⑬出会い
和尚と美女は、はっと見上げた。
巨大芋虫の尻尾が、上から襲ってくる!
キンッ
音と共に、光る線が胴体に走った。
どさり
尾っぽが斬り落とされた。大根を輪切りするくらい、あっさりと。
騙すために描かれた両目が、薄れて消える。
ほどなく、ちょん切られた尾は、すうっと地面に吸い込まれていった。
きええええっ……
だが、本体は健在だ。喚きながら、ぶつ切りにされた胴を振りたくっている。
「早いとこやって!」
少年が、地上の二人に言った。
まだ浮かんでいる。
必要があれば、さらに攻撃する気なのだ。
剣を手に、荒魂から目を離さない。
ほおお……
野次馬から、異なる色合いの感嘆が漏れた。
今度は、女性からの比率が高い。
なんと美しい少年だろう。
フランス人形にも負けていない。
剣を構えた姿は、武者人形を思わせる凛々しさだ。
だが、頭の上に付いた白猫の耳が、可愛らしさを添えてしまっている。
ネコ耳だ。
でも、ずいぶん幼い。
元の姿なのか、変化した姿か。
一瞬気を取られた和尚は、はっと我に返った。
そんなこと考えている場合じゃない。
「カイコン!」
暴れていた荒魂は、急に止まった。
ぱあん!
派手な音が鳴り響いた。
巨大な芋虫が、破裂したのだ。
初めて採掘の現場を見た者は、目を丸くした。
溢れんばかりの金貨が、辺り一面に降って来る。
エネルギーチップだ!
わあっと歓声が上がった。
ちらほらと、地面に落ちたチップを拾う者もいる。
警官が、拡声器で咎めた。
「あ~、拾わないで拾わないで。つつかれて危ないですよ」
「つつかれる?」
チップを手に顔を上げた中年男が、途端に顔を歪めた。
「う、うわあーっ……」
ばさばさばさ!
一体どこから集まって来たのだろう。
上空は、知らぬ間に黒いカラスで埋め尽くされていた。
次々、降り立っては、エネルギーチップを掴んで飛び立っていく。
ネコババしようとした女も、寄ってたかってつつかれて悲鳴を上げた。これはたまらない。
「やだ、なんなの、こいつらは」
「ヤタガラスだよ。ほら、足が三本あるだろ。こいつら、お上に使われてエネルギーチップを回収してるんだと」
八百屋の前掛けをした親父が、得意気に説明した。
「ほ~」
何人かから感心した目で見られて、親父は鼻を高くする。
以前、自分もつつかれたことがあるから知っているのだが、それは内緒だ。
女が諦めて手を離すと、ヤタガラスは攻撃を止めた。
真ん中の足で器用にエネルギーチップを掴むと、ばさばさ飛び去って行く。
迅速な仕事っぷりだ。
ものの数分で、ばら撒かれたチップは運び去られていた。黒い鳥の姿も、もう無い。
見世物は終わりだ。野次馬達も、ようやく散って行った。
「お~。坊ちゃんも、どうもありがとさん。助かった」
地上に降り立った少年に近づいて、和尚は礼を述べた。
至近距離で見ても、空恐ろしい美貌だ。
「坊ちゃん」で合ってるよな。
まあ男物を着ているから、間違いないだろう。
ズボンに共布のベスト、しゃれたタイ。
デパートで売っていてもおかしくない、上品なコーディネートだ。
時代遅れの裃を身に付けた自分とは、雲泥の差である。
ぺこりと会釈を返すと、少年は手に持った剣を胸元にあてた。
しゅっ
一瞬でシルキングに吸収される。反応も段違いだ。
「無事でよかった。あんなの喰らいたくないよね」
にこ、と笑う。
おっと。こいつの笑顔も傾国級だ。
「どうも有難う。私からもお礼を言うわ」
ちさとも微笑みかけた。
さっきよりも数倍艶やかだ。
「な~んか俺、すげえもん見てるなあ……」
二人を前に、思わず溜息をつく和尚だった。
超絶ハイレベルな美形対決だ。
「すみません。事後手続きをお願いします」
事務的な声が、割って入った。
「あ、そうだ。悪い悪い」
振り返ると、そこには「お役人」が翼を畳んで待っていた。
※AIイラストは順次追加中です。
とりあえずここまで。またしばらくしたら追加作業しま~す!




