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第90話 プロト③

お待たせしました…m(_ _)m


「真琴、お前…」

「分かってる。分かってるから何も言うな悠一」

「似合ってるぞ!」

「だから言うなって…!」


そう真琴は叫んだ…ティターニャの腕の中で。

(どうしてこうなった…)

悠一の一言に遂に耐えきれず吹き出す大人達を横目に真琴は軽く悟った様子で上を見上げる。


それは遡る事数十分前…



「本当に旦那様が目覚めて安心しました」

「心配かけてごめんね、ティターニャ。優樹菜達も色々ありがとう」

「ううん、それよりも体調は大丈夫?おかしい所とかない?」

「うん、大丈夫。むしろちょっと良くなってるぐらいだよ」


ペインが去った後、身体を起こした真琴の右側にルナ、ティターニャ、反対側に優樹菜、クロが座った。ちなみにアルンは当然の如く真琴の膝の上だ。


「ならいいけど、無茶はしないでね」

「うん、了解です。…それよりティターニャ大丈夫だった?けっこうざっくりいってたけど」


思い出すのはティターニャの焼け爛れた背中と剣で貫かれた脇腹だ。

(血もかなり出てたし…跡になってなきゃいいけど…)

と、心配する真琴を他所にティターニャはいたたまれない様な顔つきで頭を下げた。


「…え?」

「その節は本当にご迷惑を…」

「あ、いや!そうじゃなくて!その、跡とか体調とか色々大丈夫かな、て」


急な展開に驚くもティターニャの勘違いに気付き慌てて否定する。真琴の言葉にティターニャは安心したように顔を上げた。


「それは、はい。ユキナさんの魔法で跡も残さず治してもらいました。体調も元通りです」

「そっか、良かった」

「…確認しますか?」

「え!?い、いやいいから!いいから!」


少しおどけた様に服の裾を上げるティターニャを慌てて押しとどめる。

(いや、ちょっと見た…なんでもないです!)

思わず本音を零しかけるが背筋に薄ら寒い何かを感じたので辞めておく。…ちなみに後ろの優樹菜はずっと笑っていたがその時だけは目がガチだったと後にクロが話していた。


「そ、そう言えばルナも大丈夫だった?」


話題を変えようと今まで静かにしていたルナに声をかける。


「い、いや私は別に…」

「ルナ?」

「ど、どうしましたか?兄さん」

「いや…」


何故か尻尾を揺らしてオドオドするルナ。そしてこの話題になってから急によそよそしくなったアルンとクロ。

(うーん…なんだろ、この喧嘩別れした後の気まずさに似た何かは…)


「アルンとクロもありがとう。二人共凄く強くなっててびっくりしたよ」

「あ…う」「…うん」


そしてこちらもあまり反応が無い。ちょっと横を見てもティターニャと優樹菜も首を傾げている。

(…何かあったの?)

(それが、何かあの戦闘からずっとこんな感じで)

(何度か聞いてみたのですが…)

(うーん…)

小声で尋ねてみても手掛かり無しのようだ。

(…あ、そういえば)

その時真琴はルナに言うべき事があったのを思い出した。


「ルナ」

「何ですか?兄さん」

「二人を守ってくれてありがとうね」

「っ!わ、私、は…!」

「ルナ?」

「私は…その、足手まとい、なので、その」


小さく呟かれたその言葉に全員が固まる。

(今、何て…?)

固まる真琴達を他所にクロは暗い顔で俯き、アルンがそれを見て慌てだした。


「マコト!これは、その」

「アルン?」

「あの、だから」「アルン、いいから」「で、でも」「あれは私が」

「クロ?」


急に話し出したアルンとクロ、俯いたまま何も言わないルナ。ますます訳が分からなくなる真琴達は一旦アルン達を止めて事情を聞く。




(何とも…まぁ)

事情を聞くと更になんと言うべきか分からなくなる真琴達。

(これは本人達の問題、なんだろうけど…)

目の前で身を強ばらせて座るクロとどうして良いか分からずオロオロするアルン、未だに真琴の横で俯いたままのルナを見て、真琴はため息をつく。


「クロ」

「っ…はい」

「どれだけ緊急で切羽詰まってても言っていい事と悪い事がある、分かるよね?」

「…はい」

「マコト!クロは、その」

「アルンはちょっと静かに、今はクロと僕が話してる」

「うぅ…」

「それじゃあ、何をするべきかは分かるよね?」

「ご、ごめんなさい」

「僕じゃないよ」


真琴の言葉にクロはオドオドしながら俯いたままのルナの方を向く。


「その、足手まといなんて言ってごめんなさい」

「……」


尚も黙ったままのルナ。今までこういう経験が無いからか、どうして良いか分からず半泣きになるクロ。アルンもそんな2人をオロオロしながら真琴を見ている。

そんな三人に苦笑しながら真琴はクロの肩に手を置いた。


「それと?」

「え?」

「助けてくれて?」


そこでチラリとアルンを見る。すると彼女も心得たとばかりにルナの手をとる。いきなりの事に驚いて顔を上げるルナ。


「ルナ!助けてくれてありがとう!」

「ぇ、あの、私は何も…」

「あの時ルナが居なかったらアルンはここには居なかったと思う。だからありがとう!すっごくありがとう!」

「…っ」


アルンの裏表の無い真っ直ぐな感謝の言葉にルナは少し恥ずかしそうに頷いた。


「ほら、クロ」

「あ…その、助けてくれてありがとう……ルナ」

「ぅん…うん」


クロが小さく呟いた名前は、彼女の優秀な猫耳にしっかり届いていた。若干目を潤ませながら何度も頷くルナと顔を赤くして俯くクロ、それをニコニコ見ているアルン。そんな三人を見て真琴達は胸を撫で下ろした。

(まぁ、何とかなったな)

完全に解決…とまでは行かないが少なくともこれで彼女たちも一歩踏み出せたと思う。後は彼女たち自身が解決していけるだろう。


「…ありがとうございます」

「ん?」

「あの子達に一歩踏み出すきっかけを作ってくださって」

「…僕は何もしてないよ。あれはあの子達が自分で掴んだものだ」

「そう、ですね」


先程までの気まずさは何処へやら、いつの間にか楽しそうに笑っている三人を見て一安心する真琴達だった。


「真琴君、そろそろ…」

「ん?ああそうだね」


優樹菜の呼び掛けに我に返ると日が昇り始めて大分経つ。そろそろ行かないとだめだろう。


「じゃ、移動しようか」


全員に声をかけて移動しようと立ち上がる…時に気付いた。

(あ、やばいどうしよう)

ここである問題が発生した。今までは悠一が担いで真琴を移動させていたが今はそうはいかない…つまり移動ができないのである。立ち上がれない事は無いが歩くのがめちゃくちゃ遅い。

(まぁ、仕方ないか…)


「真琴君?」

「あーごめん。優樹菜達先に行っててくれる?」

「え?あ、悠一君が居ないから」

「だから悪いけど先に行って悠一呼んできてくれる?」


真琴の言葉にどうしようかと迷う優樹菜。確かに悠一を呼んでくるのが一番いいのだが何となく真琴を一人にするのに抵抗がある。

(かと言ってアルンちゃん達もいるし…)

と、迷う優樹菜だがここで予想外の事が起きる。


「まぁまぁそんな事言わずに」

「え?ティターニャどうし、え!?いや!ちょっと待った!え?ちょ、ティターニャ!?」

「これなら移動出来ますよね」


なんとティターニャが真琴を抱えたのだ。…所謂お姫様抱っこと言う形で。さすがの優樹菜も唖然とする。


「い、いやそうかもしれないけど」

「なら良いですよね?」

「で、でもほら!その、重いでしょ?」

「いえ全く。むしろ軽すぎて心配になる程です。まともに食事をしたのはいつですか?」

「あー…」

「はぁ…ではすぐに食事をしないと、ですね」


ティターニャの言葉に何も言えず黙る真琴。そんな様子にため息をつくと改めてしっかり抱え直し歩き出す。その顔は言葉とは裏腹にどこか楽しそうだった、らしい。何故"らしい"かと言うと

(おぉ…本当に大きい…メロン?かバレーボールぐらい)

見えなかったのだ……ティターニャの胸で。いや多少は見えるが顔を上げると必ず目に入るソレは現役の男子高校生にとってはかなりの目の毒だ。しかしこのままでは本当に逆お姫様抱っこで運ばれてしまう。それはさすがに男としての沽券に関わる。

と、ここで真琴はある事を思い付く。

(ちょっと恥ずかしいけどこれなら…)


「ティ、ティターニャこれだとほら、その…触っちゃうよ?」


胸部の方を見つつ言葉に詰まりながら真琴は恥ずかしそうに告げる。

(どうでもいいけどこれ完全にセクハラだよね…)

少しキョトンとしていたティターニャだが理解するにつれ…嬉しそうな顔になった。

(…あれ?)

予想と違う反応に戸惑う真琴の耳元でティターニャが小さく囁く。


「旦那様ならいつでも歓迎しますよ」

「…へ?」


ティターニャの言葉に間抜けな声と共に顔を真っ赤にして固まる真琴。そんな様子を小悪魔的な笑顔で見たティターニャはどこか楽しそうに歩き出した。固まっていた優樹菜達も後を追うように歩き出す。

(はぁ…結局このまま、か)

結局、真琴は、ただ男としてのプライドとか色々ゴリゴリ削られながら運ばれるのだった。


そして冒頭に戻る。




「旦那様?」

「いや、うん。大丈夫。ありがとうティターニャ」


尚も後ろで大爆笑している両親を極力視界に入れないようにしながらティターニャに下ろしてもらい席に着く。隣の畳貼りの居間にはいつの間にかペインやアイン、ツヴァイ達も居てここに今いないのは王族の四人ぐらいだろう。

(にしてもこれは…)

改めて机に目を向けるとそこには焼き魚、冷奴、味噌汁、白米…


「めっちゃ和食だ…」


思わず呟く。そう、いままでスルーしていたがこの家、畳と言い障子と言い和食と言い、とても和風だ。一昔前の日本と言っても過言ではないぐらいだ。


「ああそれな、俺達もここに来た時にめっちゃ驚いたよ」

「独自に発展した文化だそうだけど、ここまで来るとね…」


真琴の呟きに悠一と優衣が答える。確かに日本とは違い食卓は椅子に座って食べるようだし食器もスプーンとフォークだった。だが言ってしまえば違和感はそれだけであり、それ以外はまんま日本だった。


「ほっほっほ、お気に召していただけましたかな?」


その時、扉が開いて奥から一人の老人が姿を見せた。


「えっと…」

「おっと失礼、私はここプロトの領主をやらせて頂いてるマランと言う者です」

「あ、えっとぼ、私は」

「マコトさん、ですよね?」

「あ、はい」

「お目覚めになられたようで良かったです」

「ありがとうございます」


マランさんは事前に聞いていた通りの田舎のおじいちゃんと言った雰囲気の人だった。


「マコト!」


マランさんと話していると奥から聞き覚えのある声が響いた。振り向くと顔の似た二人の男女が走って来た。


「ルーン!リオン!」

「良かった、目が覚めたんですね」

「心配かけたね」

「わ、私は別に心配してないがな」

「とか言いながらずっとそわそわしてたけどね」

「リオン!」


と、何とも仲のいい姉弟の会話が繰り広げられそれを周りが微笑ましそうに眺める。すると周囲の視線に気付いたルーンが気まずげに咳払いをした。


「んんっ!そ、そう言えばマコトはもう温泉には入ったのか?」

「え?温泉?」

「そうだよ!ここ温泉が湧いているんだって。とっても広いんだよ」

「へー」


ルーンに続いて優樹菜が横から説明してくれた。


「ほほ、でしたら今から入られますか?」

「え?いいんですか?」

「ええ、もう掃除は終わっていますから」

「あ、でもご飯が…」

「ほほ、ご心配無く」「だってさ、それにお前あんまり食べるの乗り気じゃないだろ?」

「あ、あははは」


悠一の言葉に気まずげに目線を逸らす真琴。実際味か分からないので食べるのを躊躇っていたのは事実だ。少し暗くなった空気を切り替えるように悠一がパンッ!と膝を叩くと立ち上がる。


「んじゃ、行くか」

「お願いします…」

「おーいいな、俺達も行くか」

「え?俺もか?」

「当然だろ?リオン君もどうだい?」

「あ、いいですね」


そして真琴と悠一に釣られて大介も立ち上がり、ペインとリオンを誘いながら歩き出す。


「なら私達も行きましょうか」

「そうですね」

「あ、アルンも!」

「じゃあ私達も行きましょう」

「う、うん」


などなど言いながら女性陣も立ち上がり、歩き出す。途中でアイゼン王とカリンさんも合流し、結局皆で温泉へ向かう事となった。

いかがでしたか?

ちょっとバタバタしてたのでしばらくはゆっくりした回にしたいと思います。


よろしくお願いしますm(_ _)m

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