⑯蓑田王
「ウヘヘヘヘ、クーミンちゃん。久しぶり、ダ、ヨーーーン」
蓑田王が現れた。
「え、本人がこんなところに?」
「あれはどうせホログラムか替え玉かなんかだろう。替え玉にしたら、北〇鮮のやつよりは似てるな」
「何をブツブツ、言ってるん、ダ、ヨ―――――ン」
しかしあれクサよりイラッとする喋り方だな。
「あの喋り方も替え玉だからっすか?」
「いや、前もあんな感じだった」
ウザ!
「蓑田王! ダメもとで言うけど、もうあんたには金輪際かかわらないから、ミノさんの体だけ返してもらうってのはダメ?」
「何を言うんだヨーーン、君みたいなあまちゃんと取引なんて、こっちのステイタスが下がるだけなんだヨヨヨーーーん!」
あまちゃんって何だ?
「ところで、そっちのキミは、誰なんだヨヨーーン?」
「あ、オレっすか?」
クーミンが目配せをした。
「麻生快、言ってやれよ、そのミネシマさんだかとの絡みの話を」
「え、ああ。いいんすか?」
蓑田王は少しじれてきて
「何グズグズしてんダヨヨーン、ザコが!ザコザコざあああーコ!」
「? 蓑田王って語彙おかしくないっすか?」
「言ってやれよ、麻生快」
オレはちょっと息を吸って、軽く止めた。
「あのー、ルシファーの……」
言いかけた瞬間に、蓑田王の両耳から黄土色の腐った液が溢れ出した。
「ぎいやァァァァーー! 何をするんダ!よよよよよーーん!!」
「あ、あの人急にどうしたんすか?」
「明らかに麻生快の攻撃が効いてるんだろ」
「攻撃? これがっすか?」
蓑田王は両耳を押さえて苦しみながら
「うお、うおおのれえええ、ダ、ヨーン!! さっきはいきなりで不覚をとったが、何がルシファーだ、発音が違うんだヨオオーーン!」
「え、『ルシファー』じゃないんすか?」
「違うな麻生快、正確には……」
「クーミン、止めるんだよおおん」
「るしふぁあ、だ」
「ぎぃやァァァァヨヨヨーん!」
蓑田王の頭が真っ二つに裂けた。
「おおおまえわああ、一体何だ、あのお方とどういう関係だというのだヨーーーホホン」
語尾が情けなくなってる。
「ああ、あのお世話になった先輩が、その『るしふぁあ』さんと契約してるらしくて……」
「ぎぃやァァァァヨヨヨヨォォォん!!!!」
(# ゜Д゜)すどぅぅぅぅぅーーーン!!
大轟音と共に、三人は迷宮ごとすっ飛ばされた。
ξ ξ ξ
「よし、麻生快、ほんじゃ1分30秒後にあの搭まで走るぞ」
「あ、いやいやクーミンさすがに違うでしょう。あれ? 迷宮どころか城も城壁も全てきれいに消し飛んでますね」
「ああ、まあうまく行ったな。これで採取したDNAでミノさんの体を再生しよう」
「それは、良かったっす」
「それにしても、麻生快、契約の話まで出したのはチョットままずかったかもな」
「え、そおすか?」
クーミンは口では微笑みながら、先の不安を見据える様な目をしていた。