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翌日、パトロンの一人が何人か連れて夜にアトリエに飲みに来てくれると言う。
風呂に入っておこうと村の温泉へ。サウナで面白い話を聞いた。アルミは90何%までリサイクル品で、アルミ缶集めは結構金になるという事。僕は損益ばかり出すこのアトリエを畳む決断をしていた。
夜にみんなを迎え、バイトあるからと少しだけ酒に口を付ける。みんな10年も良く助けてくれた。元カノや黒子ちゃんも。サウナのあの話を思い出していた。
まず僕は、資源ゴミに出していたアルミ缶をため込んだ。それから根気強くあちこち声を掛け、アルミ缶の回収を請け負った。目方勝負だから、一度に運べる様に足で潰した。もうストンピンガー、いや、ストンピンゲストだった。僕は角度や踏む強さとともにポジショニングや投げ入れかた、潰すbefore/afterの配置を研究し尽くして、秒速3個潰せる様になっていた。
ゴミ。
リサイクル。
性分に合っていた。
熱中できた。
それで、けっこう稼げる様になった。ときたま潰れてる缶もあって、有り難かった。
僕はその時気付いてなかった。夜の闇に紛れて僕が10個潰す間に一つ、ガンガンガン、3回くらい踏まれてようやく潰され差し出される缶があった事に。