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エスティマ滅亡編6

炎の海。疎らに広がる賊達。地面が人の血で染められ、尸がそこいらに斬り捨てられている。高々と防壁になっていた壁は決壊、建物も酷いところでは既に全壊状態だった。


部隊ごとに3人一組のペアが組まれた。各小隊長の元、二人の騎士が当てられる。自分は運良くギルベルトと当たり、共に探索を始めた。



西の征伐に当てられた自分に待ち受けていたのはまさに絶望。


逃げ遅れた人々の死の異臭。建物の下敷きになった人々の泣き叫ぶ声。

子どもがまだ中に居るんです。お願いします、助けて下さい。子どもの母親が小隊長の膝にしがみつく。服も顔も涙と煤、傷が痛々しい程に入り混じっている。


目を覆いたい。


そんな母親の手を払い、短気な声を張り上げる小隊長。


「さ、触るな。穢らわしい」


真っ先にギルベルトがその横暴に気付き、小隊長の腕を掴んで睨みつける。


「言葉が過ぎます」


同じ騎士でも、どこかに誠意の志を持ったギルベルト。彼の言葉はいつも正しい。何方が正しいのか、分からなかったとしてもギルベルトは間違わない、ルシアはそう思っていた。


「貴方は仮にも小隊長だ。一国の民を見下ろしたままでは命なんて到底救えない」


相手の腕を離し、子どもの母親へと向き直るギルベルト。服をごそごそと漁って、左胸から薄い布切れを取り出した。それを母親の手へと握らせる。


「救出班は、もう間もなく到着します。必ず助けてくれます。私達は、貴女と貴女のお子さんを守るために賊軍と戦はなければなりません」


くるりと踵を返すと、ギルベルトは剣を音を立てずに鞘からさっと引き抜いた。その視線の先を見ると、西門の少し入った所で連隊を成した賊軍がいる。ざっと数えて20はいる。彼は戦うつもりなのだ。


その一部始終を見ていた自分は、皮肉にも何も出来なかった。いや。本当は何も、思わなかった。



この歪んだ壁の内側で、人々は何が正しくて、何が間違っているのかを見失っていたのかもしれない。

ギルベルト、ただ一人を除いて。

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