1-2. 闇の中の明かり
散らかった床を踏みつける靴音が聞こえ、彼女は顔を上げて、そちらを見やった。
さっきよりも一層見えにくくなった闇の中で、彼女の傍らに置かれているよりずっと小さな明かりを片手に、足下の障害を一歩一歩大股に、しかし何のためらいも示すことなく乗り越えながら、跳ねるようにして、明かりそして彼女の方に、少年が向かってくる。
――アリン! 何してたの!
――えへへ……見てよ。こんなにあったんだ。
少年は明かりを持っていない手、いや腕で胸に抱えていた物を、台の上に広げた。被覆された金属線が絡みつき、いくつもの端子の突き出た平たい箱や、たくさんの平たく背の低い突起が規則的に敷き詰められた細長い盤、片側の透明な面にたくさんの亀裂が走った板やらが積み上がる。
――あっちが、ためとく場所だったみたいでさ、まだまだいっぱいあったよ。
――そんなこと聞いてない! ここは、入っちゃだめだって言ったでしょ!
彼女が怒鳴ると、少年の得意げな笑顔が消えた。ぎょっとして、次に、苛立ちを露骨に表し始める。
――いいじゃん、ここなら誰も来てないんだから。いつまでもほったらかしにしたら、もったいないよ。
――誰も来ないのは、ここが危ないからなんだって。何度も言ったでしょ? ほら、行くよ。
彼女が明かりを手に取ってきびすを返すと、少年はむすっとしたまま、置かれていた明かりを持ち上げ、そして、自分の成果をまた抱えようとした。振り返った彼女がそれを見とがめ、怒気を露わにして言う。
――ダメ、置いてって。
――何でだよ!
――そんなの持ったまま歩いたら、危ないから。
――平気だって。せっかく僕が見つけたんだから、持ってく。
少年が、品物を台の上から一気に抱え上げる。次の言葉のために彼女が息を吸い込んで口を開いたとき、少年の腕の中から、一番上に乗っていた箱が滑り落ちた。それを落とすまいと、そして拾い上げようとした少年は、壁に向かってほとんど倒れ込むようになってしまい、慌てて品物を放り出して、壁に手をついた。だがその壁は、少年がぶつかった勢いのまま、横に滑って動いた。体を支えきれなかった少年はつんのめり、その壁が開いた向こう側に広がる暗闇に、投げ出されようとしていた。
――アリン!
彼女が叫びとともに腕を掴まなければ、いくら彼が立ち止まろうと力を込めたところで、手にしていた明かりの代わりに、彼自身がその暗闇に落ち込んでいただろう。
腕を引っ張られてかろうじて踏みとどまった少年の目の前で、明かりは闇の中を落下していき、その四角く、細長く、深々とした空間を照らし出していった末に、底にぶつかって砕け散った。遙か遠くで生じたけたたましい音が闇で満ちた穴を駆け上り、彼を通り過ぎていく。後には、完全な暗闇だけが彼の目に残った。
穴から引き戻されると、淡い光に照らされ、同時に濃い影の張り付いた、怒って、そして悲しげな彼女の顔が見え、誰のものとも知れない、荒い息づかいだけが聞こえていた。