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大魔王様、勇者の従者になる!  作者: ronron
北の遺跡編
18/304

18 遺跡の戦い

 「私の出番がないじゃ無いか……どうしてくれるんだよ」


 先ほどからメリッサの悪態が止まらない。

 北の遺跡は建物を移動する度に魔物が出現したが、ハールデンとジェームズがあっさり片付けてしまい。メリッサの出番が無いのである。


 「仕方ねえだろ。魔物が出て来るのは広くも無い部屋の中ばかりなんだ。あんな部屋の中で範囲魔法を使われたら、こっちにも被害が出ちまうじゃねえか」


 ハールデンの指摘も、最もである。しかしメリッサの鬱憤は膨らむばかりである。


 再び建物の外に出て、空中に架かった橋のような通路を通って次の建物に入った。今回の建物の構造は、広い吹き抜けの円形の部屋になっていた。


 「ここなら私の魔法が使えそうだね……」


 メリッサが期待を込めて言ったが、ハールデンは首を振った。


 「おめえの魔法の威力は半端ねえからな……相手を見て使ってくれよな」


 「五月蠅うるさいねえ」


 そんな会話をしながら、一行は部屋の反対側に見える扉を目指して歩いて行った。ちょうど部屋の中央辺りに差し掛かった時に、突然、吹き抜けの高い部分の、周囲の壁にいくつもの穴が空いた。

 そして部屋の中央に集まった勇者一行を囲むように、穴からは魔物が飛び降りて来た。


 周囲を囲んだのは、白い毛に覆われた猿に似た魔物であった。立ち上がった背の高さは一メートル五十センチほどである。数は約ニ十匹。


 《ゴウッ! ゴウッ!》


 白猿は威嚇の叫びを上げながら一行の周囲を回り始めた。


 「噛まれたらしびれるので気を付けて下さいね」


 焦った風でも無く、いつもの調子で賢治が魔物の特徴を告げた。


 「ホントにお前は物知りだが、調子の変わらねえ奴だな」


 ハールデンが白猿から目を離さずに皮肉を言った。


 「獲物は、半分は私が頂くからね」


 そんなやり取りを無視したメリッサが舌なめずりをしている。


 「オイオイ! メリッサ! 俺たちは周囲を囲まれてるんだぜ、部屋の半分を火の海なり、氷の山にでもされたら、身動きが取れなくなるじゃねえか」


 「だから! あんたは五月蠅いんだよ! 魔法を使うなんて言っていないじゃ無いか」


 メリッサは腰に丸めて装備していた鞭をほどいて手に持った。


 「さあ! こっちから行くよ!」


 「行くよ!」の、「よ!」を言い終わらない内に、メリッサの鞭はうねって飛び、反応することが出来なかった正面の白猿の顔面を叩いた。


 「ギャン!」


 短い悲鳴と共に白猿は壁際まで吹き飛んだ。鞭先がめり込んだ魔物の額は割れて、両眼が飛び出ている。


 しなった鞭は一瞬でメリッサの元に返って来て、その反動を利用した鞭が再び隣りの白猿を襲った。

 飛んで逃げようとした白猿であったが、鞭の先は飛び退いた白猿の足にからみ付き、引き倒した。


 「ガーッ!」


 足を取られて威嚇する白猿であったが、メリッサは構わず手首のスナップで鞭にうねりを起こすと、うねりは波のように鞭を伝って白猿の足に届いた。


 「バギィン!」


 凄まじい音と共に白猿の足はいびつに曲がり、悲鳴も上げずに魔物は悶絶した。


 「はあぁ……良い音だねぇ~」


 満足げにつぶやいたメリッサは、長い舌で己の唇を舐め回す。鞭は彼女の性癖にちょうど合った武器のようである。


 「や、やるじゃねえか」


 無惨なメリッサの鞭技に、引き気味に漏らしたハールデンはジェームに視線を移すと。


 「旦那! 俺たちも行くぜ!」


 「心得た!」


 二人同時に白猿へ向かって、飛び込んで行ったのであった。





 遺跡の最奥部の部屋では、現在、遺跡を任されているリムザルグと言う名の一つ目の魔物が、四つ足の角のある狼に似た魔物から報告を受けていた。


 《全滅だと……》


 《はい。リムザルグさま》


 《たかが人間五名に、何と言うていたらくだ。恥さらしめ……私がジャマール様に叱責されるでは無いか!》


 《申し訳ございません》


 狼の姿の魔物は委縮して身体を小さくした。


 《それで、人間はどこまで来たのだ》


 《我々一族が守護する部屋まで、もう間もなくやってまいります》


 《まさか、お前たちまで倒されることは無いな》


 《もちろんでございます。八つ裂きにして御覧に入れます》


 リムザルグはうなづいた。


 《行け!》


 小さく頭を下げた狼の魔物は部屋を出て行った。


 《人間五名にここまで侵入されるとは》


 リムザルグは、ハッとした顔になると。


 《もしや、勇者一行か》


 つぶやいたのであった。





 《八つ裂きにして御覧に入れます》


 リムザルグにそのように宣言した狼に似た魔物であったが、彼らの守護する部屋のそこらに転がっているのは、仲間の死骸であった。


 彼らの一族の長である彼も、手足の骨を一本ずつ折られ、首には鞭が巻き付いている。


 「ほら! どうした! 最後の力を振り絞りな! 頑張れ! 頑張れ!」


 激痛で立っていることも辛い彼を激励しているのは、鞭の反対側を持つ黒いドレスの人間の女であった。

 彼女の後方では、額に皺を寄せ、険しい表情の彼女の仲間が、腕を組んで無言で成り行きを観察している。


 「おい! メリッサ! もうその辺で良いだろう。さっさと止めを刺せよ」


 ついに見かねたハールデンが声を掛けた。


 「前半戦はあんたらも楽しんだじゃ無いか。私も楽しませてもらうのは当然の権利だろ」


 「……別に、楽しんでた訳じゃねえし」


 ハールデンは本気で言ったのだが、メリッサには通じない。彼女の思考は、殺すイコール楽しむである。


 《グゴゴォー!》


 狼の魔物は最後の力を振り絞って、折れていない足に力を込めた。


 《ガアッー!》


 激痛が走る身体を意地で動かし宙へ飛んだ。


 「ほらね。やればできるじゃ無いか」


 歓喜の表情で、生徒をめる先生のように告げたメリッサは、手首を捻って鞭に波を送った。


 「ゴキン!」


 首を背の方に向け、狼に似た魔物は、最後の悲鳴も上げられずに床に落ちたのであった。





 「ギギィーッ」


 軋む音を上げながら、扉がゆっくりと内側に開いた。最奥部の部屋へ入って来たのは勇者一行である。


 広い最奥部の部屋の周囲の壁は、床から天井まで続く、細長いガラスの窓が幾つも並んでいて、明るく荘厳な雰囲気をかもし出していた。


 部屋の中央には座る者のいない椅子が置かれていて、脇にある台には水晶が置かれ、その前方にはローブを着た魔物が立っていた。

 一つ目のその魔物は、部屋に入って来た一行を睨みつけた。


 《驚いたぞ。よくぞこの部屋まで辿り着いた》


 かすれた声であるが、はっきりと人間の言葉を発した。


 「話が出来る魔物か……そう言う魔物は手強いらしいな。お前が遺跡の親玉か」


 ハールデンが手甲を構えて確認した。手甲の鉤爪は外されていて、代わりに先の尖ったキリのような金具が嵌められている。手甲の先は状況や戦い方によって、交換できるようになっているようだ。


 「遺跡の親玉か」と尋ねられた魔物は。


 《我が名はリムザルグ》


 質問には答えずに、名を名乗った。


 「最奥の部屋に居るんだから親玉で間違いないな……うん?……親玉には羽根が生えてるんじゃ無かったかな……まあ、水晶もあるようだし、良いか」


 ハールデンとジェームズが、ずいと前に出る。

 リムザルグは微動もせずに二人を凝視している。


 「おいケンジ! 念のために聞くが、この魔物の特徴を知ってるか?」


 油断なく魔物から視線を動かさずにハールデンが尋ねた。


 「一つ目で目玉の大きい魔物は、たいてい魔法を使います。攻撃魔法の場合もありますが、このタイプなら、麻痺とか石化とか遅延とか、デハブ系かな……」


 己の技を言い当てられたリムザルグは、二人の前衛の後方に立つ、ケンジと呼ばれた人間を観察した。

 ……ケンジとは、名前が不気味な人間である。彼ら魔物の伝説の大魔王と同じ名であったからである。


 「行くぜ!」


 掛け声と共にハールデンとジェームズが飛び出した。魔物の魔法を警戒して左右に分かれて床を転がり、視線を躱して左右から飛び掛かったのであった。


 《!》


 リムザルグは、人間の戦闘を職業とする者と戦ったことは何度もあった。傭兵・戦士・武闘家・レンジャー等。それらをことごとく倒していて、人間には絶対に負ける訳が無いと確信していたのであるが、目の前にいる二人の人間は、今まで戦ったどの人間よりも素早く力強く、何よりも戦いに慣れていた。


 どちらか片方の人間を狙えば、残った片方に致命傷を受けることになる。一瞬の迷いはリムザルグの動きを止め、ハールデンの先の尖った手甲が巨大な目玉に突き刺さり、ジェームズの剣が腹を裂いたのであった。


 《グワッグワッ》


 血を吐いて後ずさるリムザルグの額に、メリッサの容赦ない鞭の先がめり込むと、魔物は仰向けに倒れて動かなくなったのであった。


 ハールデンが魔物に近づき生死を確認した。


 「ロビン! 来い、虫の息だがまだ生きてるぞ」


 ロビンが駆け寄り片手剣を抜いた。勇者は強い魔物に止めを差すと力(経験値)を得る特性がある。

 痙攣しているリムザルグに、剣を向けたロビンであったが、目を閉じて顔をそむけた。


 「どうしたロビン! 躊躇ってるんじゃねえ! お前は人の為に強くならなきゃならねえんだろ」


 「ごめんなさい」


 一言謝罪をすると、ロビンはリムザルグの喉に片手剣を突き入れたのであった。



 賢治はその様子を離れた場所で見ていた。名も知らなかった魔物が倒されたからと言って、特に感慨は無いが、勇者ロビンが魔王を僭称する魔物を倒せるのは、まだまだ先のことになるであろうと思えたのであった。

なぜか地図の検索が、『アメブロ daimaoukenji』で出来ません。

前の小説は『アメブロ bangania』で、今も出来るんですがね。なぜでしょう?


URLなら検索できるので、載せておきます。地図を見ながら想像してくださいね、

『https://ameblo.jp/daimaoukenji』です。よろしくお願いします。

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