ナンパ野郎はお呼びじゃありません
「えぇー、そんなの困りますぅ」
まったくその気もないのに、恥どらうフリをするステファニーちゃん。
男から見えない顔でドヤ顔するの、感じ悪いからやめなさいって。
まぁ、友人としてこういう状況になったらやることは一つよね。
「じゃあ、そう言う事で。
お幸せにね、ステファニーちゃん」
「またんかい、ゴルァ!」
快く見送ってあげたというのに、ステファニーちゃんはご不満な様子。
顔が戦闘部族になってましてよ、オホホホホ。
「おい、今、お前……」
般若化したのは一瞬だったが、どうやら素のステファニーちゃんを見てしまったらしい。
男はステファニーちゃんから手を離し、真っ青な顔で震えていた。
……ちっ、面白くない。
「もー、ドラちゃんったらぁ。
あたしたち、お友達でしょ?」
あの悪魔もはだしで逃げ出す顔を見られたというのに、シレッと猫をかぶりなおすステファニーちゃん。
さすが神経が図太いこと。
あまりにも堂々としているせいで、男の方も先ほどの鬼女の姿が何かの見間違いだと思ったらしい。
その顔にニヤ付いた笑みが戻る。
まぁ、猫のかぶり方がすごいからね。
幻を見たと勘違いするのも仕方がないわよね。
「友達っていうか、職場の上司と部下よね」
「ふん、友人だろうが職場の上司だろうが関係ないっ!
おとなしくその娘をこちらに差し出すがいい!」
「あ、どうぞー。
その子、ものすごい猫かぶりで昔はモヒカン頭に顔面ピアスいくつもつけてて、傭兵の間では鬼姫とか呼ばれるほどの猛者で、その辺のチンピラなら100人ぐらい一人で始末出来る子ですが、見ての通り見てくれだけはすごくいいので逆らわなければそれなりにいい思い出きると思いますよー。
少年趣味なので愛される可能性は万が一にもありませんけどね」
あたしのこの発言で、場の空気は精神的に5度ぐらい下がった。
「ドーラァァァァァ!
テメェ、何てこと言いやがる!!」
「えー、全部事実だしぃ」
それに、今日のステファニーちゃんはダーフィンにくっついてきたオマケなんだから、男性たちから距離を置かれても問題ないでしょ?
……なんて思っていたら、すかさず彼女からの反撃がきた。
「テメェこそ、女オークとか呼ばれていてチンピラ100人どころか一人で街一つ砂場に還す人間兵器だろうが!
しかも料理は黒魔術の儀式と同レベルで、ヤンデレ気味の激烈にヤパいストーカーが1000人以上くっついているくせに!
青の悪魔や蛇蝎竜の想い人が、いまさら婚活なんて社会の迷惑極まりねぇんだよっ!」
その瞬間、あたしたちの周囲からズザザザザッと音を立てて周囲の人間の足が後ろに下がる。
ちょっと、ステファニーちゃん、お前何てことしやがる!!
さっき声をかけてきた男も、どさくさに紛れて距離を取ろうとしていた。
だが、そんな事は許さない。
「どこに行こうというのかしら?」
彼の両肩を、あたしとステファニーちゃんの手が同時につかむ。
その瞬間、いい年こいた男の目から希望の光が消えた。
「……助けて」
その場にいる人間すべてが目を背ける。
いや、例外が一人。
例の怪しい金髪女だけが、腹を抱えて必死に笑いをこらえていた。
おのれステファニーちゃん、よくまあたしに恥をかかせてくれたわね?
お前が先にやったからだろうって?
そんなの知ったことではないわよ!
だが、この展開に納得がゆかないのは向こうも同じだったらしい。
「おぅ、ドーラ。
こうなったら勝負だ。
負けたほうが謝れ。
それも、土下座じゃ足りねぇな。
五体投地だ」
五体投地は、ひざまずいた上に体を地面に投げ出すという、土下座を超える最上級の謝罪だ。
そこまで求めるか、この女?
だが、ここで引き下がるわけにはゆかない。
「いいじゃない。
でも、勝負の内容はどうするのよ。
アタシたちがガチで喧嘩したら、地形が変わるわよ?」
むしろ土砂災害で一般人やこのあたりの管理者にもで迷惑がかかる。
さすがのあたしも、そこは気にするのだ。
下手をすれば、うちのパパにも迷惑かけちゃうしね。
「じゃあ……ここからハイキングの目的地まで、どちらが早くたどり着くか競争でどうだ?」
「いいわね、それで行きましょう。
せいぜい五体投地のイメージトレーラングでもしておくことね」
だが、そこに口を挟む者がいた。
「その勝負、あたくしも参加させてもらってよろしいかしら?」
声をかけてきたのは、例の金髪女である。
特に何かを企んでいるようではないので、たたの暇つぶしだろうか?
「なんだテメェ?
気安くアタイらにかかわると怪我じゃすまないよ」
「大丈夫なんじゃない?
ただ者ではなさそうだし。
参加したいって言うならさせてあげればいいじゃない」
そう告げると、ステファニーちゃんは怪訝な顔をみせた。
問題の金髪女はかなり細身で、スタイルはいいが鍛えた感じはしない。
かと言って、プラーナの使い手という感じでもなかった。
よほど隠すのが上手ければ別だが、プラーナを使う者には呼吸のやり方に独特の癖があるのだ。
しかし、この女には何か切り札があるのだろう。
……面白い。
せっかくだからその手札、見せてもらうとしましょうか。
「でも、あたしたちの流儀はかなり荒っぽいわよ?
分かっているわよね?」
「ええ、もちろん。
あぁ、そういう場まだ名乗ってませんでしたわよね。
私、ミランダと申しますの」




