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第11話:呪い

瞬きすると青年と老紳士は既に居なかった。


(さっきまで居たのに)


(あれ?動ける……)


さっきまでまとわりついていた死の影が、嘘のように消えていた。


立ち上がろうとすると、乾いた血がべりっと剥がれる。


「痛っ……」

腹部と肩口、そして身体のどこかで骨が軋んでいた。


「この血の量……普通死ぬよな……」


『――見ているぞ』


不意に声が響く。周囲を見渡すが、誰もいない。


俺はリザードマンの亡骸を引きずり、ギルドへ向かった。



「きゃっ!」


血塗れの俺とリザードマンを見て、チップは短く悲鳴をあげた。


「お、お疲れ様。一人で行ったの?」


自分でも驚くほど、声がしゃがれていた。

「うん、死ぬかと思ったよ」


「こ、これ報酬。教会で傷を治してもらってね」


「ありがとう」


ポーテットに会う前に服を洗わないとな。


その前に、教会に行こう。


だが、近づくにつれ胸の奥がざわつく。

まるで――「行くな」と囁かれているかのように。


教会に辿り着き、ドアノブに手をかけた瞬間――


焼けた鉄を握ったような灼熱が走った。


「熱ッッ!!」


あまりの熱さで手を離し手の平を見ると赤黒く変色していた。


ちょうど礼拝帰りの人が出てきた隙に、ドアノブに触れず中へ入る。


教会なのに、祈りの気配がなかった。


背中に氷を差し込まれたような悪寒が走る。


「迷える子羊よ。今日はどのようなご要件で来ましたか?」


神父が優しく尋ねる。


「傷を治して欲しくて……」


「わかりました。それでは……」


神父が呪文を唱え、傷口に触れた。


次の瞬間――


「ぎゃああああ!!」


熱した鉛を流し込まれたような感覚。


俺の皮膚から、白い煙が立ち上った。


神父はまるで、触れてはいけないものに触れてしまったかのように。


「……あり得ない」


そう呟いて、俺を見た。


「……貴方の中には、神がいない」

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