第3話:異形
女の子はまるで魔物を見るような目でガタガタと震えている。
「ど、どうしたんだよ?」
俺は突如悲鳴を上げられた挙句、訳もわからず怖がられて少しショックを受けた。
「助けたんだ。俺は敵じゃない」
「ち、近寄らないで!」
女の子は震える手でゴブリンが落とした錆びたナイフを拾い、俺に向けた。
「落ち着いて。襲わない」
「に、人間?あ、あなた生きてるの?」
「当たり前だろ。こうやって話せてるんだから」
女の子は恐る恐る俺に手鏡を渡した。
「鏡を見て」
「なんだよ、そんなに、―――っ!!」
俺は息を飲み込み、口を手で覆った。
そこに映っていたのは、
熱に焼かれ、原型を失った――
死んだときの俺の顔、そのものだった。
そこには、“生きているはずの俺”はいなかった。
俺は鏡を見た瞬間、それを地面に叩き落とした。
「神様……『俺のまま』って、こういうことかよ……」
喉の奥から、笑いとも嗚咽ともつかない音が漏れた。
「それで本当に人間なの?あなたは何者?」
「こんな顔じゃ怖がられても仕方ないな……俺は気づいたらこの世界にいたんだ。」
俺は事の経緯を彼女に話した。
「そんな事信じられない」
「俺だってそうだよ。でも俺は俺なんだ」
「でも助けてもらったから、何かお礼しないと」
「そんなのいいよ。あ、この剣貰える?」
「そんな上等な物じゃないけどいいよ。あとフードもあげる。このままうろついてたら魔物と間違えられるかもしれないし」
「ありがとう、いてて!」
今になってアドレナリンで鈍くなってた足の痛みが戻ってきた。
「怪我したのね。治してあげる」
「多分折れてるからすぐには無理だよ」
彼女は呪文を唱え、折れた右足に触れるとスーッと痛みが引いた。
「すごい……魔法?」
「うん、この世界では常識なのよ。応急処置だからあまり激しく動かさないで。……ほんとに違う世界から来たみたいね」
まだ女の子は半信半疑だ。
「ありがとう」と俺は礼を言った。
「あなたこれからどこへ行くつもり?」
「とりあえず村に向かってるよ。何も分からないからな」
「送ってくわ。エルフは受けた恩を返すからね」
「君エルフ?」
「そうよ、耳尖ってるでしょ?」
ほんとだ、でもアニメみたいに長くない。普通より尖耳だ。
こうして俺たちは村へ向かった。
俺は、もう二度と“人間”には戻れないのかもしれない。




