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ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う  作者: テケリ・リ
五章 冒険者パーティー【揺籃の守り人】
82/225

第五話 やってくれたな畜生。

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


ようやく朝8時更新に戻せました。


これからもよろしくお願いします。


評価、感想、ブクマをお待ちしております。


良ければ是非、お願いします。


m(*._.)m



〜 ユーフェミア王国 ケイルーンの町 〜



「やあお嬢ちゃん。美味しいお菓子が有るんだけど、一緒に来ないかい?」


俺、渾身の笑顔攻撃!

さあ名も知らぬ少女よ、ついて来るが良い!


「たわけ、この変質者が!!」


あいたっ!?

シュ……ウズメ、何をするっ!?


「いちちち……ほんの冗談じゃないか!」


「普段の様子を観ておると冗談に聴こえぬわ!!」


そんなマジにならないでよ……

後頭部、コブになってないよな……?


「冗談は置いといて、どうかな?俺達の街の孤児院に入らないか?優しいシスターが面倒見てくれる、良い所だよ?」


はい。

ただ孤児を集めてるだけですよ。


「まったく。最初からそう言えば良いのじゃ!」


盗賊から救い出した女性達をダンジョンに保護した翌日。


俺達は、支配したダンジョン【狼牙王国】の近くで、且つ冒険者ギルドの在るこの町、【ケイルーン】に来ている。


盗賊の引渡し後の報酬受け取りや、他にも色々やることが有ったからね。


今はアザミ――タマモにちょっと()使()()をお願いしていて、ウズメと2人だけだ。


で、待ってる時間が勿体無いからと、孤児の様子を見に来てるってわけ。


そしたら、道の片隅で必死に物乞いしているこの子を見掛けたから、声を掛けたんだよ。


「お兄ちゃんたち、わるいひと?」


ううむ。

それを聞かれて「そうだよ!」と答える悪い人など居るのだろうか?


「悪い人……ではないかなぁ?少なくとも、子供に酷い事はしないよ?神様に誓ってもいいぞ?」


神様も幼女だしな!

子供に何かしたら、神罰下りそうだよね!


娘子(むすめご)よ、安心するのじゃ。この男は(わらべ)には優しいし、嘘は吐かんでのう。」


ウズメの微笑みを見て安心したらしく、少女から力が抜ける。


「ごめんなさい。行きたいけど、だめなの。弟も妹もたくさんいるの。おいて行けないの。」


なんて優しい()なのっ!!

お兄ちゃん泣けてきちゃう!!


ボロボロの貫頭衣に裸足で、縁の欠けた木のお椀を持って。


道行く人に貶され、罵られ、突き飛ばされて。


泥だらけの擦り傷だらけになっても、泣くこともせずに、僅かな慈悲を願い乞うていた、小さな女の子。


まだ8歳くらいか?


ガリガリに痩せて、髪もボサボサで顔色も悪い。


「そうか、弟や妹も居るんだな。お姉ちゃん1人で頑張ってて、偉いなぁ!そうだ、みんなの所に連れてってくれないかな?お兄ちゃんこう見えてお金持ちだから、みんなで美味しいご飯でも食べよう!」


そう言って、ウズメに財布と魔法鞄(マジックバッグ)を渡す。


「多少高くても良いから、子供用の衣服をありったけ買ってきてくれ。下着や靴もな。それと、新鮮な果物だな。場所は念話で報せる。」


「分かったのじゃ。」


受け取ったウズメが通りに姿を消す。


「さて。それじゃあ、お名前を教えてくれないかな?俺のことは、クレイって呼んでくれれば良いよ。」


ポカンと口を開いたまま俺を見ている少女に、声を掛ける。


やっぱり偽名だとやりづらいなぁ……


そんな愚痴を内心で零す俺に、少女はおずおずと、答えを返す。


「あたし……【モーラ】。クレイお兄ちゃん、ごはんくれるの……?」


「ああ。みんなでお腹いっぱい食べよう。」


そうして、俺はその軽過ぎる身体を抱き上げて、この子の兄弟達の元へ向かった。




そこは、町の外れの、ズタボロになった小屋だった。


家財道具のひとつも無く、床はあちこち腐って抜けてるし、壁も虫食いだらけで隙間風がフリーパスだ。


屋根だってボロボロで、雨が降れば床は全面水浸しだろう。


こりゃ酷いな……


そんな小屋の片隅に、小さな手で必死に集めたであろう藁草が敷かれており、その上にモーラよりも年齢の低そうな子供達が、全部で5人。


皆一様に痩せ細っており、起きてモーラを出迎える元気も無い様子で座っている。


男の子が4人に、女の子が1人か。


「モーラの家族は、これで全部なのか?お兄ちゃんやお姉ちゃん、お父さんやお母さんは居ないのかな?」


両親に関しては判りきっているが、一応質問する。


「みんなホントはきょうだいじゃないの。お父さんもお母さんも、あたしのこといらないみたいだったの。しらないこの町につれて来て、どっか行っちゃったの。あとは、お兄ちゃんがひとりと、お姉ちゃんもひとりいるよ。ごはんもらいに行ってるの。」


あと2人居るのか。


モーラと同じように物乞いに出ているのか、それともどこかしらの小間使いでもしているのか。


まあ何はともあれ、先ずは飯だな。


とは言っても、みんな見事にガリガリの飢餓状態だ。


そんな状態で、いきなり固形物をあげる訳にはいかないな。


無限収納(インベントリ)から、食材を詰め込んだ魔法鞄(マジックバッグ)と、調理器具、それから洗面用具を一通り取り出す。


もしもの時用の野営セットです。


あと乾燥した薪も出して、と。


小屋の外に出て、地面に土魔法を掛けて簡易竈を創る。


その竈の中に薪を並べ、火魔法で火を起こす。


火が薪に充分燃え移るのを待つ間に、鍋に米を入れて水魔法を使って粗く研ぐ。


研ぎ終わったら新しい水を多めに入れて塩を少し入れ、火が安定した竈に置いて蓋をする。


これでお粥の準備は良いな。

重湯を掬うのを忘れないようにしないとな。


さて次は。


「モーラ、みんなでこっちにおいで。ご飯の前に身体を綺麗にしよう。他の子達は起きられそうか?」


声を掛けると、モーラが子供達を起こして来てくれた。

みんな、少しなら動けるみたいで良かった。


俺は浅い大きなタライをイメージし、結界を構築する。


そこに水魔法で水を満たし、火魔法を使ってお湯にする。


ふむ……体感温度で40℃くらいかな?


おっと、先にタオルも用意しないとな。


簡易テーブルを取り出し、そこにバスタオルを人数分と、一番柔らかい洗身用スポンジを置く。


「それじゃあ、お姉ちゃんのモーラがみんなにお手本を見せてあげてな。服を脱いでこっちにおいで。汚れを落とすからね。」


モーラを手招きして服を脱がせる。


って、裸足の上に下着も無しかよ。

夜は辛いだろうに……


「さあモーラ。このお湯の中に入ってくれ。温かいぞぉ?」


裸になったモーラを抱き上げて、結界風呂に入れてやる。

子供だから深さはお腹くらいだが、身体も洗うから良いだろう。


「ふわぁ〜!あったかぁい!」


怖がるかと思ったけど、大丈夫そうだな。


俺は手桶を手に取り、湯を掬う。


「モーラ、頭にお湯を掛けるから、目を瞑って下を向いててな。」


俺の言う通りにしたモーラの頭に、怖がらせないようゆっくりとお湯を掛ける。


「わぷっ!?」


「ははは!大丈夫だよモーラ。頭を洗うから、そのままじっとしててくれよ?」


シャンプーを軽く泡立て、髪に馴染ませる。


むう。

やっぱり一度では脂が多くて泡立たないな。


頭皮を指の腹で優しく丁寧に擦り、汚れと皮脂を落としていく。


「お湯を掛けて、もう一回洗うぞー。」


丁寧に、ゆっくりと。


始めてのお風呂を怖がらないように、声を掛けながら洗ってやる。


「よし、今度は身体を洗うからなー。足はお湯に入れたままで良いから、この台に座ってくれ。」


結界の形を弄り、湯船の縁にイスを創る。


そこに座らせたモーラの身体を、柔らかいスポンジにボディソープをたっぷり泡立てて、優しく撫でるように洗ってやる。


おお、お湯の色が……

まあ、孤児が水浴びなんかするわけないもんな……


洗う片手間にもうひとつ結界の湯船とお湯を用意して、綺麗なお湯を贅沢に使って流してやる。


「よし、こんなもんか。それじゃあ、こっちの綺麗なお湯に浸かって、身体を温めてろよ?」


新しい湯船にモーラを移してやり、少し深めにしたそこに肩まで浸からせる。


「さあ、どんどん行くぞ?次はどの子かなー?」


汚れたお湯は深い穴を掘ってそこへ流して、また新たに湯船を創る。


そして俺は、残りの5人の子供達も次々に綺麗に洗ってやった。




うん。

みんな雪ん子みたいだね。


みんなをお風呂に入れて綺麗にしてやった後。


あの小屋じゃ寒いだろうから大きなテントを出して、中に毛布を敷き詰め、新しい乾いたタオルで身体を巻いて中で休ませる。


お風呂で失った水分は白湯で補給させ、今はご飯の準備中だ。


とは言っても、お風呂に入れてる間に重湯もお粥も出来てるけどね。


軽い木のお椀にまずは温かい重湯を注ぎ、子供達に配る。


「お腹空いてるだろうけど、先ずは重湯からな。熱いから、ゆっくり飲めよー。」


テントの中で子供達が重湯を啜る。


余程腹を空かせてたんだろう。

ほんのりしか塩味の付いていない重湯でも、みんな慌てて飲んでるね。


俺はその間に、粥に更に水を足して煮立て、米粒を潰していく。


飢餓状態の胃にいきなり固形物は厳禁だからね。


まさか異世界に来てから、前世での介護士の知識と経験が活きるとは。


お風呂の介助と言い、無駄なことって無いもんだなぁ。


クタクタに煮潰れた水分多めのお粥が出来た。


足りていないであろう塩ももう少し足して、味を付けてやる。


「いいか?空っぽのお腹でいきなりご飯を食べると、大変な事になっちゃうからな?ゆっくりひと口ずつ、良く噛んでから飲み込むんだぞー?」


そう伝えながら、子供達のお椀に粥をよそい、スプーンを渡して回る。


「あふっ、あふっ!おいひい!」


「おいちーね!」


「あっちいね!」


うん。

みんな良い顔で食べてくれてるな。

ただのお粥でここまで喜ばれると、ちょっと後ろめたいけど。


もっと元気になったら、もっともっと美味い物食わせてやるからな!!


そうして、俺が子供達を見守り和んでいた、その時。


『主様よ!暴行を受けた童を保護した!今何処じゃ!?』


切羽詰まった感情の篭った、シュラの声が頭に響いた。


『状態は!?』


『頭を強く打ったようで、血が出ておる!意識も失っておるのじゃ!』


不味いな。

頭を打ったなら下手に動かさない方が良い。


『綺麗な布で傷を押さえて、止血だけしておけ!あまり頭を動かすなよ!?俺がそっちに行くから、何か付近に、目印になる物が在るか教えてくれ!』


『ぎるどの近くの路地裏じゃ!頼む!』


ギルド付近ね。

空から行けばすぐだな。


「モーラ、俺の仲間が怪我をした子供を見付けたらしい。俺はその子を助けに行ってくるから、弟達を見ててくれるか?」


俺が行けば子供達を置いて離れることになる。


この中ではお姉ちゃんのモーラに留守を頼むと、彼女は驚き、不安に満ちた顔をする。


「大丈夫。すぐに戻って来るから。モーラはお姉ちゃんだから、俺が戻るまでみんなを守っててくれな?」


目線を合わせて、頭を撫でる。


「……うん。クレイお兄ちゃん、はやくかえってきてね。」


ああ、任せろ。


俺は頷きを返して、テントから出る。


冒険者ギルドは……あっちだな。


飛行魔法を発動して空へ舞い上がり、感知スキルを使いながら、一直線にギルドを目指して飛ぶ。


シュラの反応は…………居た!


上空から見下ろすと、表通りから2本ほど入った路地裏に、地面に倒れた子供と、それを介抱するシュラの姿が見えた。


すぐさまそこへ降下する。


「シュラ、どうだ!?」


「血は止まったようじゃが、意識が戻らん。息はしっかりしておるのじゃ。」


子供……少年だな。

歳は10歳前後か?


パッと観たところ、顔色や唇の色もそんなに悪くはないし、呼吸も規則正しく安定している。


まあ、身体のあちこちに殴る蹴るの暴行の痕は有るが。


俺は無限収納(インベントリ)から上級ポーションを2本取り出し、1本を身体中の傷に振り掛ける。


見る見るうちに傷が癒える。


だが、意識はまだ戻らないな。


俺はもう1本のポーションを口に含み、少年の頭を少し起こして、口移しで飲ませる。


喉が動き、嚥下したのを確認してから、更にもうひと口。


それを三度繰り返した時、少年の口から微かに呻き声が漏れた。


「大丈夫か?目を開けられるか?」


驚かさないよう、優しく声を掛ける。


「う、うぅ……」


少年の声が、だんだんとハッキリしてくる。


そのまま待っていると、ゆっくりと目を開いた。


「ここは……だれ……?」


朧気な意識で、誰何する少年。


「俺は、冒険者のクレイだ。お前、もしかしてモーラのお兄ちゃんか?」


俺は正直怒り心頭だったが、それを極力漏らさないよう、できるだけ優しく答えを返す。


「モーラ?モーラを知ってるの……?どうして……?」


「それ以上喋らなくて良いから、寝ておけ。すぐにモーラ達の所に連れて行ってやるから。」


まだ意識が混乱しているんだろう。

だけど、それだけ聴ければ充分だ。


ぼんやりとした表情で呟く少年を制して、弱めに睡眠魔法を掛ける。


眠った少年を抱き抱え、シュラに向き直る。


「此処から東の町外れの朽ちた小屋に、この子の仲間が待ってるから、俺は先にこの子を連れて行く。シュ……ウズメはタマモと合流して、この子をこんなにした奴を突き止めといてくれ。」


頭が沸騰しそうだ。


俺は怒気や魔力を漏らさないよう必死に抑え込み、ウズメにそう頼む。


「うむ。先ずは子らを安心させてやらねばな。用は確と成しておく故、それまでは気を鎮めておくのじゃぞ?」


多くは語らず、買い物をしたであろう財布と魔法鞄(マジックバッグ)を渡して、そう微笑むウズメ。


お見通しだよな。

自分でも険しい顔をしてるって分かるもん。


一度深呼吸し、気を落ち着ける。


「それじゃ、頼んだぞ?」


「うむ。任されよ、主様よ。」


頷き合い、俺は少年と共に空へ、ウズメは路地裏から表通りへと駆けて行った。




アカン……

真日さんがキレてもうた……


折角子供達とキャッキャウフフしてたのに!!


((((;゜Д゜)))))))

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― 新着の感想 ―
[良い点] あれ「重湯」って言うんですね。 ちゃんとした固有名詞があるとは知らなかった……
[一言] 子供とキャッキャウフフって... マナカさんはショタコンでロリコンでしたか!
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