お、おはよう真琴君。その…すみません」
そして小さい声で謝った。
そんな優樹菜を見て殿下もようやく状況を理解し、優樹菜と同じように謝った。
「ああ、いいからいいから。とりあえず顔洗ったら?そろそろアルン達も起きるし朝食でもどう?僕が作ったので良かったらここで食べてく?」
以前までなら食堂へ行くのだが、今はアルンとクロがいるので部屋でとる事にした。
(王様には見せたけど流石にそこまで見せびらかすのもな)
「良い匂いがすると思ったらそういう事ね。私は頂くわ」
もう切り替えたのか普段のルーン殿下に戻っている。そして真琴の料理を見た後に洗面所へと行った。
「あの…その、ごめんね。真琴君ちゃんと寝れなかったでしょ?それなのに朝食まで」
「大丈夫。しっかり寝たよ。それに食事も元々アルン達がいるから作る予定だったよ。材料も昨日のやつだしね。殿下は食べるみたいだけど優樹菜はどうする?味は保証出来ないけどね」
「そ、そんな事ないよ。真琴君の料理はすっごく美味しいよ。私も食べるね」
「はは、ありがとう。お世辞でもそう言ってくれると嬉しいよ。とりあえず顔洗ってきたら?」
(うーん…不味かったらどうしよう。作ったの僕だしな…)
とりあえず二人の準備が出来るまでにアルンとクロを起こす。
「アルン、クロ朝だぞ。起きろ」
「うーん…まだ眠い」
「もうちょっとだけ…あと5分…」
ダメだ…最早そこら辺の子供と変わらない。喜んで良いのかイマイチ微妙だ。
(いや待てよ。ならこの方法で)
「ああ、そうか。なら優樹菜と殿下と三人でご飯食べるか」
「ご飯!」
「…おはよう」
食事の力は偉大でした。二人ともしっかり起床しました。
「おはようアルン、クロ。ご飯の前に顔洗おうか」
丁度優樹菜達が洗面所から出てきたので入れ替わりでアルン達と洗面所へ向かう。優樹菜達も着替えるみたいなので丁度良いだろう。
…何故優樹菜と殿下が着替えを持っているかは、聞かないでおこう。
そして皆準備を終えて改めて座る。臨時に台を置きその上に料理を並べ、その周りを各々ソファーやベッドに座って囲む。
「これ本当にマコト殿が作ったのか?」
殿下は料理を見て改めて問いかけた。そんなに酷かったか?見た目はまぁマシな方だと思うけど。
「えーと、そうですが何かありましたか?見た目はアレかもしれませんが材料は昨日のやつなので大丈夫だと思いますよ?」
「い、いやそうではなく…何でもない」
「?
とりあえず食べましょうか。いただきます」
「「「「いただきます」」」」
優樹菜と僕の記憶を見たアルン、クロはしっかり手を合わせ殿下もそれを見て真似していた。
「えーと…味はどうでしょうか?」
ある意味一番気になっていた事を聞いてみる。
「やっぱり真琴君の料理は一番だね」
「お、美味しい…!」
「マコト、お代わり」
「あ、私も」
上から優樹菜、殿下、アルン、クロだ。
精霊二人はまぁ良いか。優樹菜と殿下にも好評なようで一安心。
そんな風に朝は過ぎて行った。
「さて、今日も頑張ろう」
ちょっとゆっくりした回を書いてみました




