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②なぜ、オレなんすか

「あのー、何とお呼びすれば?」



ストップモーションの様に停まった世界のままで、オレは少々間の抜けた質問をした。



「ああ? ワタシ? 久美(くみ)だけど、クーミンでいいよ」



ラジオ英語会話か日米外交の様だな。



「こっちのガタイのいいのはミノタウロスと人間のハーフ。ミノちゃんって呼んで」


「FINAL ANSWER?」



(このギャグのための要員かよ、だいたいミノタウロス自体が元々牛頭人身だろっ!)



「こっちの浮いてる機械は博多出身の…… 名前つけてないんであれクサでいいや」


「アンタクサ!!」



(突っ込みようがないな。要するにクーミンさん以外はギャグ要員というわけか)



「で、これどういう状況なんっすかね」


「それじゃ、麻生(あそう)さん。説明しよう」



あ、オレの名前はやっぱり知ってんのね。



「ワタシたちはね、人間が死ぬ前に見る走馬灯のような存在と思われているんだけど、手っ取り早く言えばね、


ほら、よく芸能人で変死したり、行方不明になったり時々あるでしょ


ワタシたちはね、そんな風にまだ普通に考えれば寿命がある人たちから残りの命や身体そのものをいただく契約をして


そのひとたちは別の次元にフッ飛ばして別な運命を生きてもらうという商売をしているもんです。


ファイナルリセッターと呼んで下さいな」


「ふぁいなる・りしぇったーバイ」



しばらくの間呆然とクーミンさんの説明の意味を考えていた。



「あの、じゃあオレ死んだって事っすか?」


「このままだと、そういうことになるねえ」


「自分、有名人とかじゃないっすけど。なんでオレなんっすか?」



クーミンさんは苦笑してかぶりを振った。



「いやいや有名人だとネットで話題になるだけで、一般の人でそういうことになってる人はたくさんいるよ。


同業者もいるしね。ひどい奴は無理やり寿命も奪っていく奴らもいるらしいしな」


「そんとーりバイ」



あれクサの博多弁がウザい。ミノさんはあまりしゃべらないし。


まだ言ってることがよく分からないところもあるが、なにか選択を迫られてるらしい。



「で、オレはどうすればいいんっすか?」


「まあ、このまま命を落とすのか、ワタシと契約して次の運命を選ぶかだな」


「次の運命ってどんな運命ですか」


「そりゃあ行ってみなきゃわからんし、何になるかも運次第だあね」



やはり不毛の選択のようだ。



「あの、オレは何か選ばれたってことっすかね」


「うーん、選ばれたっちゅうか、実はアンタのパソコンのセキュリティがあんまり甘々だったんで、潜り込んでいろいろ情報取らせてもらってたんだわ」



それでパソコンの画面に変なのが映ってたのか!



「忠告だけど、就業中に野球サイトやうまぴょいやエロサイト見てたら、ワタシたちは兎も角、ライバル業者にも情報全部抜かれちゃうからね」



中学生みたいな女の子にあらためて言われると恥ずかしいものだ。



「そ、それでいつまでに決めれば……」


「ちょっとアンタ状況分かってる? そんないつまでもこの場面を止めとくわけにもいかないでしょ」


「いかんバイ」



ああ、あれクサウザイ。



「あの、第三の選択とかはないんっすかね」


「なに第三って? そんなの無いよ」


「例えば、その…… オレをあなた方の仲間にしていただくとか?」


「ドラクエのスライムかよ!」



クーミンさんは苦笑して。



「あんたなかなか面白い人だね、仲間になりたいなんて言った人初めてだよ」


「面白かー」



いや、咄嗟に考えた時間稼ぎかも。



「うん、何となく気に入りました。それじゃこういうのはどう?


いまから一週間だけ猶予をあげるから、それまでに ①次の運命を生きるか ②ワタシ達の仲間になるか③このまま死ぬか決めてよ」


「クーミン、それはいけん」



あれクサが口を挟んだ。



「どうしてだ?」


「気まぐれで物事ばしゅるとろくなこつが無か」


「ちょっとクーミンさん。この機械壊して黙らしていいっすか?」


「いや、まあまあ。面白そうだからいいじゃん。じゃ麻生(あそう)さん一週間後にね。念のためこの事を人に言ったらその瞬間にアンタを消すからね。まあ言っても誰も信用しないだろうけどさ」



そう言うと、クーミンさん達は空間の中の洗面所の排水溝の渦の様なものに消えて行く。


「じゃ、まったねえー!」


「ふたたび会えるこつば楽しみにしとーとよ」


「FINAL ANSWER?」



ミノさんはアレしか喋れないのかな?


三人というか、二人と一体が消えると、いつの間にか電車は通り過ぎていて、線路沿いの空きスペースに課長と自分はいた。


本部課長は相変わらず大きないびきをかいている。



「あれは、夢だったんかなあ…」



仕方なく、100kgを超えようかという本部課長の巨体をなんとかおぶって、電車の敷地の外に出た。

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