4.可哀想な八木くん(笑)
「ねえ本当に僕はどうすればいいのかな……。」
そう言って落ち込んでいるのは小太り女好きナルシの八木正(独身)。荒井梨沙により噂を流された結果女子がこいつを避けるようになり歩く姿はさながらモーセが海を割るようだ。
「可哀想に……とは思うがお前が悪い。」
元はと言えばこいつが荒井の小4の作文を覚えてたことが原因だと思うし自分で女の子のことは全部わかるとか言ってたし……。
「そんな事言わないで助けてくれよ〜!!」
「ちょっ揺さぶるな揺さぶるな!」
「いいじゃないか!!助けてくれても!!君しかいないんだ!!」
「なぜ俺なんだ!!」
「……だって君は風花さんと大井さんと仲がいいだろ?」
「…ただの幼なじみだよ。」
「はは!それでもいいさ。あの二人は女の子たちからの人望がある。つまり2人の力を借りれば僕の噂が嘘だって信じてもらえるはずさ。」
「でも嘘じゃないじゃん。」
「嘘だ!!!!!!!!!僕はねえ!女の子のことに詳しいとは自負しているけど知られたくないことだとかそういうことは知らないようにしている!!知っても忘れる!!」
「……。」
「だから僕は心外なんだよ!僕は女の子を傷つけたりなんてしないのに!!なのに!!見てくれ!これを!!」
俺たちの周りには円を描くように女子がいなくなっておりちらほらと不安や敵意の目を感じる。それに合わせるように男子もいなくなり……。
「〇が如くの戦闘中の野次馬?。」
「はっ倒すよ!!」
龍おもろいのに。
「ていうかそれなら自分で本人に言えばいいだろ。別に俺を通さなくてもあいつらなら……あ(察し)」
ごめん不安と敵意の目の中にあいつらいたわ。
仕方ないので2人に話しかける。
「てなわけで誤解をとくのを手伝って欲しい。」
「「でも誤解じゃなくない?」」
「それは俺も思った。」
「「じゃあそれで。」」
「待て待て待て。さすがに八木が可哀想だろ。」
「でも累私を売ったよね。」
「う゛」
「累が揺衣を売った!?いくらで!?」
「2千円。」
「やっす!!揺衣やっす!!!!」
「る〜い〜?」
「さーせん、俺の指これ以上後ろに曲がらないっす。」
まあ荒井に揺衣を売って俺は使えるアピールしたけど。つまり揺衣を売って自分の顔を売ってる……フフフ……(今世紀最低のギャグ)。
「でもまあ内容的に隠れてた方があれな内容ではあっただろ?」
「それは……そうかもだけどさ。(目線であれは弱み握られたようなもんだよと訴えかける)」
「な?(シカト)」
「???」
なにも知らない飛跳が俺と揺衣を交互に見つめる。……ごめん飛跳。お前にだけはあの噂知られたくない。
「えー!2人って付き合ってたの!?」
「いや、誤解だって。」
「いーや!!そういう風に言うのはねえ!絶対付き合ってるんだよね!!私には分かるんだよ!!」
「だから誤解だって!!」
「いやいやいや騙されないから!!まったくもう!付き合ってるんだったら早く言ってよ〜!プレゼントは何にする?ネックレスにする?花束にする?それともゆ・び・わ?」
「どうすんだこの暴走恋バナ列車。」
……うん!脳内シミュレーション完了。
結論:知られたら終わり!
俺は揺衣と目を見合わせる。
「「なんでもないよ。(さわやかな笑顔)」」
「Final Answer?」
「「Final Answer.」」
「You're Welcome!」
「どういうこと?」
「ただ累が体育着を忘れた時に私のジャージで受けてただけだから。」
「え…なにやってんの累。」
なにいってんの揺衣。俺そんな事したことねえよ。ふつうあるとしたら逆じゃない?ていうか同じクラスなんだから揺衣に借りようってなんねえよ。……というか飛跳も同じクラスなんだから気づけよ。
「……(恨めしさを目でアピール)。」
「まあそれだけだよ。(どこ吹く風)」
「はえ〜。(アホ丸出し)」
「まあとにかく八木をどうにか助けてやってくれ。(ガチ懇願)」
落ち込みすぎて俺の机で溶けている八木を指さす。そろそろ可哀想になってきた。
「頼む。」
「君は優しいね。」
「こういうのめんどくさいんだよ。」
揺衣はこちらに微笑んでから溶けた八木の前に立つ。
「いいよ。私達も君を助ける。」
「しゃーなし!だね!」
「……え!!いいのかい!!ありがとう二人とも!!やっぱり持つべきは女の子の友達だね!!」
「俺は?」
「こうなったら作戦会議と行こうか!」
「そうだねえ〜」
「本当にありがとう!!」
「俺は?」
「じゃあ帰りは3人でサイゼでも行こうか。」
「ありだね〜。」
「そこで作戦会議だね!」
「俺は?」
「猛毒を扱うドクター、デスポイズンドクター。」
「……」
「……」
「……」
自己主張失敗。
絶望のあまり地面に倒れ込んだ俺の肩を誰かが叩く。振り向くと1人の男子生徒が俺に手を差し伸べた。
「それは言うとしたら『もうドクター(猛毒ター)』でしょ。」
「誰だお前。はっ倒すぞタコ。」
「泣いた。」
彼は橘勇気。クラスメイトだ。名簿見たらそう書いてあった。




