⑥管理された命
彼女、魔亜似は、幼いころ両親を亡くしていた。
両親は莫大な資産や土地を所有していた。その財産は一旦マーニーが相続することになったが
遠縁にあたる叔父が、後見人となって財産の管理をしている。
「そのおじさんってのがね、なんか人間がちっちゃくて、ヤなんだなあ……」
例えば親戚のお祝いや香典は関係がどうであろうが全て一律1万円で済ませてしまうとか、
自分一人の時は最高級の寿司を食べているらしいくせに、親戚と行く時は並寿司で済ませるとか、そういう事らしい。
「ちっちゃい頃はあんまりわかんなかったけどね、そういうのが見えてくると、そういえば茹でた海老しか寿司ネタで食べたことなかったなあ
とかね。なんか人の器みたいなものが透けて見えてきて、虚しくなってきちゃうんだよね」
しばらくはその親戚の家に預かられていたマーニーだったが、中学校位から今の海辺の屋敷に一人で住まわされるようになる。
「まあ優しい家政婦さんもいるしね。スーパーコンピュータ並の設備もあるんで、何不自由はないんだけどね」
そう言ってマーニーは寂しそうに笑った。
「そのうちに病気が見つかって、まあ親戚連中はワタシの死ぬのを待ってるってことだよな」
聞いているオレまで思わずウーンとため息を漏らす。
「自由なようで自由では無いってことっすね」
「なんかなあ、真綿で結界を張られてらような、そんな感じかな」
いつリセットの話を切り出そうか迷っていると
「おじさん、ああ麻生さんだっけ、どうなの? いまの生活に満足してんの?」
「ああ、いやまあオレも人に言えないような複雑な境遇なんっすけどね」
ここは正直な気持ち。
「そうだなあ、人それぞれあるよね。でさあ、ワタシはなにをたくらんでると思う?」
「はあ? なんですか?」
「ウチのスパコン超優秀でさ、音声入力で聞くと大国の国家機密クラスのことまで調べてくれんだよね」
「それはすごい」
「でね、ワタシが死んだ後に指令が発動するようにしておいて、世界のあらゆるシステムがガタガタになる様にしておくことなんかもできちゃうわけよ」
オレはビビって背筋が凍った。
「え、そんなことやるんすか」
「いやあ、そんな事も考えてるってこと。まあ実際にやろうとしたら、スパコンに『やめんしゃい』とか言われんだろうけどね」
は、『やめんしゃい』??
「マーニーさん、そのスパコンはなんて名前なんです?」
「ああ、名前は無いんだけど、なんか最初にテストで音声入力した人が博多弁だったらしくて、ずっと博多弁なんだよね」
んんー? 博多弁!?