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大魔王様、勇者の従者になる!  作者: ronron
女神の祠編
67/304

67 稼げる通路①

 勇者一行こと、チーム『ゼッ〇ン』は『女神のほこら』へとやって来た。祠はラーゴル村から東へ直ぐの、岩山を少し上った場所にあって。入り口は石積みの小さな建物であった。


 ロビンの左腕には真新しいガントレットが光っていた。新しい防具の完成を待って、満を持してやって来たのであった。


 祠へ入って行く彼らと入れ違うように、祠の中から五人組のチームが出て来た。中の一人が包帯を頭に巻いていて、仲間の肩を借りて出て来たのであった。

 包帯は血がにじんで真っ赤になっていた。


 彼らは冒険者には見えず、金を稼ぐ為にどこか遠い場所からやって来た、傭兵崩れと言った雰囲気であった。祠の地下一階層から地下五階層までは、彼らのように金を稼ぐだけが目的の者や、強くなることが目的の冒険者や傭兵などが多く活動している。


 「今の野郎、酷い怪我だったな」


 ハールデンが、肩を借りて去って行く者を見送って鼻に皺を寄せた。

 いくら頑張って稼いでいても、大怪我をしてしまえば動けなくなって、治療費で稼ぎが飛んでしまうのである。

 又、祠では命を落とす危険も常に付きまとっている。


 「《光球》!」


 先頭の賢治が補助魔法を唱え、一行は祠の中へ入った。『女神の祠』の通路の天井には、光る魔石が多く埋まっていて松明は必要無いが、《光球》を使用した方が遥かに明るいのである。


 ハールデンが先頭を進む賢治に声を掛ける。


 「おい、ケンジ! 道案内は大丈夫なんだろうな」


 「任しておいて下さい。地下一階層から、地下六階層へ降りる階段までの地図は手に入れました。そこまでの祠の内部は、ほとんど探索され尽くしていますから」


 「そうか……地図は金で買ったのだろうが、俺が買えと頼んだ訳じゃないからな」


 「分かっています」


 賢治の返事に笑顔でうなづいたハールデンは、続けて。


 「ところで、試練の間がある地下六階層の、東西南北の通路はどうやって突破するんだ。前にお前は考えがあるって言ってたよな」


 「大丈夫です。任せておいて下さい」


 賢治は自信満々であった。





 勇者一行が祠に入る少し前、『蒼天』のメンバー五人が祠へと入って行った。彼らにとって祠で最後の稼ぎをする為に、やって来たのである。

 これが終われば村を出て、良い武器、防具がある町へ行って、装備の充実を図る予定である。


 「ガイスさんは太っ腹だな。取って置きの稼ぎ場を教えてくれるなんて、俺たちに餞別をくれたのかも知れないな」


 ストイメンの顔がほころんだ。

 彼は身体が大きくてタンクの為、大きな盾を装備していて、背中には彼の鎧と、チームの全財産が入ったリュックを背負っている。


 チーム『栄光』のガイスが、彼ら五人がラーゴル村を去る前にと、秘密にしていた稼げる通路を教えてくれたのであった。その通路は地下五階層にあるそうである。


 「これも俺がガイスさんと、良い関係を保って来たからなんだから、俺をもっと褒めてくれよ」


 リーダーのマットが得意げに言う。


 「確かにな。お前はお節介だからな。この前もガイスさんと新人の大男とが、一触即発の場面で間に割って入ったそうだからな……流石にタンクの俺でも躊躇するぜ」


 ストイメンが首をすくめる。彼とマットはチームで最年長の二十八歳なので、言うことに遠慮はない。


 「まあな。俺も実は恐ろしかったぜ。相手は初めて見た奴だったが、天井に頭が届きそうな大男だったな。顔もビビっちまうくらい怖かったなあ、歳はガイスさんとあまり変わらない、三十五歳くらいだったと思うぜ」


 (……ハールデンは二十二歳である)


 「でもよ、ほっといてもガイスさんなら、大男をやっつけちまったんじゃねえのか」


 横から話に入って来たのは、マットと同じ戦士で、チームで攻撃役のハルである。彼とマットは片手剣を下げて、肩に盾を担いでいる。


 「そうだな。でも、相手は腕が立ちそうな上に五人いたからな(賢治も人数に入っている)、流石のガイスさんも、ちょっと引き気味だったなあ」


 「ふうん……」


 二人の話をさえぎって、紅一点のジェーンが手を叩いた。


 「はいはい! その話はそれくらいにしておいて、祠に入ったんだから集中して行きましょう! 最後の最後で怪我なんかしてたら馬鹿らしいでしょ」


 ジェーンに指摘されて、四人は舌を出して首を引っ込めた。


 「ペテロ! 遊んでないで先に行って斥候してよ!」


 「ジェーン、まだ一階層なんだぜ!」


 弓を握った最年少のペテロが驚いた顔になる。


 「それが油断なのよ! 最後なんだから気を引き締めて行くわよ」


 「へいへい!」


 万歳したペテロが先に走って行った。

 その後ろ姿を見ながら、ジェーンは思うのであった。


 (何か胸騒ぎがする……本当は探索を中止したいくらいなんだけれど……)


 眉をひそめるジェーンであった。





 「聞いた通り、この通路には魔物はいないみたいだな」


 周囲に気を配りながら、ハルが小声でささやく。

 地下五階層に降りて来て、ガイスから聞いた通りに通路を歩いて来たのであった。普段の彼らの探索は、地下四階層までである。


 「間違ってねえだろうな」


 「大丈夫だ」


 リーダーのマットが頭上を指差して言った。ガイスからは「その通路は天井の光る魔石が、奥に行くほど無くなっている」と教えられていて、確かに天井の光る魔石が少なくなって来て、辺りは暗くなって来ている。

 当然ながら明かり用の松明たいまつは持って来ていた。


 天井には、かつて魔石が埋まっていたらしい穴が空いていて、わざと誰かが魔石を外したようであった。

 光る魔石はどこでも取れて安いので、わざわざ金の為に盗む者など居ないはずである。


 通路の先の闇の中から、斥候のペテロが帰って来た。


 「どうだった」


 ペテロは首を横に振ると。


 「奥は真っ暗だぜ。魔物はいないと聞いてるが、念のために明かりは点けなかった。……もう、ここからは松明を使った方が良いと思うぜ」


 「では、そうしよう」


 攻撃役のマットとハル以外の者が、松明に火を灯した。ストイメンはリュックを降ろすと。


 「魔物がいないなら必要は無いが、俺は念の為に上半身だけでも鎧を装備しておくぜ」


 魔物はいないと聞いているが、万が一のこともある。何かあった場合は、彼が前面で敵の攻撃を引き受けなければならない。

 ストイメンはリュックから鎧を取り出し、上半身だけ装備した。全て着込むと守備に不安は無くなるが、動きづらく咄嗟の行動がとれないのである。


 「行くぜ」


 再び歩き始めた。

 しばらく行くと通路は右に九十度曲がり、その先は長い直線のようで通路の先は闇の中に消えている。


 「本当に、こんな通路にお宝があるんだろうか?」


 マット以外の誰もが思い始めた疑問を、ペテロが口にした。


 「ガイスさんが嘘を教える訳が無いだろ。ひょっとすると通路を間違えたのかも知れないな」


 嫌な顔をしてマットが首を振る。


 その時、どこかで小さく「フッ」と息を吐くような小さな音が聞こえた。

 再び、「フッ」と音がする。


 「何だ? ん?……前からだ! 音は前の方から聞こえたぞ!」


 音が聞こえたのは、前方の闇の中からであると気が付いたマットは、警告の叫びを上げた。


 「うっ」


 何かの攻撃を受けたのか、タンク役のストイメンと回復役のジェーンが崩れるように倒れ、二人の持っていた松明が床に転がった。


 「どうした!」


 二人に近寄ろうとしたマットであったが、同時に前方から飛んで来た何かを防ぐ為に盾を前に出した。盾には何か軽い物が当たった音がした。

 見ると突き刺さっていたのは吹き矢であった。


 「チッ!」


 先ほど聞こえた音は、吹き矢を吹く音だったのである。彼は盾に刺さった吹き矢を抜いて匂いを嗅いだ。

 思った通り、矢には何か塗られていたようである。マットは毒では無く、シビレ薬の匂いであると感じた。


 「ハル! 盾を前に俺の横へ来い! ペテロ! 俺たちの後方へ隠れろ!」


 吹き矢にやられていない二人に声を掛け、倒れている二人の前に出て、これ以上攻撃されないように壁を作った。

 ペテロがマットとハルに隠れて、倒れている二人の様子を確認した。


 「大丈夫だ、普通に息をしていて呼吸の乱れも無い。シビレ薬か眠り薬のたぐいを撃ち込まれたみたいだ」


 マットが想像した通りであった。


 「ペテロ! 持ってる松明に全部火を点けろ! そして前に一本ずつ投げるんだ。投げては二人を引きずって後退しろ。俺とハルは盾で皆を防御しながら一緒に後退する。天井に光る魔石がある場所まで下がるんだ!」


 闇の中から吹き矢を打たれては分が悪い。松明を前に投げて後退して行けば、追って来る相手がいても、明かりの中に出て来なければならなくなる。

 吹き矢に毒が塗って無かったのは幸いである。相手には自分たちを殺害する意思は無いようだと判断した。


 「まかしとけ!」


 細身のペテロに、体格の良いストイメンを引きずるのは大変であろうが、今はそれしか方法がない。

 ペテロは松明を取り出し火を点け始めた。


 「畜生! いったい誰だ、こんなことをする奴は!」


 怒りの言葉を口にしながら、火を点けた松明を持って立ち上がったペテロは、前方に投げようと振りかぶったのであったが、当然ながら腰を落としている盾役の二人より、身体が上に出ることになる。


 「シュッ! シュッ!」


 前方の闇の中から、風を切る音と共に、何かが高速で飛んで来た。


 「ドン! ドン!」


 二つ音がして、衝撃を受けたペテロは自分の胸を見た。そこには二本の氷の槍が突き立っていた。

 氷系初級魔法の《氷槍》である。


 「嘘……だろ」


 目を見開き、自分の身に起きたことが信じられない様子であった。先に倒れた二人は眠らされただけであり、相手が殺しに掛かって来るとは想像もしていなかったのである。

 ペテロだけでなく、マットもハルも同じ様に思っていて、完全に油断していた。


 「ドン! ドン!」


 更に二本の氷の槍が胸に突き刺さり、大きく目を見開いたままのペテロは、仰向けに倒れて動かなくなった。

 目を見開いて絶命したペテロの口と鼻から、鮮血が溢れてきて通路の床へ落ちた。


 「ペ! ペテロー!」


 マットの叫び声が、暗い通路に木霊こだました。

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