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Is Life Beautiful ?  作者: 竹屋智晶
4月、春は出会いの季節と言うけれど...
3/12

3章

放課後、下駄箱に見覚えのある花柄の日記帳が刺してあった。

あの人は忍者か!?

つか、普通に置けばいいものを……派手にやらないと気が済まないのだろうな。

金属製の下駄箱に文字通り刺さっている日記帳を引き抜く。


とりあえず寮に帰ってから目を通そう、ここでは恐ろしくて開けられない……。

そしていつの間にか付いて来ていた朝子殿達と帰る事になり3人で校門を出たのだが――。


「――で、何処に連れて行くつもりなのだ?」


普段寮までは山を降って約15分。

ちなみに行きは登山効果も相まって30分かかる。

なのに何故か学校を出て約25分、山を降るどころか逆に登っている。

どうやら朝子殿にうまい具合に誘導されているようだ。


「バレてた!? いやいや、親交を深めるついでにあゆちゃんを悪の道に引き込もうと思っていてねぇ……」


堂々と悪びれも無く朝子殿がトンデモない事を言う。

いろんな意味で清々しいな、この人は。


「だいじょうび、悪の道と言っても辻斬りとか銀行強盗の手伝いの類いじゃないから♪」

「うむ、それは紛れもなく犯罪というものだからな」


まぁ、むしろ怪しい宗教とか、マルチ系の店の方が何倍も質が悪いが――。


「うし、着いたよん♪」


数分後、丘の頂上付近の山小屋風の家の前で朝子殿が足を止める。


扉には『営業中』の札が掛かっており何かの店というのが分かる。

マルチ確定か。


「ただの喫茶店だから大丈夫だよ♪」


私の態度を察してか朝子殿が笑顔で扉の取っ手に手を掛けて思いっきり押し開ける。

扉の内側に付いている鈴がちりんちりんと来店者の存在を告げる。


「ちぃーっす、マスター。売上貢献に来たよん♪」


開口一番、朝子殿がカウンターの隅で皿洗いしている作務衣にエプロン姿のおっちゃんに勢い良く叫ぶ。

おっちゃんは皿を洗う手を止め、ヤレヤレといった顔で私達を見て。


「お前さん……下校時の寄り道、買食いの類は校則で禁止じゃなかったか?」

「だいじょうび、GPS追跡している訳じゃないからバレなきゃいいのだよ。それにお茶を飲みにきただけだから買い食いではないしね」


「オイオイ、そんなんでいいのか?」

「大体、学校帰りじゃなきゃこんな辺鄙なところにある店には来られないでしょう」


朝子殿の言葉におっちゃんは豪快に笑い出す。


「ハッハッハ…そりゃそうだ。――で、そっちのちっこいお嬢ちゃんは初めて見る顔だが?」

「さっすがマスター、ロリ魂の鑑だね〜」

「誰がロリだ……。商売柄来た客の顔はみんな覚えてるだけだ」

「固定常連ばっかで新規のお客さん来ないもんねぇ〜――あっ、ボクめっちゃ濃いエスプレッソ大盛りね」

「言ってろ。そっちのポニテ嬢ちゃんは……ドクダミ茶だっけか?」


おっちゃんの声に聡宮殿が朝子殿の陰で控えめに頷く。

この人は本当に人見知りなのだな。

自分はとりあえずアメリカンを頼み、朝子殿を真ん中にしてカウンターに座る。


「今日はひなちゃん居ないの〜? つまんないなぁ〜」


朝子殿がブーブー言いながらマグカップに並々と注がれたいかにも濃そうなドス黒い液体を一気飲みする。

胃に悪いぞ、その飲み方は……。


「ぷっはぁ……頭脳労働後の1杯はまた格別なのだよ。」

そうなのか……少しジジ臭いが

そう思いながら出されたコーヒーに口を付ける。


……?

――何かおかしいぞ

普通、アメリカンコーヒーとは苦味より酸味が強いはずなのだが――、私が口を付けたこの液体は酸味と言うか、苦いと言うレベルをはるかに超えている気がする。つか、少し緑がかってるんですが……。


ふと視線を横に向けると朝子殿とおっちゃんがニヤニヤと私を見ている。

――何かある


薬でも盛られたか……いや、薬物的な味はしないので恐らくコーヒーとはアンマッチする何かが入っているのだろう。


まぁでも、私が飲めないレベルではないので気にせず飲み切る。


緑黒い謎飲料を飲み切った私を見ておっちゃんと朝子殿がおぉーと歓喜の声を上げている


「あゆりん、すごーぃ。あれをものともせずに飲み切るとは」

「ちっこいのに根性座ってるな、お嬢ちゃん」


何か妙に感動されているのだが――。


「ちなみにこの謎飲料は何なのだ、朝子殿」

「ふふふ...この一見コーヒーに見える謎な飲料物はね、この店一番のトンデモメニュー……その名もゴーヤコーヒーなんだよ!!」


あー、なるほどあの苦味はゴーヤか……。

しかしだ、私はアメリカンコーヒーを頼んだはずが


「何故ゴーヤコーヒー?」

「えっとね、ここのマスターは初めて来たお客には一杯目でこのゴーヤコーヒーを振る舞って、反応を見て楽しむと言うちょっと困った癖と言うか……性癖?ん~、性格なんだよ」 


何つーはた迷惑な――そりゃ中々常連は出来ないわけだ。


「しかし、今年の藤蒼はすげぇな。今年に入ってあれをものともせず飲み切ったのはお嬢ちゃんで三人目だぞ」


一体何人の客に飲ませているんだ?これを。


「ちなみに1人は本読みながら飲んでて全くのノーリアクションだったなァ」


どんな奴だ。

もしかして――

そう口に出そうとした瞬間窓の外に何かの気配を感じた。


「おっちゃん」

「んー?」

「あっちの窓の外は庭でもあるの?」

「いいや、断崖絶壁で景色が良いだけだぞ……」


窓に近づき外を眺めると確かに街全体が綺麗に見える景色だ。

窓を開けて下を覗くと案の定……

トイレにある吸盤、通称ラバーカップ2個を足場にして集音器片手にこちらの様子をうかがっているクマ――

いや、メアリーちゃんだっけか……それが居た。

お前はパパラッチか!?

つか、どうやってここまで辿り着いたのやら

私の視線に気が付いたメアリーちゃんか私に向かいビッと敬礼をするが下を見て脚をガクガク震わせている。


落ちでもしたら寝覚めが悪いので、メアリーちゃんの首元をひょいと掴み抱き抱える。そして座っていた席の隣に置いてある自分のカバンの上に座らせた。

不思議そうな顔をしているメアリーちゃんに


「どうせ盗み聞きするならここの方が安全且つ都合が良いだろ? ご主人様の命令でも危険な事は極力避けるようにな」


そう言うと何故か朝子殿が感激しながら携帯で私の写真を撮り始めた。


「あゆりん、オットコ前〜。ヤバい、私が女だったら惚れてる所だよ」

「いや、貴女は女性では?」

「ふっふっふ〜……どうだろうねぇ」


その笑顔が不適すぎて、朝子殿の隣でドクダミ茶を啜っている聡宮殿に目をむける。

彼女もその視線に気がついたのか


「朝子は正真正銘の女の子だ。毎日確認してる。」


なーんだ、それなら安心――。

って、今物凄い発言しなかったか!?

毎日確認してる!? 何を?


「千景止めてよ~恥ずかしぃ~よ~。」


朝子殿がわざとらしく照れた仕草をしている。


「別に、本当の事だし」


聡宮殿の方がよっぽど男前な気がする。

そんなとりとめのない話をしながら時間が緩やかに過ぎて行く。

そう言えば、こう言うのに憧れていたなぁ……

中学時代は色々な事情で友達があまり居なかったから、こう言うガールズトークがとても新鮮だ。


「さて、いい写真撮らせてもらったし――あゆちゃんにみくにちゃんの事教えてあげるね。もちろんタダで」


普通なら金を取る気満々な言い方で朝子殿が言う。


朝子殿が言うには吾妻先輩は日本でも有数な財閥の令嬢で、幼い頃から様々な英才教育を受けた超才女らしい。


「ただね〜、最近のみくにちゃんちょっと変わったんだよね。」

「変わったというと?」

「うん、去年までは何かいつも不機嫌な顔して本を読んでたり、必要以上に人と関わらないって言うか――、城壁を作ってそこに引き籠ってるみたいな。そんな感じだったから」


私が抱いているあの人の印象と全く違うんだが。


「いや〜、だから校門であゆちゃんに愛の告白したって聞いて自分の耳を疑ったよ。あははは……。

 ――きっとあゆちゃんがいい影響を与えたんだろうね」

「一目でか!?」


私の言葉にふふんと鼻を鳴らしながら

朝子殿が呟く。


「人間、何処でどうなるかなんて分からないものだからねぇ……」


ちょっと意味深すぎるんですが。

私の横でメアリーちゃんも腕を組んでうんうんと頷いている。

オイオイ、ぬいぐるみも理解できるのか!?


「あははは、あゆみんももうチョット大人になったら解ると思うよ〜」

「そうなのか?」

「ま、取り敢えず毎日牛乳だな。」


おっちゃんが二杯目のコーヒーカップを出しながら私達の会話に入ってきた。

よし、今回はちゃんとコーヒーの色だな。

何となしに中身を確認してしまった。


「牛乳もいいけど、毎日揉むのが良いって聞いたけどぉ〜。マスターも毎晩やってるんでしょぉ〜……イヤン♪」


えっと、揉むって何処を…否、何を?


「やってる訳無えだろ、俺のは自前だ。」


おっちゃんが何故か胸を張って否定する。

案外良い胸…いや筋肉質なんだな…


「いやいやいや…マスターのじゃ無くて、ひなちゃん――」

「何なに?呼んだ〜?」


突然背後からした声に吾妻先輩かと思い私は椅子から飛び跳ねてしまった。

そこには20歳位の女性がキョトンとした顔で立っていた。

バイトの人かね?

この後、この女性――おっちゃんの奥さんに撫でくり回されたのだがそれはまた別の話で。


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