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第1話:異世界転生

俺――じょうは、交通事故で死んだ。


 甲高いブレーキ音。


 やたらと眩しいヘッドライト。


 次の瞬間、全身を貫く衝撃。


 金属が潰れる音。骨が砕ける感覚。


 車は爆発炎上した。


 割れたフロントガラスに映ったのは炎に焼かれる自分の姿だった。


 皮膚が爛れていく。


 痛みはなかった。


 ただ、それを見ているだけだった


 思考が、ゆっくりと白く塗り潰されていく。


 ――ああ、これはもう、死んだな。

 妙に冷静な自分がいた。



 目を覚ましたとき、俺はどこにもいなかった。


 上も下もない。


 浮いているような感覚。


 世界は真っ暗で、音もない。


 その闇の奥で、赤黒い光が蠢いていた。


 ――何か、いる。


 それは生き物と呼べるものではなかった。


 巨大、いや、広大な肉の塊。


 ところどころに人間の腕や足、指が無秩序に生えている。


 ぬめりを帯びた表面から、無数の翼が虚空を掻き、

 その全身には、びっしりと目が張り付いていた。


 次の瞬間、その無数の目が一斉にこちらを向く。


 呻き声。赤子の泣き声。


 混ざり合った不快な音が、空間に響いた。


(神、なのか……?)


 そう思った瞬間だった。


『丈……丈よ……』


 声は耳ではなく、脳内に直接流れ込んできた。


 頭が割れるような、低く、重たい声。


『我は神の代弁者なり。汝が進む道を選べ』


「道……? 俺、死んだんじゃないのか?」


『人の魂には選択がある。

 消滅か、転生か。

 汝はどちらを選ぶ?』


 意味は理解できた。


 だが、簡単に答えられる問いじゃない。


 俺は少しだけ考え、そして言った。


「俺は……俺のまま、生きたい」


 一瞬、沈黙が落ちる。


『……叶えよう』


 感情のない声が、そう告げた。


 闇の中に一筋の光が生まれ、

 俺は光のトンネルに飲み込まれていった。



 次に目を開けたとき、視界に広がっていたのは、穏やかな風景だった。


 見知らぬ草原。


 聞いたことのない鳥の声。


 嗅いだことのない植物の香り。


 空は青い。だが、太陽は存在しない。

 それなのに世界は昼のように明るかった。


(……異世界?)


 立て看板が一本立っている。


『この先、村』


 見たことのない文字なのに、不思議と意味が分かった。


 俺はゆっくりと立ち上がり、村へ向かって歩き出す。


 ――まだ、このときは知らなかった。

 自分の姿が、すでに“人間”ではなくなっていることを。


 そして、この身体が、俺の運命を大きく狂わせることを。


 こうして、

 異形の俺の異世界人生が始まった。

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