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第19話 心の中(上)


真琴達が精霊の大樹林から帰って来て二日経った。


昨日は疲れただろうと1日休みになり各自精霊と親睦を深めるようにと言われた。

(まぁ僕には関係無いか)

優樹菜達には一緒にと声をかけて貰ったがせっかくの休みなので真琴は図書館で過ごした。…いや、優樹菜や優衣といると周りの男子の視線がえげつない事えげつない事。


その日は特に何事もなく1日が終わった。


そんなこんなで異世界へ来てから5日ほどが経った。いよいよ今日から本格的に授業が始まるようだ。今日の授業は精霊を使った身体強化を用いた戦闘術だそうだ。

(…あ、ヤバイ。すごく嫌な予感がする)

少し嫌な事を予感し、当たりませんようにと願いながら真琴は訓練所へ向かった。


皆が集まるとどうやら兵士長だったらしいガルムが前で話し出した。


「諸君、昨日は精霊と仲良く出来たか。まぁ勇者達の事だから心配いらんだろう。皆精霊との親和性は抜群だったからな。

…いや失礼、皆では無かったか」


本当この人最後言わないと死ぬ病気でもかかってるのかな。

てかそんな事言ってると


「うわぁ、まだ精霊と契約出来てないやつとかいるんだ~」

「えぇーだっせぇ」


ほら良太達(アホ)が騒ぐ。

(ハイハイ私ですよ悪かったですね)

軽くやさぐれてる真琴の横では優樹菜達が密かに殺気を募らせていたがガルムが組分けをして訓練を始めたのでとりあえず優樹菜達はバラバラに別れた。


「さて、僕の組は…」


真琴が探そうとすると数人に囲まれた。そしてその中から良太が出てきた。


「おい無能!無能なお前のためにこの俺様が直々に訓練してやるぞ!感謝しろ」

「流石良太さんだ」

「おい無能泣いて感謝しろよ」


うわぁ…どうしよう。すごくめんどくさい。何その脅し文句、小学生か?てかノリが古臭い…お前らもうちょい何かあっただろ…何となくこの流れは予想はしていたがまさか当たってしまうとは。てか何か良太の取り巻き増えてない?20人くらいいるよ?お前そんな人望あった?


そう真琴がげんなりしているうちに良太がガルムに許可を取る。

(ガルムも事情を察したのかニヤニヤ笑いながら許可を出した)

真琴達は特別だと兵士の人に少し離れた人目につかない物陰へ連れて行かれた。

(これが異世界版の体育館裏)


優樹菜達は真琴の反対側にいたため人の壁が出来てしまい、この事に気付かなかった。

(真琴君と離れちゃったけど大丈夫かな?)


そんな優樹菜の心配を嘲笑うかのように真琴は物陰で訓練という名目の集団リンチを受けていた。始めのうちは反撃しようとしたが相手は身体強化した上で精霊を使って魔法で光の玉を打ってくるので気が散る。しかも10人が一斉に来るので次第に急所を防ぐので手一杯になっていった。一応名目上は回避技術と耐久力の向上だそうだ。


(くそ!相手が速すぎる。それに光の玉が邪魔だ)


真琴は既にボロボロでやがて防御も追い付かなくなり一方的にやられるだけになってしまった。


「はは!いい気味だ」「代表だ何だと調子に乗るから」「身の程をわきまえろ」「遠藤さんと仲良くしやがって」「でしゃばるな」


周りもヒートアップし真琴に罵詈雑言を浴びせる。そろそろ本格的にヤバイなと感じた時に昼食の時間になったのでとりあえず満足した良太達は食堂へ行った。


物陰にはボロボロになりそこら中ケガをした真琴が壁に持たれかかっていた。

(ああ…くそ。僕はまだこんなに弱いのか…)

少しふらつき真琴はその場に倒れた。

(ヤバイな…どうしようか)

このままでは普通に危ない。でも指先一つ動かせない。さてどうしようか…


そんな時


「いた!悠一、優樹菜!真琴いた!」

「おい皆!真琴いたって…ておい真琴!」

「ま、真琴君!大丈夫!?」


幼なじみ達の声が聞こえた。どうやら食堂に現れない僕を探してくれていたようだ。そして三人の声が聞こえて少し安心した僕はそのまま気を失った。




〇〇〇〇


…また真っ暗だな

真琴は気が付くとまた真っ暗な空間にいた。

(一回目はアルンと出会って、二回目は…

さて、今回は一体なにが)

すると目の前に光の玉が現れた。


『やあ、工藤真琴。私の名前はクロ。

初めましてかな?君にとっては』


光の玉…クロはそう話し(?)ながら徐々に人の形に変化した。そして最後に一層強く光るとそこには褐色の肌の少女がいた。

目が少し大きめで口からは小さな牙が見える。そして背中には小さな翼と尻尾のような物が生えていた。その姿はまるで


(すごく悪魔みたい)

『みたいとは失礼だな。私は立派な悪魔だよ』

(悪魔かい!…てか心の中読めるのか?)

『勿論だ。なにせここは君の心の中だからね』


そう言ってクロは胸を張った。…残念ながら体型はスレンダーだが。

でも彼女の声をどこかで…


(あれ?前に倒れた時に声をかけたのクロか?)


『ほう、もうそこに気付いたか。君は以外と冷静だね。答えはイエスだ』


(…で、今回は何?)


『愚問だな。君の身体を貰いに来ただけだよ』


("だけ"って…)


『ああ、"だけ"だ。

簡単な事じゃ無いか。私に渡せばもうあんな酷い思いをせずに済む。それだけで君は充分じゃ無いのか?』


(…あの夢はやっぱりクロの仕業か)


『勿論私だ。適当に君の記憶から拝借したよ。どうだった?辛かっただろ?私に渡せば二度とあんな目には合わないと約束するよ』


(お前はそもそも僕の身体で何をする気だ)


『さぁ?』


(…は?)


『そもそも私は悪魔であり魔族だ。だけど魔王に忠誠心なんて無い。世界征服なんてカケラも興味ない。私は一言で言うと君の中の黒い魔力の集合体。君の魔力の中にいるあのドラゴンと似たような存在だよ』


(ドラゴン…アルンの事か)


『そうそう。君はこの世界に来る時に魔力を持ったよね。その時に魔力の一部が君の黒い部分に触れて黒い魔力になった。それが集まって私が出来たって訳』


(僕の…黒い部分)


『不思議に思わなかった?何で自分以外が魔力があるのか?って』


(それは…確かアルンが)


『ドラゴンの幼体一体で尽きる程あなたの魔力は少なく無いわ。あれはマコトの中で私とドラゴンが魔力を取り合っていたから。まぁマコトの異常な魔力量だから出来た事だけどね。流石に魔力切れで倒れてたけど』


(あれ君たちのせいだったのか…)


今初めて知る事実に驚きを隠せない


『そして君の意識が途切れる事で私が干渉しやすくなった。だから君にこの黒い部分の一部を見せたの』


(…あれが)


『ええ、そうよ。他にも色々あるけど、あの出来事も原因の一つみたいね。どう?どんな気分?』


(…君は僕の黒い部分じゃ無いのか?そうだったら分かるだろ?)


『ああ、勘違いしないでほしいけど私はあくまで私よ。

確かにマコトの黒い魔力が集まって出来たけど、だからってマコトの黒い部分と完璧に繋がってる訳じゃ無い。簡単に言うならマコトのトラウマを知ってる他人ね』


(…じゃあなんで君は他人の僕の身体を取ろうとするんだ?君には関係無いだろ)


そう真琴が言うとクロは少し悲しそうに真琴を見つめて言った。


『確かに私は関係ないよ。でもこのままだとマコトは潰れるよ』


(は、何を…?)


『マコトは自分の事について何も分かって無い』


(…?)


『魔力とはその人の心を表す。あのドラゴン…アルンにも会ったよ。彼女がマコトの魔力に夢中になるのも分かるよ。ここは凄く心地が良い。マコトの黒い部分であるはずのここでさえ』


クロは気持ちよさそうに笑った。

(てかアルンと会ったんだ。まぁ同じ魔力の中らしいしな)

だがクロは笑った顔から悲しい顔になってこう言った





『でも不思議だね。この黒い部分はとても悲しいよ。

ずっと…泣いている』


今回はキリが悪かったので分けました。

(下)は明日の正午に投稿する予定です。

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