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③忘れたままでいいっすよ

あれから一年が経っていた。


例の3人は姿を見せなかった。



やはりあれは夢の中の出来事だったのだろうと思うことにした。



実はあれから、仕事もプライベートも急に良い方向に回るようになってきていた。




あの後、団体専門支店の峯島さんから、『休眠顧客』のリストをまわしてもらった。


その中で、中規模の文房具店の周年行事のハワイ旅行にぶち当たり、一気にその年の自分の予算を達成してしまった。


さすが峯島さんはただの変態ではなかった。



そして、そのハワイ添乗が縁で、同じ支店の一歳年上の彼女と付き合い始めることになってしまった。


女の子と付き合うのは、大学時代、可愛いが気の強い子に三つ股だか四つ股だかをかけられて、最後こっぴどくフラれて以来だった。



団体をゲットした中堅文房具屋『コクサン』は総員200人余りを4班に分けて出発する。1グループ50人に2名の添乗員が付く。


自分は1班と3班の添乗を担当し、一年先輩の女性社員が同行してくれた。



夕方の19:00から21:00くらいまでの成田発の便で、ハワイのホノルルには『その日』の午前中に着く。


空港からはバスで、ウエルカムセンターで滞在中のご案内をした後、ホテルへチェックインしていただく。



先輩女性社員の敦子あつこさんに、ホテルに先乗りして部屋割りをしてもらっている間に、自分はお客様とバスで説明に立ち会う。


海外では、夫婦やカップルにはだいたいダブルベットの部屋があてがわれるが、


敦子さんは、カップルが景色の良い部屋になるようになどいろいろ考えすぎて、


お客様が全部入室してしまった後に、男性二人の部屋にダブルをご案内してしまうというミスを犯してしまった。



お客様に平謝りした後、他のお客様に部屋を替わっていただく訳にもいかないので、添乗員用の部屋の一つを供出することになり


図らずも敦子さんと同じ部屋に泊らざるを得なくなってしまった。



「わたしのミスだしね、いいよ同室で。全然気にしないからww」


「いやこっちは気になって眠れないっすよ」



ハワイでは、現地ランドオペレーターの女性が絶大な権力を持っていて、新米の添乗員は舐められる。


最初に挨拶して仁義を切っておかないと、オプショナルツアーのオペレーションもおぼつかない。


ハワイのオプショナルツアーではダイヤモンドヘッドやサンセットクルーズの他に、本物の銃が撃てる射撃なども地味に人気がある。



宿泊のモアナサーフライダーホテルは、海辺のカフェでバイキングの朝食が人気。


但し、全員で同時に席を離れることが無いようにとくれぐれも言っていたにも関わらず


女性4人グループが、一通り食事を取ってきて、それをおいたままでフルーツを全員で取りにいってしまったため


戻った時には料理がきれいさっぱり無くなってしまっていて、目を丸くしていた。



カモメに全て食われてしまったのだ。まあどうして席を離れてはいけないかまでは言わないところが、楽しい思い出つくりのサプライズの一つだ。



オプションのサンセットクルーズに同行してかくし芸で盛り上げ、疲れ切って部屋に戻ると敦子さんが


「さあ、これからは二人でたのしみましょうか♡」


とニッコリと笑いかけてきた。



あとはご想像にお任せする。




春の異動で、功績が認められてリーダーに任命された。一般の会社なら係長クラスだ。


これもすべて峯島さんのおかげだと思う。


また例の『せいすい』を飲み交わさなければならないかな。



そんなこんなで忙しく過ごしていた矢先、


また彼らが現れる。



バスの1泊旅行の帰り、『釣りバカ日誌』を流しお客さんのほとんどが眠りこけている中


いきなり窓の外に、見覚えのある二人と一体が出現して、オレは肝を冷やした。



「やあやあ、待たせてごめんね。時間の流れの換算を間違っちゃってね!」


「え、あの~……」


「えらい申し訳なく思うったい」


「いや、忘れたままでよかったんですけど!」



今かよ! 今来るかね!!

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