第7話:夢と仮面
俺は夢を見た。
それは、悍ましい神の夢だった。
脳内に直接、声が響く。
『汝は汝のまま、この世界で生き続ける』
(孤独だ!人に戻してくれ!)
叫ぼうとしたが、声が出ない。
喉があるはずなのに、そこには何もなかった。
異形の神は笑った。
子供、老人、男、女――
無数の声が重なり合った笑い声。
その笑い声は、世界そのものが嘲っているようだった。
(くそ……神め!)
神は遠ざかっていく。
いや、俺が沈んでいくのか。
体が鉛のように重くなる。
意識が引き裂かれる。
(神めぇぇぇ!!)
一言も発せないまま、現実に引き戻された。
目を覚ましたら、見たことのある所。ポーテットの荷馬車の中だった。
「気がついた?痛むところは?」
「だいぶいい、また魔法で治してくれたのか?」
「うん、熱出してうなされてたよ。夢でも見た?」
思い出そうとしたが、もう忘れてしまった。
「見たんだけど、もう覚えてない」
「本当にアンデッド倒してきたの?」
「うん、今になって怖くなって来たよ」
手が震えている。
「アンデッド討伐なんて、初心者ができることじゃないよ……正直、信じられない」
「そうか……最初から、俺を殺すつもりだったんだな」
「でもこれで村に入れるよ。はい、フード、それと…」
ポーテットは荷物の中から、無機質な仮面を取り出した。
「これ、つけて」
俺は受け取り、顔に当てる。
仮面の向こうで、俺は“誰でもない顔”になった。
「似合う?」
「不気味だけど、素顔よりはマシね」
俺は笑おうとした。
だが、その表情を、もう自分で確かめる術はなかった。
「それより剣折れちゃった。代わりになるものある?」
「あるにはあるけど、ドワーフ製じゃないからこれもすぐ折れるわよ」
「これ欲しい。グラディウスみたいだ」
「てか売りもんなんだけど…魔物退治して稼いでよ。できるでしょ?アンデッド倒せるんだから」
「魔物退治の仕事かぁ、あるかな?」
「ギルド行けば大量にあるわよ」
「ところで何で馬車停めて村の外にいるの?まだ入れないの?」
馬車は村の入り口で止まっていた。
「巣窟まで確認に行ってるのよ。もうそろそろ戻って来ると思うわ」
「ポーテットはなんで俺にここまでして付き合ってくれてるの?」
「言ったでしょ?エルフは義理堅いの。習わしでね」
村に入れる。
でも――この姿で、本当に人として扱われるのか?




