第15話 森の中へ
…一体奴は何なんだ?
そう心の中で兵士長ガルムは疑問を浮かべた。
最初に司祭様から兵士長として勇者達を森へ連れて行き精霊と契約させるように言われた時はガキのお守りかと嫌気が差したが司祭様が最後に
「勇者の中でマコトと言う魔力無しがいる。そいつを可愛いがってやれ」
と、付け加えて去って行った。
魔力はそこらの平民でもあるのに勇者が無しとは…しかも司祭様にそこまで言われるとはこいつかなり嫌われてるな。
そう考えてまぁ適当に苛めてやろうと少し楽しみにしつつ勇者達の所へ向かった。
自分で言うのも何だが私は何も悪くない。むしろ悪いのは今この状況を作り上げた全ての人だと思う。常々思う事はこの国は既にかなり腐っているという事だ。教会であったり国であったり、とにかく人々は他より楽しようと、より多くの利益を得ようと動く。その結果賄賂が横行し、不正は金でもみ消せる腐った社会が完成した。しかしこんな社会だからこそ適当に上司の機嫌取りをしてたら成り上がれる。実際自分は平民から兵士長まで上がってるのだから。今回だってこんな社会の歩き方を知らないアホに指導するだけだ。
挨拶の段階で何となく勇者達の状況を把握した。どうやら勇者達の間でもマコトの事を良く思って無い人が多いようだ。
なので一部の勇者と一緒にマコトをからかったが、本人は全く気にせず飄々としていた。その余裕が気に入らなかったが所詮は魔力無し。どうせ森へは付いてこれまい。そう考えてとにかく出発した。
だが実際着いてみてどうだろう。
確かにマコトはへばってはいるが遅れては無いのだ。魔力は感じ無いから魔力無しと言うのは本当だろう。なのに何故付いて来れるんだ?普通に走ったら3時間はかかる距離を2時間ほどで走ったのに。
(いくら何でも身体能力だけで身体強化した奴に追いつける訳が無い…ならあいつは一体?)
答えの出ない疑問を浮かべながらも一行は森の入り口へ向かった。
〇〇真琴side〇〇
はぁ…しんどい…
このペースが普通かよ…流石異世界…
「おい、真琴大丈夫か?
水飲めるか?」
そんな事を考えていると悠一が水をくれた。後ろでは優樹菜と優衣も心配そうにこちらを見ている。
「うん、ありがとう。まぁ大丈夫だよ。一応体力はあるしさ」
「え~?本当に?ひょろっひょろのくせに?」
とりあえず悠一に返すとからかって来た。そんな顔にパンチを入れ(涼しい顔で避けられた)ながらも皆と森の入り口へ向かった。
入り口には二人の犬のような耳と尻尾が生えた男がいた。兵士さん曰く彼らは獣人と言って精霊と人族の中間種族のような存在らしい。獣人の人は兵士を睨んでいたが、ガルム達は得意気に通行許可を求めていた。
(うわっヤバイ、テンプレな事情がありそう)
凄く知りたい。そう考えつつ先頭に従って皆森へ入る。気のせいか真琴達が入ると森がざわついた。
「これは…喜んでる?」
「なんだろ?不思議な感じ」
何か良く分からないが森が喜んでいると感じた。この感じはほとんど直感のような説明し難い何かだ。
ガルムはそれを感じ
「流石勇者の皆さんだ。森の精霊達が歓迎しておりますな」
と言うと、何故か一部の生徒が得意気になっていた。だがその背後で獣人の人達は何かに気付いたかのようにこちらを驚いたように見てから森の奥へ走って行った。
(てか今僕を見た?いや気のせいか?)
「なあ、真琴…」
「うん。見られてるね」
「て言うより観察されてる?」
「でも、そこまで悪い気はしないよ」
上から悠一、真琴、優衣、優樹菜の順に気付いた事を話す。
森へ入ってから幾つも感じる視線。目視は出来ないが確かに何かいる。
(姿が見えないっていうのはちょっと怖いな)
それからガルムはこの森で何でもいいから精霊と契約するように言った。
そもそも精霊とは動物などの形をした謎の生命体で詳しく事はあまり分かって無い。分かってるのは、彼らは体のほとんどが魔力で出来ており、大体地球にいるような動物や人の姿と同じになる。一般的に小動物の形をした契約しやすい下位から契約の難しい大型動物の姿をした上位の精霊達と分類される。
例外に九尾やドラゴンなどの伝説の生物の様な形の精霊は最上位になるそうで、彼らと契約出来た例は片手で足りる程に少ない。
そして、精霊は人間の脳に直接語りかける事が出来るらしい。
「契約の仕方はいかに仲良くなれるかです。精霊自身は相手の魔力を見ているからとにかく色々な精霊と交流して下さい。出来るかどうかは精霊次第です。無事契約出来るとその後は自分の中の魔力に入ったり、自分と一緒に行動したりとずっと一緒にいる事が出来ます」
この契約がベストだが、時間がかかる為今日行うのはほとんど無理だろうとガルムは考えた。なので生徒全員に特殊な首輪を渡す。これは精霊に付けると一時的に言う事を聞かせる事が出来る。なので一度精霊を持ち帰ってゆっくりと交流を深めるのがベストだろう。実際今まではこうしてきた。
しかしストレートに言うと引かれるので「仲良くなれる首輪」など適当な事を言っておく。
その後兵士はその首輪を全員に配った。
「期限は日没まで。とりあえず解散だ。何かあったら聞いてくれ」
そうガルムは締めくくった。面倒臭くなり最後の方口調が崩れたがまぁいいだろう。
それから生徒達はワクワクしながら精霊を探しに森の各所へ散って行った。
「私たちはどうする?」
「うーん、自由行動みたいだしね。悠一達はどうするの?」
「そうだな。とりあえずそこら辺を回ってみて情報収集かな。まだ何も分からんし」
「私もそのつもりかな。とりあえず皆別行動で良いかしら?」
「そうだな。また折を見て合流すれば良いか。真琴と優樹菜はどうする?」
とりあえず悠一達は行動が決まったようだ。
「そうだね、まぁ僕もそこら辺を適当に歩くよ。優樹菜はどうする?」
「私もそうしようかな。ところで真琴君体調は大丈夫なの?」
「それが何故かこの森に入ってからかなり楽になってね。よく分からないけど、まぁしんどいままよりはマシだな」
何故かこの森の中では体が軽い。今までの体調不良が嘘のようだ。
「とりあえず皆方針が決まったし解散で。2,3時間ぐらいしたらここ集合な」
「オッケー。じゃあ優樹菜、途中まで一緒に行こうか」
「そうだね。じゃあ真琴君、悠一君また後で」
「うん。また後で」
そしてとりあえず皆森へ入って行った。
余談だが真琴達が話している後ろではずっと男子達が優樹菜や優衣を誘おうと構えていた。
(うーん…まぁ二人一緒だし女子も何人かいたから多分大丈夫かな。にしても流石聖女様だ。もう他の学校の生徒まで…まぁ二人とも美人だからな)
などと考えながら真琴も森へ入って行く。ちなみに男子達の隣りで固まっていた女子は自分を誘おうとしていた事には気付かない真琴であった。
(…でも何で視線が追いかけて来るんだろ?何かやったか?)
最初に優樹菜達と視線を感じてからわざと他の人がいない方向へ向かったがそのまま視線が付いて来た。
(まぁ害意は無さそうだし用があれば出て来るだろう…お!)
だいぶ奥へ進んだ所で少し視界が開けた。そこは小さな泉だった。
そこだけ木々が避けたかのように日があたり、真ん中には小さな泉があるとても静かな場所だった。
昨日から色々あってまともに寝ていないのでかなり眠気はある。
(うーん…まぁ僕がやっても精霊と契約出来ないらしいからちょっとぐらいいいよね?)
そう考えて真琴は適当な所で座ると後ろの木にもたれてそのまま眠る事にした。
(…ん?)
どのくらいたっただろう。ふと、何かの温もりを感じて目を覚ました。まず目に入るのは真琴の周りにいる沢山の小動物達。
そして周りに浮かぶ光りの玉(何か声が聞こえる)
そして真琴にもたれて眠っている一人の女性(とても綺麗だ)
(…………………え?誰?)
次回いよいよドラゴン出せるかと…
長くてスミマセン…




