⑱ふざけるな!
「なに、なんだって麻生快! 今さら何言ってんだ、ふざけんな!」
「Final answer?」
「しぇからしかぁぁあ!」
クーミンに、辞めたいと相談すると、一斉に非難された。
「あ、ミノさん身体戻ったんですね、よかったですね」
「ああそうだ、いま他の言葉もしゃべれるように訓練してる…… ってそっちじゃねえよ!!」
話を変えようと思ったが、さすがに無理か。
クーミンが言うには、契約も交わさないで生まれ変わりも死ぬこともなく、オレみたいに中途半端な状態でいること自体が異例中の異例なのだそうだ。
「これで元の生活に戻ろうなんざ、絶対次元の歪みを引き起こすぞ。麻生快一人の話じゃすまなくなるぜ」
「そうなると、どうなる」
「知らんのか? すべての世界の終わりが来る」
いやコブラかよ!
あれクサのシミュレーションでは、もしオレがふぁいなるりせったーずを辞めると、オレと敦子さんとふぁいなるりせったーずを含めた関連の世界がいっぺんに消し飛ぶ可能性があるという。
「だからさ、麻生快。辞めることは諦めろ。元も子も無くなるぞ」
「それじゃあ、彼女にこのことを、今のオレの状況を話すこともダメっすかね」
「それじゃ、彼女だけ消えることになるかも知れんぞ」
「う~~~~~ん」
八方塞がり、という訳か。
「麻生快さあ、いまでも彼女に会えてんだろ? まあ二重生活みたいで苦しいのは分かるけど、お前が言いだした道だろ」
「うん、そうなんすよね」
「彼女をこのままにしておきたかったら、黙っているしかないだろ」
今の二重生活がこのまま続くという保証はない。クーミンたちの仲間であれば、そのうちに現世とはおさらばとなる可能性の方が高いだろう。
「わかったな、麻生快。何とか彼女を納得させろ。いやむしろ今のうち別れてしまった方が彼女の傷は少ないかもしれないが」
「簡単に、いわんといて下さいよ」
オレは、怒りを押し殺して無表情になり、かなりの圧をクーミンたちにかけたらしい。
「あ、ああそうだな。この件は麻生快に任せるしかないが」