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第20話 心の中(下)


この場所はとても悲しい



クロは寂しそうにそう告げた。


(悲しいって…?何で?僕は全然…)


『そう、マコトは気付いて無いよね。マコトは何も分かって無い。

自分がどれだけ不安定なのか。今の君がどれだけ危ういのか』


(…何を言ってるのか分からない)


『だろうね。だって自分に全く向き合って無いのだから』


クロはまっすぐに僕を見ながら話す


『さっきも言ったけど、魔力の中ってその人の性格がとっても出やすいんだ。まぁほとんどの人は自分の黒いって無いんだけど、マコトはある。簡単に言うと心の部屋が2つある感じだよ。魔力が多い人だとこうなるね。

でもそういう人ほど、白い部分は綺麗で黒い部分はとても荒れているんだよ。でもマコトの中はまるで精霊の森みたいにポカポカしてる。とっても気持ち良いんだ。この黒い部分でさえね』


『でもこの黒い部分の奥に行くほど暗く悲しくなって行くんだよ。マコトの黒い魔力から出来た私でさえ耐えられないぐらいね』


(クロが僕の黒い部分の全てじゃ無いのか?)


『そのはずだったんだ。普通は。そうじゃないとおかしいんだ。でもマコトの黒い部分はとても深い。私はまだ入口に立っているだけだよ。そして奥に進もうとするほど、どんどん悲しい記憶が流れ込んで来る。

もう自分が壊れてしまいそうなぐらいだ』


クロはこうして真琴と接触する前に真琴の黒い部分の最奥へ行こうとした。だが、進むほど真琴の過去の記憶や思いが流れ込んで来た。

まるで押し戻そうとするかのように。全てを拒絶するかのように。

その時にクロは理解した。


(これはマコトの本能の悲鳴だ

心の底ではこんなに哭いているけどそれさえも気付かないフリをしているのか。マコトは)


だからこそ真琴の魔力の中はとても居心地が良いんだ。

それは自分の本心から目を背けているから。

だから黒い部分の奥はこんなに悲しいんだ。

本人が自覚しないまま傷ついているから。


(もうマコトの心はもうボロボロだ)


それを理解したからこそ、クロはこの悲しみの根本を見ようとした。だが、奥へ行くほどクロを押し戻そうと魔力が吹き荒れ、記憶は悲しく、辛くなる。

(くそ…私では限界か)

それでも無理矢理進む。

どうしてもマコトの心の悲鳴の根本を知りたかったから。やがて意識が薄れいよいよ限界になり吹き飛ばされる。その瞬間確かにクロは見た。

掠れゆく意識の中で最奥にうずくまる子供の姿を。




そこは真っ暗な散らかった部屋だった。壊れたストーブ、散らかった小物、倒れた大人の人影…

ぐちゃぐちゃに散らかった部屋の真ん中で子供が泣いていた。

身体中傷だらけで泣いていた。一人ぼっちで膝をかかえて。


(君は…まさか…)


そこまでで限界だった。気付くとクロは元の入口で倒れていた。

相変わらず暖かく居心地が良い。

そしてどこか、悲しい場所に。



これがクロが真琴の黒い部分で見た全てだ。だがこの事は真琴には話さない。何となくこの悲しみの意味が分かってしまったから。自分ではどうにも出来ないと感じたから。

だからクロは自分なりに真琴に語る。



『こんな不安定な状態なら私に身体を譲れ。

そうしたらすぐに楽になる』


(…もう一度聞くけどクロは僕の身体で何がしたいんだ?)


『さぁ?別にこの世界に興味は無い。自由気ままに過ごすだけだ。君はただその為の身体を提供してくれたらいい』


そうすればもう真琴は悲しまずにすむから


(そう…か。クロは優しいな)


『…は?マコトは何を言っているんだ?

私が?優しい?頭大丈夫か?』


(だって僕を心配してくれたんだろ?)


『な、ば、馬鹿を言うな!

私はただマコトの身体が欲しいだけだ!ただそれだけだ』


予想外の反応に思わず赤面する。


(やっぱり優しいな。本当に欲しいならもっと強行する方法だってあるんじゃないか?)


『それは…あるにはあるが』


(それを使わない時点で僕の事を心配してくれたんだろ?)


『私は…ただ…』


(ありがとう。でも大丈夫だよ)


もう完全に真琴のペースになった。クロはもう予定も滅茶苦茶に本心をぶつける。


『君は…マコトはまたそうやって他人を優先する!もっと自分に向き合ってくれ!このままだと本当に壊れるぞ!』


(そうやって心配して貰えるだけで凄く嬉しいよ。でも大丈夫、まぁなんとかなるさ)


『なんとかって…』


(クロに身体を渡したら多分クロは僕の今までを全部知るだろ?それはちょっと嫌だな…)


こんな思い僕だけで充分だ。

確かに真琴の身体を支配する事でクロは真琴の過去を全て知る事になる。すなわち真琴の今までの経験を全てクロもすると言う事だ。


真琴が本心を告げるとクロは少し顔を伏せてから何かを決意したように顔を上げ、こう言った。


『なら…ならせめてお前と契約させてくれ!私は精霊だ。ならマコトとも出来るはずだ!』


(…は?

えーと…もしもし?クロさん?)


真琴が混乱するのも無理は無い。最初は身体を寄越せと言ってきた相手がいきなり契約しろと言ってきた。

クロの真意が分からず、真琴の頭を疑問符が駆け回る。


『私と契約したら、マコトは私の力を自由に使えるだろ。少なくとも今よりはずっと楽になるはずだ。そうだよ。それがいい』


(え、とクロ?

気持ちは嬉しいけど僕もうアルンいるし…)


『既に身体の中にドラゴンと魔族がいるのに今更じゃないか』


苦し紛れの言い訳もあっさり返される。

確かに今はどっちも眠っているが元々この世界に来た時から既にドラゴンと魔族を飼っている?のだ。

ただ関係が少し変わっただけで実質今までと変わらない。


『それにアルンにはもう許可取ってるよ』


(…は?)


『マコトーー!』


何かとんでもない爆弾発言と共に目の前に桃髪の少女が現れて自分に向かって飛び込んで来た


(あ、アルン!?何で?)


『会いたかったよー、身体大丈夫?痛いところ無い?』


こっちの疑問などお構い無しに真琴の身体をペタペタ触る。


『何でって…ここ君の魔力の中だろ?今までは私と一対一で話したかったから少し待っててもらったんだ』


(…あぁそうだった)


クロが呆れてそう教えた。そういえばそうでした。

確かにちょっと前クロがアルンに会ったとか言ってたな。


『さて、アルン。話が進まないからちょっとこっち来て』


『あ、クロ。話?…あ!そうだった』


クロが声をかけるとクロとアルンは二人で少し離れた所でなにやら話している。

(てか、仲良いな。お前ら)

ちょっと羨ましい…

少し落ち着いて来たので真琴も今までの話しの内容を整理する。


そして待つこと数分。

二人は笑顔で戻ってきた。


(話は終わったのか?)


『うん!マコト、私達と契約して』


え?何、僕魔法少女になるの?


(…ごめんアルン。ちょっと何言ってるのか分からない。

僕とアルンって契約して無かった?)


『あれは口約束のようなものだからね。大体契約してたらマコトの中で眠る必要無いでしょ?』


(え?そうなの?)


クロが語った今始めて知る事に驚く。アルンは気まずそうに目線を反らす。


『だって、マコトの中気持ち良いし…』


(はぁ…えーと、それで僕と契約?してどうするの?)


『私達と契約すると、外で自由に私達の力が使える。それに私達も外に出られるようになる。まぁ基本は他の精霊と同じだな』


(へー。でも僕魔力無いから力使えないな)


『それは…その、原因が私達だからな。

私達は力は充分に貰ったから契約して外に出たらもう貰う必要無いからマコトは本来の魔力を取り戻すよ』


(そういえば僕が魔力無いのってアルン達が取ってたからだったっけ?)


今更ながらその事を思い出す。


『で、どう?マコト、アルン達と契約してくれる?』


(僕はむしろ嬉しいけどアルンとクロはそれで良いの?何か不都合があったりしない?)


『ふふ…本当にマコトは優しいな。心配しなくても私もアルンも外に出られるというだけで特にデメリットは無いよ。むしろマコトをすぐに助けられる』


『もうマコトは一人じゃ無いよ。これからはアルンがしっかり守るよ』


と、二人は頼もしい事を言ってくれる。

(僕を"守る"…か)

不思議な事に一人はさっきまで僕の身体を取ろうとしてた奴だ。てか、女の子二人に守って貰うって…僕ってそんなに頼りないかな。まぁでも、目の前にいる二人の顔を見てるとどうでも良いかと思ってしまう。

そんな自分に苦笑しつつ


(ありがとうアルン、クロ。むしろこんな僕だけど契約してくれるかな?)


真琴がそう尋ねると、二人はとても嬉しそうに笑って


『『もちろん!』』


と、応えてくれた。


『でもとりあえずマコトは外をどうにかしなくちゃね。私達は声をかけてくれたらいつでも外に出るわ』


外ではどうなったのかな?


(分かったよ。じゃあちょっと行ってくるわ)


『『いってらしゃっい』』


そんな二人の声と共に真琴はまた意識を失った…


という感じで新キャラのクロが登場です。


彼女は普段は少し厳しい雰囲気だけど心の中ではとてもマコトや仲間を心配している。

そんな仲間思いな性格です。


また感想や意見などがあれば教えて下さい!

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