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大魔王様、勇者の従者になる!  作者: ronron
魔王討伐編Ⅰ
130/304

130 抜け道

 勇者ジェロームは、ハールデンが予想した通り、帝国軍から指定されている上級宿『天風亭』に居た。


 彼の部屋に通されると、部屋には爽やかな目をした均整の取れた体格のジェロームと、仲間であるらしい、こちらも体格の良い男が一人いた。

 ジェロームは年齢は三十代の半ばであろうか。もう一人も同じくらいの歳に見える。


 「初めまして、ロビンと言います」


 右手を差し出した。


 「会えて嬉しいよロビン。俺がジェロームだ。こちらは副リーダーのエリオットだ」


 ロビンがやって来ることは、既に『百年砦』の方から報告が行っていたらしい。二人は握手を交わした。


 「こちらは僕の従兄で、仲間でもある武闘家のハールデンです」


 「こ、これは凄いな……いや、強そうだ」


 ジェロームとエリオットはハールデンの巨大な体格と、何よりも凶悪とも言える顔に戸惑いながら握手を交わした。


 「強そう……じゃ無くて、俺は確実に強いぞ」


 愛想笑いを浮かべたハールデンであるが、凶悪な顔で口角を上げれば、飛び掛かって来る寸前の肉食獣に見える。


 「ま、まあ座ってくれ」


 ジェロームは迫力に圧倒されながら、二人に椅子を勧めた。

 四人が椅子に座るとジェロームから話し掛けて来た。


 「俺は教会から勇者に認定されて二十年目になる。君は一番新しい勇者で、去年認定された勇者だね」


 「はい。良くご存知ですね」


 「各地にある教会に寄れば、最新の各地の魔王の動向や、勇者の活躍が知れるからね」


 ロビンはここへ来る前に、各地で様々な活躍をしていたが、そのほとんどで名前を知られないようにしていた。当然ながら教会にも知らせていない。


 「オウッ! ロビンの活躍が出てないって言うのか? 馬鹿にするならこっちにも考えがあるぜ」


 「兄さん!」


 喧嘩腰で身を乗り出したハールデンをロビンが止めた。


 「とんでもない」


 ジェロームは両手を広げた。

 

 「彼は自分の活躍をひけらかしたり、自慢するようなタイプじゃないことは、一目で分かりますよ。きっと今までに、間違いなく大勢の人々を救って来たはずだ」


 一目でロビンを見抜いたジェロームに、驚いたハールデンは声も出ない。


 良く見れは、ジェームズの瞳もロビンと同じようにキラキラと輝いている。この歳で、これほど綺麗な目をしている人間に出会ったことが無かった。


 (やっぱり勇者ってえのは病気だな……幾つになっても『お人好しの正直者』が治らねえんだな)


 変な感心をしてしまうハールデンである。そして、そう思った途端に、ロビンや仲間のジェームズに共通する、親近感さえ感じたのであった。


 「ところで」


 ロビンが話を変える。


 「『百年砦』の司令官である、グーラッド大隊長から聞いたのですが、ついに魔王グルビシュを倒す為の作戦を実行されるとか……グーラッドさんからは、作戦の詳細はジェロームさんから聞くように言われました」


 ジェロームはうなづいた。


 「作戦の詳細を説明するよ」


 「ジェローム!」


 成り行きを黙って聞いていた、エリオットが話に割って入った。


 「勇者ロビン! 悪いがこの作戦は、我々が六年間、命懸けで情報を集めて立てた作戦だ。おいそれと部外者に教える訳にはいかない」


 (まあ、そうだろうな)と、怒ることなくハールデンも納得したのであったが。


 「いや、エリオット。ロビンは作戦を聞いたからと言って、我々を出し抜こうとするなどしないと断言するよ。むしろ別の視点からアドバイスをくれるだろうし……」


 言葉を切ったジェロームは、真剣な目でロビンを見た。


 「俺たちが失敗して全滅した時に、次に挑む彼らが、改善点を見つけられるかも知れないじゃ無いか」


 彼は笑みを浮かべた。


 ジェロームにはロビンと同じく、功名心は無かった。

 彼は勇者らしく、人々が安心して暮らせる世の中を、実現したいと心の底から願っているのである。


 (やっぱり勇者って奴は、お人好しの正直モンしかいねえんだな)


 心の中でハールデンはつぶやいたのであるが。


 (偉いな……勇者とは、人間ながら素晴らしい者だな)


 部屋の片隅で、誰にも知られずに話を聞いているカノンは感心した。彼は強大な力を持つ魔物にもかかわらず、人間に強い興味を抱いているのである。





 ジェロームは話し始める。


 「過去に魔王の城へ乗り込むことに成功したものの、帰って来なかった勇者のチームは、バーンズ帝国軍の力を借りながらも、連戦に次ぐ連戦で、魔王との決戦の前には、少なからず疲れた状態であったと推測する」


 ロビンとハールデンに交互に視線を向けた。

 反応したハールデンが。


 「魔王ってえのは最強の魔物だ……どうせ戦うのなら、こっちも万全の状態で戦いてえ……ってことだろ?」


 うなづいたジェロームを見て、ハールデンは自分の推理が当たっていたと感じた。


 彼は『百年砦』から帰って来た時、居酒屋でジェームズとメリッサの前で、ジェロームの作戦は、直接、魔王の元へ到達する作戦では無いかと、話していたのである。


 「俺たちは六年間、帝国軍に加わって戦いながら、魔物の目を盗んで、城の近くの廃墟を探ったのさ……魔王の居る場所は城跡なんだ。城であれば、必ずいくつかの『抜け道』があるんじゃないかと思ってな」


 (そうか)とロビンは思う。

 勇者アシュトーンと共に、魔物の占拠する砦を奪還した時も、同じく秘密の通路を通って、親玉の魔物の元へ辿り着いたのであった。


 「そして、俺たちは廃墟の中でついに見つけたのさ。魔王の部屋へ辿り着ける、秘密の通路の地図をな……それは長い年月を、奇跡の様に朽ち果てずに残っていた地図だった」


 ジェロームはエリオットにうなづいて見せると、エリオットは『百年砦』の北方の拡大地図を、机の上で開いた。


 「ここが『百年砦』。ここが魔王グルビシュの城。そして……魔王の城の東に、リグネ峡谷がある」


 次々とジェロームが指をさす。


 「このリグネ峡谷にある洞窟から、迷路のようになったトンネルを潜って行くと、魔王の部屋の近くへ出ることが出来るんだ。俺たちが発見した地図で、迷路を迷わずに進むことが出来る」


 破顔したジェロームは。


 「万全な状態で戦えば、俺たちのチームは魔王にも勝てる自信がある」


 横に立ってるエリオットに視線を移し。


 「エリオットは槍の達人だ。他のメンバーは、戦斧使い。大盾使い。魔法使い。そして俺はレンジャーと忍者の技術を持っている。みんなこれまで鍛錬を続けて来て、腕は一級品だと自負している。……ロビン! 必ず魔王を倒してみせるぞ!」


 力強く宣言するジェロームの手を、目を輝かしてロビンは握った。


 「素晴らしいです。魔王討伐成功を祈っております」


 「ああ、ありがとう」


 ジェロームのチームは多彩な能力を持った者が多いようである。違う能力を持つ者が多いほど、相手に合わせて臨機応変に戦うことが可能である。


 中でも大盾使いとは、身体が完全に隠れるほどの巨大な盾で、壁となって仲間を守る職業である。背には後方の者が手を伸ばせる届く高さに、回復薬や毒消しなどの瓶を差していて、時には防御だけでなく盾ごと相手にぶつかって行ったり、振り回して盾の角で敵を吹き飛ばす場合もある。


 「数日後にバーンズ帝国軍が、陣を組んで平原に出陣する。魔物軍もこれに合わせて出て来るはずだ。そうなれば周辺の警戒も緩くなる」


 ロビンはうなづく。


 「俺たちは別動隊として、軍の警護隊百名と共に、まずは北東の三日月湖を目指し、三日月湖沿いに北のリグネ峡谷へ入る予定だ……片道の行程は三日。洞窟の通路は一日と少しほど掛かるはずだ」


 当然ながら勇者一行が通る森には、魔王軍とは関係ない魔物も潜んでいて、進むのも命懸けのはずである。この間を、軍の警護隊が勇者一行を守るのである。


 「ロビン! 俺たちのチームは相手の出方によって戦い方を変えられるチームだ。君のチームはどんなチームなんだ」


 笑みを浮かべたロビンは、ハールデンを見上げた。


 「僕たちのチームは、正面から相手を粉砕するチームです。今さら戦法を変えることはできません」


 「悪くないチームだ。結局、それが一番強いかも知れないな……もし……」


 言葉を切ると。


 「多彩な攻撃を得意とする俺たちが破れたなら、魔王を倒せるのは君たちのような、シンプルに強いチームかも知れない。その時は頼んだぞ」


 「縁起の悪いことを言わないで下さい。ジェロームさんたちの、討伐成功の報告を待っています」


 再び二人は、固く握手をするのであった。





 ジェロームと別れたロビンとハールデンは、『天風亭』の別室へ入った。まだジェームズらは来ていないようである。


 「ロビンよう」


 椅子に座ったハールデンが声を掛けて来た。


 「はい」


 「ジェロームの野郎が、良い奴ってことは分かったぜ、お前と同じ目をしているからな」


 人を褒めないハールデンが、ここまで言うのは異例である。


 「今回ばかりは、奴に手柄を取られちまうかも知れねえなあ」


 残念そうに、小さく頭を振ったのであった。


今夜は時間があったので更新できました。


塩辛とアサリの酒蒸しは最高ですね!


↑は、削除する予定です。

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