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第三話

 ダンの意識はコウに噛みつき血を飲みこんだ時に戻っていた。赤い目は輝きを取り戻し、現状を確認していた。コウはダンにもたれかかり意識はなかった。

「コウ!しっかりしろ!」

 コウを支えている手が小刻みに震えだす。自制が利かず一回に吸った量が多く、致死量の血を吸ってしまったかもしれない。ダンから発せられる声は恐怖に怯えてる声だった。目から涙も出てくる。

「駄目だ!死ぬな!」

 コウを抱き寄せるダン。

「だから俺は……人間と関わってはいけないんだ……」

 抱きかかえたまま視線は蝙蝠に向く。

「イー!何故つれてきた!」

 泣き叫び怒りをぶつけるが、ダンの手は脈を感じた。コウの鼓動がダンの手に伝わり、意識はコウに戻る。


「コウ、生きているのか……」

 安堵。抱きかかえたまま立ち上がり寝室に連れ行き静かに寝かせ、ダンは深く長い溜息を吐く。寝かせたことにより心臓が上下に動いているのも確認できた。

 ダンは全身の力が抜けたようにベッド横に座り込み頭を抱え自分を落ち着かせた。そして静かに使い魔を呼ぶ。

「イー、お前が責任を持って見張れ。起きたらすぐに呼べ」

 蝙蝠はコウに寄り添うようにそばに止まった。


 ダンは静かに寝室を後にし、隣の自室のソファに腰を落とし項垂うなだれる。

 衝動で人間を殺める寸前まできていた。ここ数十年は人間の血を求めないよう外にも出ず穏やかに過ごしていた。しかしあの雨の日にイーが外に出て怪我をしたため迎えに行く羽目になった。人間が出歩かないであろう深夜のはずがコウに出会ってしまった。関わることなく終わりたかったが話しかけてしまった。思わず匂いまで嗅いでしまった。そして今殺しかけた。コウが起きたときにどう接していいかわからずにいた。

 ダンは日が昇るまで自分を責め答えを探せずにいた。



 コウは眩しさで目が覚めた。すっかり朝になり自分の状況を整理した。知らない天井にふかふかのベッド。枕の横には黒い塊があった。ゆっくり体を起こし辺りを見渡すとダンが腕を組んで壁に寄りかかっていたが、顔は疲労が溜まっているようだった。その視線はコウを睨みつけていた。一瞬目が合ったが逸らされ真下にいる蝙蝠に視線が変わった。

「ったく、俺の使い魔のくせに使えないな。起きたら呼べと言ったのに寝ている」

 苛立ちを感じる言葉にコウは少し驚いた。

「あ、あの」

 声が聞こえると再びダンはコウを睨みつけた。そして感情の無い低い声で、

「起きたなら帰れ。二度と来るな」

 明らかな拒絶だった。

 昨夜のことを聞きたいがそれを許さないかのように棘がある返答にコウは固まってしまった。


 動けずにいるコウに近づきベッドから引きずり出すダン。思わずよろけるがそんなことも気にせずコウの腕を持って階段を下りていく。蝙蝠も慌てて起きダンを止めようとしているが払いのける。

「ちょっと!待って!」

 コウの言葉を無視し玄関のドアを開け乱暴に外に放り投げドアを閉める。数秒立ち止まっているとドアが開いたが昨晩持っていた鞄と靴が投げられてまたドアは閉まってしまった。

 放心状態のコウ。何度もドアを叩く。

 コウは引っ張られながらもダンのことをしっかりと見ていた。鼻をすすったり、コウの腕を掴んでいない反対の腕で目のあたりを拭うのを見ていた。

 何故泣いていたのか、どうしても放っておけなかった。


 一方、ダンは鞄や靴を放り投げた後その場で蹲り小さく泣いていた。

「これでいいんだ」

 自分に言い聞かせるように呟く言葉なのに涙が止まらない。正しい選択だとは思っていない。どうすればコウと関わらずに済むか考えに考えた結果が拒絶だった。でも心の奥では最適解ではないのは分かっていた。

 蝙蝠が心配そうに見つめるも、

「あれで嫌ってくれた方がいい。嫌いになっただろう。もう会うこともない」

 立ち上がり普段の生活に戻ろうとする。蝙蝠だけはドアの外にいるであろうコウのことを思っていた。

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