第七話 この、笑顔のために。
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m(*._.)m
〜 ユーフェミア王国 ケイルーンの町 〜
俺達は町の北部、娼館が集う一角の上空に居た。
まあ娼館とは言っても、それほど大きくない町の物だ。
連れ込み宿とでも言った方がしっくりくる建物の密集地、ってだけだけどな。
目的の建物は……
あれだな。
分かり易く入口に2人番人が居て、道行く人達は大回りに避けて通っている。
「タマモ、あれで間違い無いか?」
「はい。情報では、構成員は凡そ15名程です。」
「クレイよ、どう攻めるのじゃ?」
ウズメにそう訊かれるも、別に難しいことは考えちゃいない。
「正面から、速攻戦だ。向かって来る奴には容赦しない。逃げる奴は捕まえる。モーラのお姉ちゃんと、他にも捕まってる人が居れば救ける。片付いたら証拠探し。それだけだ。」
俺の返答に、タマモは頷きを返し、ウズメは肩を竦める。
「即ケリを着ける。騒ぎがデカくなる前に撤収するぞ。」
2人の反応を確認して、俺はすぐに降下する。
「よう、眠っとけ。」
突如空から降り立った俺達に反応もできないまま、見張りの2人の男達は魔法で眠りに落ちる。
「ウズメ!行け!」
俺の声に弾かれるように、ウズメが扉をぶち破り、タマモと共に建物内に踏み込む。
俺達の突然のカチコミに、建物内で思い思いに過ごしていた男達が浮き足立つ。
「あんだてめぇらあぶらっ!?」
真っ先に詰め寄ってきた男をウズメが殴り飛ばし、吹き飛ぶ男の身体に巻き込まれ、テーブルや椅子が砕け散る。
「てめぇこのやろうぶおあっ!!?」
タマモは魔力を使うのも億劫なのか、閉じた鉄扇で飛び掛かって来た男が薙ぎ払われ、頭から壁に突っ込んでその上半身が埋まる。
「てめぇらこんなことしてタダでえぶしっ!!??」
俺は、尚も掴み掛かって来る男の頭を床にめり込ませて、感知スキルを使って建物内を精査する。
建物の奥に2つ、纏まった人数の反応。
その内の右側の反応には動きが無く、綺麗に1列に4つ並んでいる。
もう片方の左側は小さな反応がひとつと、その正面にふたつ。
ひとつが小さな反応に近付いている。
「ウズメは此処を制圧。タマモは奥に入って右の部屋を!俺は左だ!」
指示を飛ばして駆け出す。
後ろについて来るタマモの気配と、暴れているウズメの気配を確認しつつ、俺は廊下の奥の角を左に曲がって部屋の扉に突っ込んで行く。
足蹴にして吹き飛んだ扉に何か余計な異物感もあったが、そんな物は気にせずに奥の反応に顔を向ける。
「居たな、モーラの姉ちゃん!救けに――――」
上げた声が思わず止まる。
そこには、ズボンを下ろして女の子の髪を掴み上げている男が居た。
「おい、そこのゴリラ野郎。モーラの姉ちゃんに何してやがんだ?」
間に合った安堵も束の間で、俺の口からは男への怒りの声が滲み出る。
「な、なんなんだ、てめぇは!!??俺らに襲撃なんぞしやがって、どういうつもりだこらっ!?」
なんか喚き出した男の手は、未だ少女の髪を掴んだまま。
それどころか、更に力を込めて引っ張り、少女の顔に苦痛と恐怖が浮かぶ。
自分でもハッキリ自覚できるほど、カァッと頭に血が昇る。
「うるっせぇ!!その子に酷ぇことしやがって、兄ちゃんにも怪我させやがって……生きて此処から出られると思うなよこのクソ野郎があああっ!!!」
少女の髪を掴んでいる方の腕を結界で包み、肘の上で分割する。
それと同時に、血が少女に掛からないように、分割した結界には即座に蓋をする。
「へ……?あ?ああっ!?お、俺のうでええあああっ!!??」
地面にその身体が倒れる前に少女を結界で包み込み、念動で牢の鉄格子をぶち破りながら引き寄せる。
男は片腕を失い、その片腕は結界に包まれているために溢れた血に浸っている。
「よ、よせっ!やめっ、やめてくれっ!ちょっと魔が差しただけなんだよ!!?」
よく言うわ。
ズボンまで下ろして、汚ねえモンぶらさげて、犯す気満々だったんじゃねえか。
結界でも触れたくねぇな……
風魔法を発動し、イメージを固め、放つ。
円を形作った風の刃が、複雑な軌道でただ一箇所に飛び、斬り飛ばす。
【風の円月刃】とでも名付けるかな。
複数放てば、割と回避しづらそうだ。
回転してるから斬れ味も良さそうだし。
「あ、あぎいやああああああっ!!??おれの!おれの〇〇〇があああああっ!!??」
残った片手で血塗れの股間を抑え、情けなく両膝を床に落とす男。
更にその目の前で、床に落ちた汚い肉塊を火魔法で消し炭にしてやる。
汚物は消毒って、世紀末に誰か言ってたからな。
最初は怒りに目の前が真っ赤だった俺だが、泣き喚く男を観ていたら、だんだんと頭が冷えてきた。
そして、あることを思い付く。
「おい、ゲス野郎。お前、殺されたくねぇのか?」
血が流れ過ぎて顔色が悪くなった、未だに喚いている男に一言、訊ねる。
「じ、じにだぐねぇよぉ……!だずげでぐれぇっ!!」
顔を涙でグシャグシャにして、鼻水も垂らしながら男はそう答える。
「なら、俺の命令に従え。そうすりゃ、腕だけは治してやる。」
汚物は治してやらねぇけどな。
てめぇはこの先一生、オネェとして生きろ。
「し、しだがいますっ!!なんでも言うこときぎまずがらあ!!」
よし。
俺は男に睡眠魔法をかなり強く掛け、意識を奪う。
腕は……くっつけて上級ポーション使えばなんとかなるな。
切断面はキレイだし、時間も経ってないし。
アッチの方は、下級ポーションで傷だけ塞いで……と。
……これ、尿道まで塞がってないよな?
血が着くのも触るのも嫌だったから、全て念動で行いました。
さて、タマモ達と合流して、一旦帰ろう。
〜 ケイルーンの町 東の外れ 孤児達の小屋 〜
「よっ……結界解除っと。」
俺は救けたモーラのお姉ちゃんと、捕まっていた女性達を連れて、孤児達の小屋まで戻って来た。
ついでに生き残ってた犯罪者共も。
生き残りが行方を眩ませれば、仲間割れとでも勘違いして時間が稼げるかもだしね。
モーラのお姉ちゃんの名前は【エリザ】といい、兎の獣人の女の子だった。
うん、白くて長い耳が垂れてて、可愛いです。
ロップイヤーなのかな?
エリザを俺が抱え、ウズメをタマモがぶら下げ、女性達と犯罪者共は眠らせてから結界輸送だ。
タマモとウズメ、両名から文句を言われたが、気にしないでおいた。
結構な高度を飛んで来たから、人目にも着かなかったと思う。
エリザが空を飛んではしゃいでいたのは、可愛かったなぁ。
おっと。
良い顔のハイライトを思い出すのは後にして、先ずは子供達に会わせて安心させてやらないとな。
結界を解いたテントにエリザを連れて入る。
「みんな!どうして眠ってるの!?」
エリザが寝ている孤児達のを見て、慌てている。
「エリザを待ってる間不安な気持ちにならないように、魔法で眠ってもらってたんだよ。今起こしてやるからな。」
安心するように言ってから、子供達に掛けた睡眠魔法を解除する。
元々眠ってたし、すぐに全員起きるわけじゃなさそうだ。
それでも2人ほど微かな声を上げて、ひょっこりと起きた。
「ふぁ〜あ……あ、エリザ姉ちゃんだぁ!おはよー!」
「姉ちゃんおかえり〜!」
そんな声が年少の子達から上がると、その声に気付いたのかみんな起き始める。
「みんな、ただいま。良い子にしてた?」
エリザには、自身が拐かしに遭ったことは子供達には言わないよう言い含めてある。
事情を知るのは、まだ目覚めていない彼女の兄――【ラッカ】だけだ。
その兄が怪我をした事を知っているモーラにだけ、伝えることにした。
余計な心配を掛けて、態々不安にさせることもないしね。
「ラッカ兄さん……怪我、してない……?」
「ああ、それも俺が治したよ。まだ起きないのは多分、ただでさえ疲れてたところを、回復に体力を奪われちゃったからだろ。じきに目を覚ますさ。」
ラッカの無事な姿を見て、エリザの目に涙が浮かぶ。
俺はそんな彼女の頭を、ポンポンと撫でてやる。
他のチビッ子達はタマモの尻尾にじゃれたり、ウズメに高く持ち上げられたりして遊んでいる。
そんな様子を微笑ましく観ていると、ラッカの隣で眠っていたモーラが目を覚ました。
「ふぁ……?あたし、ねちゃったの?あれ?クレイお兄ちゃん……?」
「おう。良く寝てたなモーラ。おはよう。エリザお姉ちゃんが帰って来たぞ?」
「モーラ、ただいま!」
エリザがモーラに飛び付いて抱き締める。
はは!
モーラのヤツ、目をパチクリさせて混乱してるわ。
「お、お姉ちゃん?……だ、だいじょぶ……なの?」
「うん、アタシは大丈夫よ。クレイさんが、救けてくれたから。」
困惑顔で俺を窺うモーラに、俺はしっかりと頷きを返してやる。
「そっかぁ!よかったの!!」
ようやく安心出来たのか、モーラの顔にも笑顔が戻った。
うんうん。
これで家族が揃ったな。
俺は、ラッカが起きたら呼ぶように頼んでおいてから、タマモとウズメにその場は任せて、テントから出る。
次は、捕まっていた女性達だな。
未だに結界の中で眠り続けている女性達4人を、新たに取り出したテントの中に全員移してやる。
これから起こすのに、地べたの上じゃ可哀想だし。
そうして、肌着のような衣服しか着ていない彼女達に、大きなタオルを巻いて身体を隠してやってから、睡眠魔法を解除する。
「ん……ここは……」
「あなたは……さっきの……?」
「ああ。みんな、おはようさん。気分はどうだ?」
一応は、タマモに救い出されてから俺とも会っているため、変に警戒とかはされずに済んだ。
特には身体に異変も無いようなので、まずは胸を撫で下ろす。
俺は、此処が町の外れの孤児達の住まいであること、人攫い達を懲らしめたこと、みんなに眠ってもらって此処まで運んで来たことを説明し、納得してもらえたところで本題に入る。
「みんなには、身寄りは在るかな?在るなら、俺が責任持って送ってやる。もし行く宛も無いようなら、俺の住んでる新しい街に連れてってあげるよ。どう?」
訊ねた俺に、4人はそれぞれ答えてくれる。
その中で身寄りが在るのは、3人だった。
まず身寄りの無い女性は名前を【オルテ】といい、孤児院を出て冒険者として身を立てていたが、街道筋で襲われたった1人の仲間の男性は死亡。
そして捕らえられたらしい。
身寄りが在る女性達にも説明してもらった。
ふたつ隣の街で雑貨商を営む家の娘【メイリーン】。
近くの村の薬屋の娘【ラキア】。
そして、なんともう1人は、他領の貴族の娘だと言う。
マジかよ……
娘の名は【アグネス=ドットハイマー】。
王国貴族であるリード=ドットハイマー子爵の次女で、親が公務で不在の時に、街を散策中に護衛と逸れ、攫われたらしい。
ギルドの掲示板には捜索願いとかは出てなかったが……
あれか?
貴族の体面的なやつとかで、拐かされたとかの醜聞が広まっちゃ困る的な。
ふむ……
できれば貴族とはあまり関わり合いにはなりたくないが、恩を売るとなれば不味い話でもないかな?
もし父親が善い人なら、味方になってくれるかもしれないし。
「分かった。まず、メイリーンとラキアはすぐに送ってあげるよ。オルテは俺の街に来るといい。ちょうど、パーティーから別れた女の子達も居るし、気が合えばまた冒険者をやっても良いんじゃないかな。アグネスは……一旦オルテと一緒に来てくれないかな?貴族の子女を保護したは良いけど、下手に騒ぎにする訳にはいかないからね。」
それで良いかな?とみんなに訊ねると、4人はそれぞれ承諾してくれた。
「帰るにしろ街に来るにしろ、先ずは身綺麗にしてご飯を食べようか。」
そうなると、先ずは衣類だな。
子供用の服は買ったけど、流石に大人の女性用は無いから、また買いに出ないといけない。
それと風呂とご飯の準備か。
子供達の様子を見る限り、消化に良い物なら食べても平気そうだった。
ラッカやエリザ、モーラが毎日頑張って、僅かでもなんとか食べさせていたおかげだろう。
チビ達は昼過ぎにもちゃんと食べたしね。
そうと決まれば。
俺は子供達のテントに戻り、タマモとウズメに頼みたい事を伝える。
「ウズメ。悪いけどまた町に行って、さっき救けた4人分の衣類を買ってきてくれ。ちゃんとサイズを確認してから行ってこいよ?」
まずはウズメに衣類の調達を頼む。
ついでに、先程のアジト襲撃がどれほど騒がれているかも、確認してきてもらおう。
「タマモは、エリザと4人を風呂に入れる補助を頼む。子供達と違って俺が手伝う訳にはいかないからね。俺が壁を作って結界で湯船を用意するから、シャンプーとかの使い方を教えてやってほしい。あと、魔法でお湯を足したり、温度調節とかな。」
タマモは、女性達のお手伝いだ。
俺はその間に、食事の支度をしよう。
ラッカはまだ目が覚めないみたいだし、子供達と様子を見ながら作るとするか。
「それじゃ2人とも、よろしく頼むよ。調査の続きは、仕方ないけど今日はお預けにするよ。」
まだ正直イライラは残ってるけど、子供達や、救けた女性達を優先させないとね。
あんまり時間を置くのは悪手だろうけど、まあその分は後で頑張って挽回しよう。
「では、行ってくるでのう。」
財布を受け取り、女性達のサイズを調べたウズメが、町に駆けて行く。
俺は先ず、土魔法と造形魔法を組み合わせて、だいたい5メートル四方の壁に囲まれた空間を作る。
くり抜いただけの簡単な入口を作れば、簡易浴室の出来上がりだ。
まだ空は明るいし、天井も無いから灯りは良いよね。
次に、孤児達を風呂に入れた時のように、結界で湯船を創る。
今度は大人用なので、浴槽は深めだな。
一緒に身体を洗う時用の浴槽も創る。
おっといかん。
入浴シーンの妄想を捗らせてる場合じゃないぞ。
水魔法と火魔法でお湯を作り、2つの浴槽に波々と溜める。
あとは、地面に湯捨て用の深い穴を掘って、足が汚れないように木材で床を敷けば完成かな。
「タマモ、準備出来たよ。エリザ達のこと、よろしく頼むな。」
タオルや風呂用品を用意してから浴室から出て、後をタマモに引き継ぐ。
エリザと女性達はタマモに促されて、戸惑いながら浴室に入って行った。
むぅ。
タマモめ、入口を土魔法で塞ぎやがった。
べ、別に覗くつもりなんて無かったし!!
「クレイお兄ちゃん。お姉ちゃんたち、どうしたの?」
後ろ髪を引かれつつ子供達の元へ戻ると、モーラが寄って来て、壁で囲まれた浴室の方を心配そうに見ている。
「何も心配無いよ。モーラ達みたいに、お姉ちゃん達も今からお風呂に入るんだ。俺達はご飯の支度をして待ってような。」
頭を撫でてやりながら、安心するよう説明する。
「うん。あたし、いっぱいてつだうの。」
うんうん。
頑張って、美味しいご飯を作ろうな。
「帰ったのじゃー。」
夕暮れ時になり、俺がモーラ達に手伝ってもらいながら、遊びながら夕食を作り終えた頃、ちょうどウズメが帰って来た。
エリザや女性達も風呂を満喫したみたいで、身体にタオルを巻いて、テントで涼んでいる。
女性達がテントに移動する時は、俺はタマモに目隠しされました。
悔しくなんかないもん。
ウズメは早速女性達に衣類を渡し、テントの中で着替えてもらっている。
エリザを含め子供達も、先に買ってあった子供服に全員お着替え完了済みだ。
「うん。みんな綺麗になったし、ご飯にしよう。みんないいか?ご飯を食べる前に、食材と、作ってくれた人に感謝して、『いただきます』って言ってから食べるんだぞー?」
みんなで焚き火を囲んで、仲良く夕御飯だ。
「よく噛んで食べろよー?それじゃ、いただきます!」
「「「「いただきます!!」」」」
元気な子供達の声が、夕焼け空に響いて溶けていく。
今回のメニューは、薄い塩味を付けたお粥と、野菜が崩れそうなほど柔らかく煮込んだスープ、それとカットした果物だ。
スープには細かくして柔らかく煮込んだ鶏肉も入っていて、味付けは、家から持ち出したコンソメと、塩胡椒のアッサリ目だ。
神様の家にマジで感謝だな。
「あちちち!」
「おいしー!!」
「あふっ、あふっ!」
美味しそうに食べてくれるなぁ。
頑張ってみんなで作ったんだもんな。
不味いわけがないよな。
エリザも久し振りのまともな食事なのだろう。
涙目になりながら慌てて食べている。
「ほらほら。まだお代わりも有るから、急がずにしっかり噛んで食べなきゃダメだぞ。」
小さな子供の口をタオルで拭いてやりながら、みんなに注意する。
米は初めてなのか分からんけど、最初はおっかなびっくり粥に口を付けていた女性達4人も、今は黙々と食べている。
捕まっていた間は、まともな食事なんて食べさせてもらえなかっただろうしね。
「どうかな?簡単な食事だけど、口に合ったかな?」
4人に訊いてみると、反応は良好だった。
「この、オカユ……でしたか?オコメという穀物を使っているとお聞きしましたけれど、優しい味ですわね。噛めば噛むほど甘みが出てきて、とっても不思議で美味しいですわ。」
貴族のアグネスも、米を気に入ってくれたみたいだ。
そんな感じで、みんなで和やかに食事を楽しんでいた最中、俺の感知スキルが、テントの中のラッカが動いたのを察知した。
「お!どうやらお兄ちゃんのお目覚めみたいだぞ?」
俺はみんなにそう声を掛けてから、テントへと歩いて行く。
入口を開いて中に入ると、ちょうどラッカが身体を起こしたところだった。
「よう、気が付いたか?」
俺が掛けた声に一瞬ビクッと震えたが、俺の顔を見ると、戸惑いながらも声を吐き出す。
「あんたは……夢じゃなかったんだな……ここは?」
キョロキョロと周囲を見回すラッカ。
「此処は、お前達が暮らしている小屋の前だよ。あの小屋じゃ身体が冷えちまうから、テントを張ったんだ。ああそれと、安心しな。妹のエリザは、無事に救けたからよ。よく頑張ったな、お兄ちゃん。」
俺の口から妹の無事を知らされ、暫し呆けたような顔をするラッカ。
やがて意味を飲み込むと、その目からポロポロと涙が溢れてくる。
「よがっだ……よがっだよぉ…………!!」
うん。
お前はホントに偉かったよ。
そんな痩せた小さな身体で、大の大人達に立ち向かったんだ。
凄い勇気と根性だよ。
「ラッカ兄さん!!」
「お兄ちゃん!!」
おっと。
子供達がみんな突入して来ちゃったか。
ラッカは涙を拭う暇も無いまま、弟妹に囲まれ、もみくちゃにされている。
「お兄ちゃん、泣いてるの?」
「お兄ちゃん、どっかいたい?よしよしする?」
ははは!
チビ達に心配されてら。
「う、うっせー!泣いてなんかないやい!!」
いやいや、ボロッボロだったからな?
何はともあれだ。
無事に、子供達全員救けられて、本当に良かったな……
アザ「そういえば、クレイ様。あの犯罪者達は、どうされたのですか?」
真日「あん?ああ、アイツらなら、簡易浴室に放り込んで、閉じ込めてあるぞ。勿論湯船や敷板は撤去済みだ。」
シュ「ほう。じゃがクレイよ、それじゃと協力して抜け出さんかの?」
真日「大丈夫だよ。結界で天井張ってやったし。当然、風は通すから吹きさらしだ。」
アザ「流石です、クレイ様!」
シュ「飯はくれてやったのかの?」
真日「は?やるわけないだろ。ちょっとくらい飲まず食わずでも、死にゃあしねえよ。」
シュ「お主は本当に、敵には容赦無いのう……」
アザ「そんなクレイ様も、素敵です!」




