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㉝悔恨

「うおおおお~っ!!!」

馬車を引く馬の気分である。

力勝負だ。和尚は、腰から生えたシルキング縄を引っ張って飛んだ。


目指すは、蛟の、もう一方の頭。

矢が刺さっていた眉間に縄を縛り付けて、それから延々と体内を通してきたのだ。


お終いを、その始まりと結びつける。

そうすれば、蛟の「輪っか」の出来上がりだ。


だが、とんでもなく重かった。

巨体を無理やり曲げているのだから、無理もない。


宙に浮かんだ頭が、遥か先に見える。


「はあああ~っ!」

双子の気合が、ユニゾンで聞こえてくる。

蛟の胴を斬り付け、力を削いで、和尚の助力をする作戦なのだ。


こっちも苦戦していた。


万里のクサナギで斬られても、蛟の胴には切れ目一つ入らない。


「どれだけ固いんだよ!」


しかし、どす黒い鱗には、くっきりと銀色の線が刻まれていた。

まるで落書きだ。何本も増えていく。


キエエエエッ……


「大丈夫、攻撃は効いていますよ、万里坊ちゃま!」

軍服スーツから、フォースが励ました。


千里の方は、神剣ヤマツミに度肝を抜かれていた。


7つの刃先すべてから、いきなり透明な光が(ほとばし)ったのだ。

7本の光は、縒り合わさって、剣の先で一本になっている。


「なにこれ?!」

とんだライトセーバー状態だ。

でも、どうしようもない。そのまま斬った。


キエエエエッ……


生えている鱗が、さあっとヤマツミの刃先を避けた。

斬った直線の通りに、蛟の体が凹む。

逃げた鱗は、端っこに寄って、ぼこぼこと窮屈そうに蠢いている。


「え? こ、これでいいの?」

「大丈夫ですよ、坊ちゃん! 効いてます。さあ、続けて。ファイト!」

甘い爺やみたいなシルキング×2である。


一方。ちさとは、もう一つの蛟の頭と激しくやり合い続けていた。


伊達に戦い慣れていない。

確実に逃げつつ、チャンスを捉えては、きっちりと攻撃している。

さらに、冷静に状況を把握していた。


「もうすぐ、輪っかになるわね」

感嘆に値する、和尚の馬鹿力だ。

当初の作戦とは違ってしまったが、これでなんとかするしかない。


ニゴちゃんが、ライダースーツから呑気なことを言った。

「なんだか浮き輪みたいよね。小っちゃい子供の、輪っかに動物の首がくっ付いてるやつよ」


「あら、ほんと」

見下ろして、ちさとも同意した。

それならば、巨大すぎる浮き輪だ。もはや、川幅をはみ出している。


「じゃ、行こっか、ちさと」

「オーケイ」

すべて分かり合った相棒同士は、それだけで通じる。


ちさとは、いきなり加速した。

蛟の頭が追って来る。逃がすつもりはないらしい。


すごいスピードで、ちさとは輪の中に突進した。輪を潜り抜けると、外側から急上昇する。


蛟も、まんまと付いてきた。

頭を振りたくり、顎をガチガチと鳴らす。

噛みついて砕く気まんまんだ。


怯える様子も無く、ちさとはターンした。

再び輪の中に突進すると、今度は反対の位置に出る。

そして、また上昇した。


「かかった!」

ニゴちゃんが叫ぶ。


完璧に思惑通り。

大蛇の長い首は、浮き輪に絡みついていた。

無限大∞の記号に似た形になっている。


ここで戻させたら、一巻の終わりだ。


「今よ、和尚! ()めて!」

「無茶言うよなあ~」

それでも、和尚は死力を尽くしてシルキング縄を引っ張った。

ゼロちゃんもだ。(かみしも)に浮かんだ目が、ぎゅっと瞑る。


きゅうううっ……


巾着袋を締めるみたいに、大蛇の輪が絞られた。

これでは、もう、元気な方の首も動けない。


「今よ! カイコンを嵌めて!」

ちさとが、双子に向かって言い放った。


千里と万里が、動いた。

さすが双子、反応も同時だ。

猛スピードで、蛟の顔に近づいていく。


白金(プラチナ)の勾玉は、白いネコ耳から外れていた。

左手に持って、赤い蛟の目に翳す。

二人揃って左利きだ。


全ての動きが、完璧に同じだった。

そして、二人の声が、揃った。


「「カイコン!」」



挿絵(By みてみん)

読んで頂き、有難うございます。

続きを、本日12:10に投稿致します。

どうぞ続けてご覧下さいませ!

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