黒子とLINE
何をするにも張り合いがなかった。居ない女を追ってもしょうがないと、新しいバイト先で何人かの好みの女性を目で追ったけど、黒い服を着た女性ばかり見ては背恰好が似てるとハッとして、なんだ、良く見りゃ違う、とガッカリしていた。
そんな数日を経て、バイトが空く土日、寂しさを紛らわそうと酒を飲みながら何気なくスマホの画面を眺めてるとLINEの通知が入った。
黒子が電話番号であなたを友達に登録しました
寝そべっていたのをパッと飛び起き、秒で黒子を友達登録。すぐにトークメッセージが入った。
黒子「やっほー元気ですかなの。お酒飲み過ぎてませんかなの」
僕「そちらこそ元気ですか?飲み過ぎています」
黒子「あの温泉デートでわたしたち二人で喋ってるとこ他のお客さんに見られちゃったから謹慎なの。しくじったなの」
僕「そうか、それなら仕方ないね。さみしいけど」
黒子「黒子は恋愛禁止なの。わたし楽しくて、ついなの」
僕「え?僕を、好きなの?」
黒子「それは言えないの。でも、心配なの。だからLINE黒子するなの」
僕「そうか。ほんとはずっと一緒に居たいけど、音沙汰なしよりはマシだ。お願いします」
黒子「手を出せないから口うるさいかもなの。よろしくなの!」
僕「ところであのバレーの試合、大活躍だったね」
黒子「へ?バレーって、何のことなの?」
(あれ?あれは本当に夢だったのかな。まあいーや。僕は確かに彼女がどんな球にも必死に食らいつく姿に感動したんだ。きっと彼女が僕の側に居た時、あんな風に懸命に僕を支えようとしてくれたに違いない。それを、僕は台無しにして…)そう思って、涙がこぼれた。
黒子「どうしたなの?」
僕「なんでもない。なんでもあっても、なんでもないんだ」
黒子「変なのなの。わたしいつ戻れるかわからないなの。謹慎が解けるまで忙しくて、お昼休みと夜遅くか早朝しかLINEできないなの」
僕「たまには僕から会いにはいけないの?」
黒子「また見つかったら、今度は謹慎じゃ済まないなの」
僕「そうか、仕方ないね」
黒子「とりあえず、お酒控えてなの!」
僕「わかったよ」
黒子「げんまんなの!」
僕「しつこいよ」
黒子「ごめんなの。でも心配なの。お昼休み終わるからもう行くなの。またねなの」
僕「うん、頑張って」
LINEを閉じながら、(僕も頑張るよ)と心の中で返信した。