魔王の娘に恋した俺の話
ーSaidレオリック・アスリー(主人公)ー
この世界には魔王がいる
何万年と昔から魔王は魔国領という悪魔や獣人やエルフなどの魔人が住む大陸の各領土を支配する覇者として君臨している
悪魔族の現魔王は4443代目魔王グルート・ルシファーという
約100年前、魔王として魔国領に君臨した魔族の男だ。君臨したと言っても魔王は世襲制のため自動的にルシファー家の人間が魔王となれるのだが、そんな事は大した話ではないだろう
そのグルート・ルシファーが人間が住む俺たちの大陸に他種族間交流を深めるという理由でやってきたのだ。俺も魔王の訪問を目にした人間の一人だ
そしてその時に出会ってしまった、魔王の娘に
その子は俺とちょうど同い年くらいの金髪の綺麗な女の子
俺はその子と目が合い、その子は太陽のような笑顔を俺に向けてくれた
俺はその時にその子に恋に落ちたのだ
俺、レオリック・アスリーは魔王の娘に恋をした
そして俺は世界最強を目指した──
ーレオリック20歳ー
魔王の娘に恋をしてから10年がたった
俺はその10年間ただひたすら自分を鍛え上げた
強く、ただ強くなるために
どうして世界最強を目指したかった?
それにはこんな理由があるんだ──
この世界には有名なおとぎ話が存在する、まだ人間と魔族の仲が悪かった頃のお話だ
とある勇者が魔王の娘に恋をして、魔王の娘に求婚をする物語
勇者が魔王の娘に求婚をすると、父親である魔王はこう言ったんだ
「ハハハ!!我が娘が欲しくば、私を倒してみるがよい!!」と
勇者は持ちうる限りの全ての力を使い、魔王を倒し...いや、殺してしまったのだ
実の父親を目の前で殺した男と結婚したがる女がいるだろうか?いや、いないだろう
そう、結局勇者は振られてしまったのだ
実はこのおとぎ話、本当はお嫁さんの家族も大事にしましょう。的な子供たちに対する教育目的で作られた話なのだ。え、嘘じゃないかって?いや、本気の話なんだって、というかおとぎ話の文句を俺に言わないでくれよ
話を戻すとしようか、
俺の着眼点はそこじゃなかったんだよ
俺にとって重要なのは、これが事実を元にして作られたおとぎ話だということだ
実際、この勇者のせいで人族と悪魔族の関係はさらに悪くなった。そして約2000年前くらいにやっと人族と悪魔族は仲直りできたのだ
おっと、また話がそれてしまったみたいだな
当時10歳の俺はどうやったら魔王の娘とお近づきになれるのかを図書館に行って調べてみたんだ、今思えば図書館に行けばわかると思った自分が恥ずかしい
だけど、図書館に行って俺は見つけたんだ
その時に見つけたのは「ルシファー家」に関する本だった、そこにはこう書かれていた
─ルシファー家の娘に求婚をした場合、その時代のルシファー家当主、すなわち魔王の腹心である四天王を倒し、その後魔王を倒せたら、結婚が認められる─と
つまりおとぎ話の勇者もここに書かれている通り、魔王の四天王を倒し、魔王を倒したんだ
そして10歳の俺は思ったのだ、これは世界最強になるしかないのだと
これが俺が世界最強を目指した理由だ
父親が世界最強だったからとか、そんな理由で世界最強を目指してる訳ではない
世界最強になるのが一番手っ取り早いと思ったから世界最強になっただけの話なわけだ
実際魔王はめちゃくちゃ強いみたいだし、強くないと話が始まらないんだ。魔王に勝つ、それも魔王を殺さず、娘さんに嫌われない程度に、こんな事は世界最強にしかなし得ないことだと俺は幼心に思った
そして孤児院出身だった俺は孤児院を出た、外の世界へと旅立った
もうこの10年間は本当に、本当に頑張ったと思う
出来る事はあの手この手を使って頑張ってきたつもりだ
精霊の森へと行き、精霊が住む泉で精霊との契約を行った──
「おい、ちょっと世界最強になりたいから力を貸してくれ!!」
そんな馬鹿なことを叫んで精霊を呼び出した
俺の思いが届いたのかどうかはわからんが偶然にも精霊王という精霊の王様にあたる精霊と契約を結ぶことが出来た。なんでも俺には美味しい魔力があるから、契約を結んだらしい
精霊の王と契約を結んだことにより、俺は全ての属性の魔法を使えることができるようになった。そこから約2年くらいはひたすら魔法を覚えて覚えて覚えまくった
この時点で既に世界でもかなり強い存在になったと思ったりもしたけど、俺は満足はできなかった。魔王とはもっと強いものだと自分に思い込ませていた
だからその後、秘境地に住んでると言われている伝説の剣聖を見つけ出し、剣聖の弟子となった
そこではひたすら剣の腕を磨き、5年くらいを経て剣聖を超える剣の腕前を手に入れた
ちなみにこの時17歳くらいだったかな
その後3年は...まぁ適当に世界をふらついてみて強そうなヤツを片っ端からぶっ飛ばしたりして腕を磨いてきたわけだ
そしてやっと今に至るわけなんだけど──
「ねぇねぇ、そろそろいいんじゃない?」
「そろそろって、何がだよ」
俺の傍らに座る猫、俺と契約した精霊王のリアーナに顔を向ける
口調からわかるかもしれないが、リアーナは女なので正確には精霊王ではなく、精霊女王なのだ
だけど一応精霊王という扱いなので精霊王と言っている
「なにがって、魔王さんの所にいくことよ」
「それか...でも負けたら困るんだけど」
「あなたねぇ...こんなことしといて負けるわけないじゃない!!」
「いやいや、こんなことって...」
ただドラゴンの王の一角クリムゾンドラゴンを倒しただけじゃないか
ちなみに俺たちが今座っている場所はクリムゾンドラゴンの角の上だ
体調100mをゆうに超えるクリムゾンドラゴン、その巨体の上で俺とリアーナは空を眺めていた
「この世界に、隕石とか雷降らせまくって、オリハルコン並みに硬い鱗を切り刻む男がどこにいるのよ」
「...ここにいるけど?」
「はぁ...あなたと話してる、こっちが疲れるわ」
何故か呆れられてしまった。別に隕石と雷降らせまくることなんて魔王にだってできるでしょ?
「とにかく!!あなたはもう世界最強なんだから、そろそろ魔王の所にいきましょう!!」
「うーん......」
「うーん、じゃないのよ!!あなたから聞いた話だと、魔王の娘さんはとても可愛いんでしょ?しかもあなたと同い年くらいだったら、もう既にとびきり美人な女の子よ?他の人に取られちゃったらどうするの!?」
「......他の人に...取られる...だと?」
「......もしかして考えてなかったの...?」
俺は油が切れた機械のようにぎこちなく首を縦に降る
「......もう誰かと付き合ってたら、どうしよ?」
「貴族なのだからもう結婚してる可能性だってあるわよね」
あの子が誰かと結婚してるだって......
だとしたら俺の10年は......
「......急ぐぞ」
「......へ?」
俺はすぐに立ち上がり、リアーナをつかんで自分の肩にのせる
「にゃ、にゃ、いきなりにゃにするのよう!!」
「急いで魔王城に行くぞ!!」
俺は光の翼を生み出して、魔王城へと飛び立った
ーSaidクロエ・ルシファー(魔王の娘)─
なんだか、王城が慌ただしい
騎士やメイドたちが慌てて城内を駆け回っていた
何かあったのかしら?
私は不思議に思い、魔王であるお父様の元へと向かうことにした
「お父様、城内が騒がしいようですが、一体どうなされたのですか?」
「実は城にただならぬ魔力をもった者が接近してきているようなんだ」
「ただならぬ魔力ですか...」
詳しく聞いてみたら精霊王に匹敵する魔力の持ち主だとか
一体どんな怪物がここに向かってきてるのだろうか?
「心配いらないよ、クロエ。既に四天王たちが王城の中でも待ち構えているからね」
「まぁ四天王の皆様がいれば問題ありませんね」
「それに私だっているからな」
四天王に加え、魔族最強のお父様がいるなら心配の必要はなさそうだ
「私の心配事といえば、娘のクロエをもらってくれるお婿さんがいないことだよ」
「うっ......!」
お父様がいきなり痛いことをついてきた
「ははは、しかたないよ。クロエは特別だからね、相手も特別な者でないと」
「そんな事はわかってます...」
だからって、今は結婚の話題を出さなくても...
最近だと姪のアナスタシアにも「はやく早く結婚できるといいね、クロエ姉さん!」とか言われる始末!!
確かに私の年齢は...ゴニョゴニョだし、そろそろ結婚しないと手遅れになることに関しては私だって心配してるわ
でも、私の魔力はルシファー家でも特別だから、耐性がある人でないと私と結婚することは不可能
そんな人は1人しか会ったことがない
確かあれは十年ほど前に人族の国へお父様と訪問をした時だ
私たちの方をじっと真剣に見つめていた少年、あの子の内に秘める魔力は特別だったのを覚えている
あぁ、もしあの子ともう1度会えたら、絶対私と結婚させてみせるわ!!
─Saidレオリック・アスリー─
小一時間ほどで魔王城についた
とりあえず城門が広いていたので入ってみたのだが──
「我が名はブルータス!!四天王の1人!!」
何故か四天王に戦いを仕掛けられていた
既に魔王には俺が娘に求婚をしようとしていることがバレたのか?...さすがは魔王と言ったとこだろうか、やっぱり今の俺には勝てない気がしてきたぞ
「ここを通りたくば、俺に勝ってから通れ!!」
あんな事言ってるし、やっぱり求婚のことがバレてるぞ!?
......いや、ひるんでどうするんだ、俺!!
求婚の儀が始まっているという事は魔王の娘はまだフリーってことじゃないか!!
すなわち俺にもチャンスがあるってことだ!!
しかも余計な手間を省いて通過儀礼は始まっている、これはむしろラッキーと考えた方がいいだろう
「俺の名前はレオリック・アスリー!!悪いが、そこは通させてもらうぞ!!」
「レオリックか、名前は覚えたぞ!!その心意気やよし!!さぁ、かかってこい!!」
俺は「かかってこい!!」と言われたので、そのまま地面を蹴り、四天王ブルータスに向かって拳を振り上げ、そのまま顔面めがけて拳を振り下ろした
「へっ!?ブヘラっ!?」
「......あれ?」
相手は何も動かないので俺を試しに来たと思って俺は本気でぶん殴ったら、相手はそのままぶっ飛ばされて壁に叩きつけられて、痙攣している
「一撃だったわね」
「......あぁ一撃だった」
俺の戦闘を察知して肩から降りていたリアーナがトテトテ歩いて、俺に話しかけてくる
「なぁ、俺はもっと激戦になると考えていいたんだけど...」
「だからあなたはもう世界最強だって言ってるでしょ?」
いやいや、まさかそんなことないでしょ
たぶんあれは俺を油断させる罠だろう
きっと、そうに違いないっ!
「あ、動かなくなったわ」
「......」
あれ、もしかしてガチで一撃で終わり??
俺は慌てて四天王ブルータスの元に急いで回復魔法をかけた
◇
「私は四天王の──ぐへっ!!」
俺は腹にヤクザキックをかまして、4人目の四天王を名前を聞く前に倒す
「ついに容赦なくなったわね」
「流石に4人目になるとな」
最初のヤツと今倒した四天王を抜いて、さっき2人の四天王と相手したんだけど
そいつらもワンパンKOだったし、なんか、いちいち自己紹介聞いてるのもめんどくさくなってきたんだよね
本当にこれが四天王かと疑いたくもなるけど、本当に四天王っぽいのでたぶん四天王なのだろう
だとしたら後は相手をするのは魔王だけだ
多分だけど、四天王が弱いから魔王も弱いと俺に勝手に勘違いさせて油断させる罠ではないのかと俺は疑っている
十分にありえる話だ、もしかしたら真の四天王みたいな存在もいるかもしれない
俺とリアーナは長い廊下を歩き、ついに魔王と対面する
魔王は巨大な玉座の上に座り、その側にはクリムゾンレッド色の綺麗な髪をした美人な女性がたっていた。魔王の奥さんだろうか?なんか俺のことを睨んでるような気がしてるんだけど、もしかして娘の結婚に反対してるんじゃないだろうか?
だとしたらどうしよう...お母様に嫌われるわけにはいかない
そして俺たちを挟むように壁を背中に並んでいた者達の中にあの子はいた
十年前と変わらぬ綺麗な金髪がそこにはあった
さて、後は魔王だけだ。なんか知らないけど向こうには俺が求婚しようとしてることがバレてるみたいだから、四天王は倒したし後は魔王を倒すのみ
俺は魔王を睨みつけた
ーSaidクロエ・ルシファー─
彼がこの謁見の間に入ってきた時、私は驚いた
だって、彼は十年前に見たあの少年だったから
まさかあんなにカッコよくなるなんて思ってもいなかった。しかも四天王を一撃で倒す力もあるし、なんといってもあの魔力
その時に確信した、私はあの人と結ばれるために生まれてきたのだと
お父様が魔力全開で威嚇をしているわ、配下の者達も耐えるので精一杯みたいだわ、彼は大丈夫なのだろうか?
彼が何の理由で王城に攻め込んできたかはわからないけど、私は絶対に彼を自分のものにすると心に誓った
むむむむ!!届け私の思い!!
私は彼に自分の思いが伝わるようにジッと彼を見つめた
─Saidレオリック・アスリーー
「君は何のために私の城へと来たのかな?」
魔王が俺に向かってそう聞いてきた
何のためかなんてもう知ってるくせに、と思ったりもしたが、やはりここは自分の口で言うのが道理なのだろう
向こうは既に知ってるだろうが、俺はまだ自分の口で言っていない
くっ...これが魔王の覇気、いや、娘は絶対に渡さないという父親の覇気か!!
だけど俺だって負けない、俺も魔力を全力で解放して相対する
そして堂々とこう言い放った
「俺の名前はレオリック・アスリー!!魔王よ、どうか俺に娘さんをください!!」
ください、ください、くださいと俺の声が響き渡る
どうだ言い切ってやったぜ、さぁここらかが本番だ。俺は魔王を超えて、あの子と結婚をするんだ!!
やはり予想通り魔王様は俺を睨んできた、だけど何故かその隣の奥さんが頬を赤らめてヤンヤンと身体をねじっていた
「...青年よ、今なんと言った?」
「いや、だからあなたの娘をもらうと...」
え、俺そういったよね?俺奥さんが欲しいなんて一言も言ってないよね?どうして魔王様は顔を真っ赤にした奥さんを見てるのかな!?
「我が娘、クロエを嫁に欲しいと言ったのだな?」
名前はクロエというのか、かわいい名前じゃないか!!
「はい、娘さんが欲しいです」
初めて名前を知った人間に求婚するとかバカじゃないとか一瞬自分でも思ったけど、俺の気持ちはもう止まらない
「クロエ、お前はどうだい?」
「はい、私もレオリック様と結婚がしたいです」
「......へっ?」
俺はアホな声を上げてしまった
だって、クロエ呼ばれる女性は魔王の隣に立っていた赤髪の女性だったのだから
「ならば、今ここで我が娘、クロエ・ルシファーとレオリック・アスリーの結婚を認めようではないか!!」
魔王か玉座から立ち上がり宣言をした
周りからは「オォ!!」とか「おめでとうございます」などの喝采の声が響き渡る
「え...えぇ!?」
俺はただひたすらその状況に混乱するばかりであった
気づけば赤髪の女性が俺に近づき俺の手をとっていた
「よろしくお願いしますね、旦那様!」
綺麗な声で俺にそう言った──
晴れて俺は魔王の娘をお嫁さんにもらえた
ただこのオチを書いてみたかっただけなんです!!
この続きは今連載してるやつが落ち着いたら書いてみたいです