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星持ちの少女は赤の秘剣で夢を断つ  作者: 小谷草
第1章 星持ち少女と学園生活
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第20話 闇魔法の短杖 ※ ???視点

「なんかすさまじい熱気になっているな。まあ、王国にとってこの上ない朗報には違いないからな。何せ四天王はおろか高位の闇魔にだって手も足も出ない状況が続いたんだから」

「まあそうだよね。アメリーっちのお姉さんが2度もナターナエルを倒したのに、それでも信じない人がいるくらいだったから。なんか、防戦一方だった戦況も変わりそうだよね」


 ニナ様とアーダ様がそんな会話をしていた。でも、これだけの戦果を挙げた姉は、ますます働かせられるのではないだろうか。普段は怠け者のあの人のことが心配になってしまった。


「戦況は変わるだろうね。聞いたかい? 今までは防戦一方だったけど、これからはあの島に攻め入ろうって話も出てきたんだ。闇魔たちが決して倒せない存在ではないと周知されつつあるらしい」


 そういうと、カトリンが面白がるような目で私たちを見回した。


「実は、闇魔を倒せるようになったのはアメリーのお姉さんたちだけではなくなるかもしれないんだ。南のほうでも新兵器が完成したらしいんだ。なんと、闇属性の魔法を使う短杖らしいんだ。それで闇魔の魔力障壁を削れるって売れこみなんだけど」


 カトリンの報告に驚いてしまう。闇の短杖ができたってのは朗報だけど、限られた人しか使えないのでは? たしか短杖って、使う人の資質が影響するって聞いたし。


「なんでも、その短杖はある程度の魔法の素養があれば闇の素質がなくても使えるらしいんだ。最も、威力は全然ないらしいく、一撃だけでは全然効果がないらしいんだけどね。でもあのバル家の魔法の中に重ね掛けができるものがあって、それを込めた短杖が期待されているんだよね。それはなんと、闇魔の魔力障壁を弱める効果があるらしいんだ」


 カトリンの説明に、ニナ様が身を乗り出した。


「考えてみてくれ。たくさんの兵士にそれを持たせて、一斉に魔力障壁を弱めたらどうなると思う? 魔力障壁さえ弱めれば、王国の一般の魔法使いだって、闇魔を討伐できるかもしれない。アメリーのお姉さんに頼らなくても、高位の闇魔を倒せるかもしれないだ」


 私たちはおどろいてカトリンを見つめた。カトリンはなぜか得意げになって鼻をすすった。


「闇の短杖はね、驚いたことに量産が可能らしいんだ。ギオマーの家なんか、今頃大変なんじゃないかな。あいつん家、魔道具を扱っているそうだし、南のほうから大量の短杖が配られているらしいからね。まあ、四天王のような強力な闇魔に効くかは未知数だけど、一般の闇魔なら、ねえ」


 カトリン様の説明に、アーダ様がごくりと喉を鳴らした。ニナ様は相変わらず大興奮だった。


「なんか、こっちに追い風が吹いてるよね! この調子だと、私たちが卒業するころには戦いが終わってるんじゃない?」

「う~ん。戦いが終わるかは微妙だけど、もしかしたら僕らが強制的に戦うことはないかもね。知ってる? 今、北に向かいたいって言う貴族が多いらしいんだよ。これまでは守るための戦いだったけど、うまくすれば領地をもらえるかもしれなくなったからね。広大なあの島で新たに領地を獲得できるかもって、各地の次男、三男がやる気になってるらしいよ。現金なものだよね」


 今までは防戦一方だったけど、もしあの島に攻め入ることになったら後継以外の王国貴族にとってまたとないチャンスだ。何しろ土地を得て、領主として自立できる目が出てきたのだから。闇魔が決して倒せない障壁ではなく、強大だけど私たちにも倒せる相手と知っていきり立つのもわかる気がする。


 正直、勝てると聞いて急にやる気になった人たちに思うことがないわけではないが、姉たちの負担軽減につながるのならあまり否定することではない。


 ニナ様とカトリンの会話に何となく思いをはせながら私は姉の安全に安堵の息を馳せたのだった。



??? 視点


「闇魔の四天王が打たれたらしいね。人間を滅ぼすための新種族と聞いて期待していたのに、あっさり倒されるなんて失望するばかりさ」

「そうですね。敗残者の集まりどもが、これでますます調子に乗ってしまうことでしょう。それも学園そを卒業していない小娘ごときに倒されるなんて、本当は大したことがないのかもしれません」


 側近のトリビオが吐き捨てた。彼も、王国を沸かせた朗報に、苦い思いを抱いているようだった。


「まあ、せいぜい喜んでいるといいさ。闇魔の四天王とやらもまだ半分はいるし、魔王も健在だ。それに、たとえ闇魔に勝利したとしても」

「あの計画がある。王国の敗残者どもの思うようにはいきませんよ」


 トリビオの言葉に、私はうなずいた。


 彼の言う通り、計画は順調だ。これがうまくいけば、王国の敗残者どもに大打撃を与えられるに違いないのだから。


「トリビオ。やるぞ。王国の敗残者どもに思い知らせてやろうではないか。だれが本当の支配者か、思い出させてやろう。王国の愚者どもが縋り付いてくるのを見れば、胸がすく思いがするではないか」


 にやりと笑う私に、トリビオがゆがんだ笑みを浮かべた。


 もう少しだ。もう少しで、王国を語る愚か者たちに目にものを見せてやれる。


 グラスに私の姿が浮かぶ。右側の目が金色で、左側が銀色に輝いている。水の精霊に祝福された証が、私の行動を肯定してくれているような気がしていた。


「もうすぐだ。もうすぐ、王国を名乗る敗残者どもからこの土地を奪い返すことができる。私たちの計画がうまくいけば、きっとな」


 私が振り返ると、トリビオが喉を鳴らして笑った。


 そう。計画は順調だ。敗残者どもの言う、北の戦況がどうなろうと、この地の支配者が変わることに違いがない。私は勝利を確信し、思わず頬を緩めるのだった。

これにて1章は終わりです。閲覧ありがとうございます。しばらく書き溜めに入ります。

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