第21話 休息
今回はちょっと別の視点から書いてみようと思います
〇〇優樹菜side〇〇
精霊の大樹林から帰ってきた翌日
司祭さんから今日は休みにするから自由に過ごして精霊との親睦を深めるように言われた。
周りの兵士さんに聞いた話だと精霊と契約出来ても、そのままだと身体強化とかの一般的な魔法しか使えないらしい。
何か一つ自分にとってのテーマ(命題)を決めてそれを精霊が受け入れた時に本当の契約が成立するらしい。
そしてテーマを決める事で精霊はそのテーマに沿った力を伸ばす。つまり精霊と一緒にそのテーマに向かって成長してゆく。勿論精霊が動物ならその動物の特性に合ったテーマの方が伸びやすい。
(まぁテーマを決めるためにもまずは自分の精霊がどんな性格なのかを確認しなくちゃね)
朝食の後に真琴君を見かけたから今日は一緒に過ごさない?と誘ってみたけど
「あーごめんね優樹菜。ちょっと色々調べ物したいから図書室に行くよ。誘ってくれてありがとう」
と言われた。
(ああ…残念…せっかく1日中真琴君と一緒に過ごせると思ったのに…)
優樹菜は軽く落ち込んだ
…それを見た男子共が「優樹菜さんを悲しませたな!」と真琴を勝手に敵対視してならば自分が!と優樹菜を誘おうと声をかけたが優樹菜は全く気付いてなかった。
「…はぁ、ねぇ優樹菜。一緒にやろう?」
「あ、優衣ちゃん。そうだね、よろしく」
それを見かねた優衣は優樹菜を誘ってとりあえず食堂を後にした。
それによって男子の何人かが悔しそうにしていたが幸い優樹菜は最後まで気付かなかった。
ところ変わって日当たりの良い中庭。
そこには桜ヶ丘の生徒を中心に何人かの女子生徒が集まっていた。
「はぁ…」真琴君今どうしてるかな…
溜め息をつく優樹菜を見た風花はニヤリと笑い優樹菜の耳元で囁いた。
「やはり彼氏が心配ですかな?優樹菜さん?」
「な、か、彼氏!?」
「ちょっと優樹菜動揺しすぎ。精霊もちょっと怯えてる」
「あ、ごめん…」
私達は今皆の精霊を出して色々と話していた。皆精霊が小動物だったので普通にペットと戯れている感じで皆しゃべったり精霊と遊んだりしている。そこに私が突然大声を出したから皆が驚いてしまった。
(…だって風花ちゃんが変な事言うから)
「でも真琴君には悪い事しちゃったな」
と、唐突に風花ちゃんが話し出した。
「え?何で?」
「いや、だって真琴君が嫌がらせ受けてるの止められ無かったし…」
「あーそれは私も思う」
「でも周りがね…」
「てか、男子って本当にしょうも無い事しかしなよね。一部を除いてだけど」
皆話に入って来た。
ちなみに一部には悠一や桜ヶ丘の真琴と一緒に遊んでいた男子達などの比較的温厚なメンバーが挙げられる。
「でもあれは仕方ないよ。あそこで孤立しちゃうと後が怖いし…」
「うん…でもやっぱりね」
「でも工藤君って本当にすごいよね。代表もやって皆が混乱してる時も冷静に対処してくれたし、魔力無しとか言われても平然としてるじゃん。今朝だって普通に挨拶してくれたしさ?私達嫌がられてもおかしくないのに。凄く尊敬するよ」
「確かに」「良太達にあんな事されて普通に過ごしてるのは凄いよね」
皆も初日が終わって落ち着くとあの時かなりヤバイ状況だった事に気付いていた。だからこそ改めて真琴君のすごさを思い知った。
「でも、本当に大丈夫かな?この前だって倒れてたし…」
その言葉に皆が黙る。そして風花が今まで横で隣で聞いていた優樹菜に遠慮がちに聞く
「あの…優樹菜?悠一君が真琴君担いで行ってからどうなったの?」
「…」
「あー…軽い貧血だったから大丈夫だよ」
風花の質問に優樹菜の脳裏に一瞬真琴の苦しんだ顔が過って、うつむいて黙ってしまう。そんな優樹菜を見かねて優衣が代わりに答える。
(結局あの後お母さんについて聞けなかったな…)
「まぁ私達が責任押し付け過ぎたのが問題なんだろうね…」
「私達も何かで返せたら良いのにね」
(私じゃまだ力になれないのかな…)
皆それぞれ真琴の事や自分のこれからについて考えながらその日は終わった。
しかし次の日に事件が起きた。
その日は朝に司祭さんが今日から本格的に授業を始めると発表した。しかも最初は精霊と一緒に戦闘訓練だそうだ。
皆のテンションが上がる中で真琴君だけが微妙な顔をしていたのが気になったから戦闘訓練の場所に集合してから少し話したけど結局わからなかった。
組分けが発表されて私は優衣ちゃんと悠一君と同じ組だったけど、真琴君だけが違ったようだ。どうなったか気になったけど人が多くて見失ってしまった。
(真琴君と離れちゃったけど大丈夫かな?)
「優樹菜?どうしたの?」
「ううん何でもない。ごめんね、始めようか」
とりあえず目の前に集中する。
訓練の目的は主に精霊と協力するという事らしい。
具体的には
・一対一で戦う
・常に身体強化を使う
・精霊に語りかけて協力する
だそうだ。
とりあえず私は優衣ちゃんと対峙しながら心の中に語りかける
(お願い。力を貸して)
すると不思議と身体が軽くなり、力が出てきた気がした。
『まかせなさい!行くわよ!』
頭の中に女性の声が聞こえる。声の主は優樹菜の精霊である黒猫だ。
そしてお互いに準備が出来たところで訓練を始める。
訓練と言ってもまだほとんどの生徒が精霊と話す事しか出来ないので(身体強化は精霊と仲が良いほど強い)実力に個人差が出る。
なのでとりあえず実力の似た者同士で戦いダメな所を直すという感じだ。
そんな訳で優樹菜対優衣の試合が始まった。
とは言っても優樹菜は余り運動が得意では無いので身体強化しても身体が振り回されてスキだらけになりそこに優衣が軽いパンチ(大理石の床にひびが入る程度)を入れて試合が終了した。
「うう…優衣ちゃん強い」
『て言うかご主人が弱い。振り回され過ぎだよ。もっとゆっくりで良いんだよ?』
「うーん…ゆっくりね」
そして試合後は精霊と反省会。
『そういえばご主人。テーマ決めた?』
「考えてはいるんだけどね…」
『ご主人が心から欲する事は何?』
「うーん…」
テーマは何でも良い訳では無く、契約者が本当に欲しいと感じる事では無いとダメだそうだ。
『まぁ最近は人が来なくて退屈してたからほとんどの精霊は特に何も考え無いでご主人が言ったテーマにしてるらしいけどねー』
「そんなのダメだよ。もっと真面目に考え無いと」
『そうそう、それだよ。やっぱり何事もしっかり考えて決めなくちゃ。だから私はご主人を選んだんだよ』
「でも本当にテーマどうしよう…?」
しばらくすると兵士の人が昼食を知らせてくれたから優衣ちゃん達と一緒に食堂に向かった。
しゃべりながら歩いていると食堂から悠一君が慌てて出てきた。
後から何人かの生徒も出てくる。工業や新中央の副代表の子もいた。
「悠一?どうかしたの?」
とりあえず隣りにいた優衣ちゃんが事情を聞こうとする。
「真琴がいない!良太達がさっきニヤニヤ笑いながら真琴を倒したとか騒いでたからもしかするとヤバイかも!」
「な…なんですって!?て、ちょっと優樹菜落ち着いて!」
気がつくと私は走り出そうとしていたけど優衣ちゃんに腕を掴まれて止められる。
「離して!真琴君探すから!」
「だから優樹菜落ち着いてって。心配なのは皆一緒だから!闇雲に探すより手分けしましょう」
やっと少し冷静になって優衣ちゃんの話を聞く。
まだこの世界に来てそんなに日が経って無いので行動範囲はおのずと絞れる。
「じゃあ俺達一回真琴の部屋に行ってみる」
そう言って走って行ったのはいつも真琴君と遊んでた男子生徒達だ。
(何度か話した事があったから覚えてた)
「なら私達は図書室の方行ってみるね」
と言ってくれたのは風花ちゃん達だった。
「みんな…ありがとう」
「なら私達は訓練してた所ね。…あんまりいてほしく無いけど」
「とりあえず行くぞ」
(どうか最悪な予測だけは外れますように)
そう心の中で祈りながら皆駆け出した。
読んで下さってありがとうございます。
いかがでしたか?
もう少し優樹菜視点が続きます。
意見等があったら教えて下さい。




