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夏休み 0日目

 読む専でしたけどお話チックな夢を見たのでそこからテキトーにお話を膨らませて気まぐれにはじめて小説というものを書いてみます。

 つづけられるかはわかんない。


--------

 猛烈に()()()()がする。

 これは不安や心配からくるような不確かなものではない。確信だ。


 夏休み前、最後の登校日。空調が効いているとはいえ、窓から差し込む日差しがうだるように暑い。席替えのくじ引きで窓際最後尾という特等席を引いたものの、このような夏場ではちょっぴり損をした気になる。

 これで風鈴の一つでもあれば少しは気持ちも涼しくなりそうなものだが、聞こえてくるのはセミたちの大合唱と運動部の掛け声だけ。

 机に突っ伏したまま首を捻り窓の外に目を向けると、高校球児たちが揃いのユニフォームで爽やかな汗を流している様子が見える。

 ()()()()になってからスポーツなどはめっきりやらなくなってしまった。彼らのように熱心にスポーツに取り組むようなタチではなかったが、あのような未来もあったのだろうか。

「は゛あ゛ぁ゛ぁ゛~……」

 唸るように出したため息の声だが、自分の喉から漏れる声が高く澄んだ声であることがうかがえる。あれから明日でちょうど6年になるが、時間が経って慣れはすれど違和感がなくなるわけでもない。

 高校球児達から視線を移し、窓に映り込んだ自分の姿に目を向ける。

 ブロンドの髪、ブルーの瞳。純粋な日本人というにはだいぶ無理のある外見をした()()()()()は、眉間にシワを寄せて不愉快さを隠そうともしていない。

 自分の顔を眺めているのも嫌なので、再び机に突っ伏した。

 ()()()()がする日にはついつい考えてしまうのだ。

 今の身体のこと、昔の身体のこと、それによって変わってしまった将来のこと、家のこと、自分が得てしまった能力のこと……。解決しようのないモヤモヤが脳内をぐるぐるとめぐり、嫌な思考で埋め尽くされていく。

 顔を少し上げてスマホを覗き込むも、【なるはやでいくね~】というゆるい返事の後は続きの連絡がない。ぶっきらぼうに【はやく】とだけ催促の連絡を入れてまた深い溜め息をついた。


「……ん」

 窓から差し込む鋭い夕日に目をしかめる。

 どうやら待っている間に寝入ってしまったらしい。

 スマホを覗くと追加の連絡が入っていた。【校門ついたら電話するね~】とのことだが、まだ着信はない。

 ああ見えて真面目に仕事をしている人間なので、本当に忙しいのだろう。

 とはいえ最終下校時刻を過ぎて追い出されても困る。どうしたものかとしばし思案を巡らせていると教室の扉をガラリと引く音が聞こえた。

「あれー?葉月じゃん。まだ帰ってなかったのー?」

 声のした方に顔を向けると、黒髪のショートヘアに眼鏡を掛けた女子が扉の横に立っていた。

「んー……まぁ、ちょっと」

 俺の歯切れの悪い返答に彼女…田島響子は少し小首をかしげた。一瞬の思案の後に、口角をニヤリと吊り上げる。いかにも悪いことを思いついたよう。

「あ!まーたママさんにお迎えに来てもらうんでしょー!葉月ちゃん甘えんぼちゃんだからなぁー!」

「はぁぁ?!ちげぇし!……いや違くねぇけど!事情があるんだよ!」

「ふーん、事情ねー?ふーん?」

 わざとらしく顎に手を当ててニヤニヤとこちらを見つめる響子。

 彼女は俺の現在ほぼ唯一の友達と言っていい。今回のように人をからかってきたりとだいぶいい性格をしているが、色々目立つ俺を変な意味で特別視してきたりはしない。

 そこそこ長い付き合いなので悪意があってのことではないのはわかっているが、とはいえこのままからかわれ続けるのも少々癪なので話題をさっさと変えてしまうことにする。

「……俺はどうでもいいんだよ。響子は残って何してたんだ?」

「んー?あたしは部活。そろそろ3年生は引退だかんねー。レギュラーじゃないから特にやることないんだけどさ。今日も少し早く切り上げてきたし」

 そういって響子は片手に下げた袋からジャージをひらひらと取り出して見せた。

 そうか、もうそんな季節か。

 俺は部活には所属しておらず、付き合いのある人間も響子くらいなものなのでそのあたりの意識はまるっと抜けていた。

 部活に精を出す学生だとこの夏休みは特に忙しいのだろう。

「葉月ももったいないわよねー。あんた見た目は抜群に可愛いんだから、どっかの部活のマネージャーでもやったらモテたでしょーに」

「やだ。男とか興味ない。あと可愛いとか言うな」

「あ、女子のほうがよかった?うちの女子バレーかっこいい子も可愛い子もいるけどー?」

「そっちも……うーん……興味ない……のか?」

「なんで自信なさげなのよ……」

 響子は帰り支度を進めながら横目で苦笑いを向けてきた。

 改めて響子に問われて少し自信がなくなった。

 俺がこの身体(女の子)になってしまったのは6年ほど前、小学生の頃だ。

 そんな頃に男女のそういった気持ちの機微などは感じ取れるわけもなく、男女というものはただ2つに分けられているだけのもので、大きくなるとお父さんとお母さんになるんだという漠然とした区別でしかなかった。

 しかし高校生にもなればそのような教育も施され、色々と知識もついてくる。当然、この6年で俺の身体も女性として成長してきた。

 だが、根底に自分は男であったという認識がある。それが心の何処かで引っかかっている。

 この6年を女性として育ってしまったが故に、この年頃の男性が女性に対してどういった気持ちを抱くのかわからない。だが、自分は男であるという認識があるため女性として男性に接するのにも強い抵抗がある。とても中途半端だ、と自分でも思う。


「あんた昔から男の子っぽかったもんねー。服装も髪型も男の子っぽくて、喋り方も今とほとんどかわんないし。転校してきたときはどっか外国の王子様がやってきたんだって思ったもん。それが今やこんな美少女になるなんてねぇー。あたしも感慨深いわ」

「感慨って、何目線だよ……。あと美少女とか言うな」

 一人思考の深みにハマり唸っていると、響子はどうやら帰り支度を終えたようで俺の前の席に後ろ向きに座り込んできた。

 柔らかな笑みを浮かべて何やら昔を懐かしんでる様子である。

「そう言ってもねぇ……だってあんた学校で一番ラブレターもらってるでしょ?で、その場で破り捨てた後は無言で去ってドン引きさせるの」

「搦手で来ないで直接来い」

「直接告白に来られても即答するじゃないの。無理、興味ねーから。って」

「興味ないものを興味ないって言ってるだけの話だ」

「第一ね、葉月も悪いのよ?普段あたし以外とめったに喋らないからみんなあんたの見た目に騙されんのよ。いざ喋ったらそんな口調でバッサリだからどんどん誰も近寄らなくなるし。それでもクラスの外にはまだ現実を知らないで夢見てる男子がいるんだから、ほーんと可哀想よねー」

「知らん。勝手に夢見たほうが悪い」

 俺のうわべだけを見て勝手に俺という人間を想像して。想像した人間性から勝手に夢を見て。そして想像とのギャップが有ることを知ると勝手に去っていく。俺は、俺でしか無いのに。


 響子とのバカ話に興じていると、不意に悪寒が走る。

 背筋冷たいものを感じ、ヒィン――と強い耳鳴りのようなものが耳に響く。

 強く、猛烈に、()()()()

 重く迫りくるような圧を感じる。ぬるっと全身をなめるような重い空気が押し寄せてくる。出どころは、教室後ろの扉。

 見てはいけない、見なければいけない。相反する衝動がぶつかる。

 俺のただならぬ様子に響子が怪訝そうに俺の顔を覗き込む。

 響子の心配を他所に、ぎりぎりと音を立てるようにぎこちのない動きで、ゆっくりと首を扉に向けた。

 ――いた。何かが、いてしまった。

 黒く、もやもやとして、でもヒトガタで。

 ゆらゆらと揺れる黒い蜃気楼のようなナニカ。

 まともに顔なんて無いくせに、こっちを見ている。

 そう、見ていた。他と一線を画するほど黒く、黒く、黒く、黒く、黒い、どこまでも吸い込まれるような、完全な闇で塗りつぶされた2つの瞳で。

 耳鳴りが大きくなる。目を離せない。汗が吹き出る。

 びりびりとした耳鳴りが、次第に音の輪郭がはっきりしてくる。明瞭な音に、声に。すぐ、耳元で。

 「……ミ……ィ……つけ……タ……」

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 文章書くの難しいですね?

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