第五話 やってくれたな畜生。
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m(*._.)m
〜 ユーフェミア王国 ケイルーンの町 〜
「やあお嬢ちゃん。美味しいお菓子が有るんだけど、一緒に来ないかい?」
俺、渾身の笑顔攻撃!
さあ名も知らぬ少女よ、ついて来るが良い!
「たわけ、この変質者が!!」
あいたっ!?
シュ……ウズメ、何をするっ!?
「いちちち……ほんの冗談じゃないか!」
「普段の様子を観ておると冗談に聴こえぬわ!!」
そんなマジにならないでよ……
後頭部、コブになってないよな……?
「冗談は置いといて、どうかな?俺達の街の孤児院に入らないか?優しいシスターが面倒見てくれる、良い所だよ?」
はい。
ただ孤児を集めてるだけですよ。
「まったく。最初からそう言えば良いのじゃ!」
盗賊から救い出した女性達をダンジョンに保護した翌日。
俺達は、支配したダンジョン【狼牙王国】の近くで、且つ冒険者ギルドの在るこの町、【ケイルーン】に来ている。
盗賊の引渡し後の報酬受け取りや、他にも色々やることが有ったからね。
今はアザミ――タマモにちょっとお使いをお願いしていて、ウズメと2人だけだ。
で、待ってる時間が勿体無いからと、孤児の様子を見に来てるってわけ。
そしたら、道の片隅で必死に物乞いしているこの子を見掛けたから、声を掛けたんだよ。
「お兄ちゃんたち、わるいひと?」
ううむ。
それを聞かれて「そうだよ!」と答える悪い人など居るのだろうか?
「悪い人……ではないかなぁ?少なくとも、子供に酷い事はしないよ?神様に誓ってもいいぞ?」
神様も幼女だしな!
子供に何かしたら、神罰下りそうだよね!
「娘子よ、安心するのじゃ。この男は童には優しいし、嘘は吐かんでのう。」
ウズメの微笑みを見て安心したらしく、少女から力が抜ける。
「ごめんなさい。行きたいけど、だめなの。弟も妹もたくさんいるの。おいて行けないの。」
なんて優しい娘なのっ!!
お兄ちゃん泣けてきちゃう!!
ボロボロの貫頭衣に裸足で、縁の欠けた木のお椀を持って。
道行く人に貶され、罵られ、突き飛ばされて。
泥だらけの擦り傷だらけになっても、泣くこともせずに、僅かな慈悲を願い乞うていた、小さな女の子。
まだ8歳くらいか?
ガリガリに痩せて、髪もボサボサで顔色も悪い。
「そうか、弟や妹も居るんだな。お姉ちゃん1人で頑張ってて、偉いなぁ!そうだ、みんなの所に連れてってくれないかな?お兄ちゃんこう見えてお金持ちだから、みんなで美味しいご飯でも食べよう!」
そう言って、ウズメに財布と魔法鞄を渡す。
「多少高くても良いから、子供用の衣服をありったけ買ってきてくれ。下着や靴もな。それと、新鮮な果物だな。場所は念話で報せる。」
「分かったのじゃ。」
受け取ったウズメが通りに姿を消す。
「さて。それじゃあ、お名前を教えてくれないかな?俺のことは、クレイって呼んでくれれば良いよ。」
ポカンと口を開いたまま俺を見ている少女に、声を掛ける。
やっぱり偽名だとやりづらいなぁ……
そんな愚痴を内心で零す俺に、少女はおずおずと、答えを返す。
「あたし……【モーラ】。クレイお兄ちゃん、ごはんくれるの……?」
「ああ。みんなでお腹いっぱい食べよう。」
そうして、俺はその軽過ぎる身体を抱き上げて、この子の兄弟達の元へ向かった。
そこは、町の外れの、ズタボロになった小屋だった。
家財道具のひとつも無く、床はあちこち腐って抜けてるし、壁も虫食いだらけで隙間風がフリーパスだ。
屋根だってボロボロで、雨が降れば床は全面水浸しだろう。
こりゃ酷いな……
そんな小屋の片隅に、小さな手で必死に集めたであろう藁草が敷かれており、その上にモーラよりも年齢の低そうな子供達が、全部で5人。
皆一様に痩せ細っており、起きてモーラを出迎える元気も無い様子で座っている。
男の子が4人に、女の子が1人か。
「モーラの家族は、これで全部なのか?お兄ちゃんやお姉ちゃん、お父さんやお母さんは居ないのかな?」
両親に関しては判りきっているが、一応質問する。
「みんなホントはきょうだいじゃないの。お父さんもお母さんも、あたしのこといらないみたいだったの。しらないこの町につれて来て、どっか行っちゃったの。あとは、お兄ちゃんがひとりと、お姉ちゃんもひとりいるよ。ごはんもらいに行ってるの。」
あと2人居るのか。
モーラと同じように物乞いに出ているのか、それともどこかしらの小間使いでもしているのか。
まあ何はともあれ、先ずは飯だな。
とは言っても、みんな見事にガリガリの飢餓状態だ。
そんな状態で、いきなり固形物をあげる訳にはいかないな。
無限収納から、食材を詰め込んだ魔法鞄と、調理器具、それから洗面用具を一通り取り出す。
もしもの時用の野営セットです。
あと乾燥した薪も出して、と。
小屋の外に出て、地面に土魔法を掛けて簡易竈を創る。
その竈の中に薪を並べ、火魔法で火を起こす。
火が薪に充分燃え移るのを待つ間に、鍋に米を入れて水魔法を使って粗く研ぐ。
研ぎ終わったら新しい水を多めに入れて塩を少し入れ、火が安定した竈に置いて蓋をする。
これでお粥の準備は良いな。
重湯を掬うのを忘れないようにしないとな。
さて次は。
「モーラ、みんなでこっちにおいで。ご飯の前に身体を綺麗にしよう。他の子達は起きられそうか?」
声を掛けると、モーラが子供達を起こして来てくれた。
みんな、少しなら動けるみたいで良かった。
俺は浅い大きなタライをイメージし、結界を構築する。
そこに水魔法で水を満たし、火魔法を使ってお湯にする。
ふむ……体感温度で40℃くらいかな?
おっと、先にタオルも用意しないとな。
簡易テーブルを取り出し、そこにバスタオルを人数分と、一番柔らかい洗身用スポンジを置く。
「それじゃあ、お姉ちゃんのモーラがみんなにお手本を見せてあげてな。服を脱いでこっちにおいで。汚れを落とすからね。」
モーラを手招きして服を脱がせる。
って、裸足の上に下着も無しかよ。
夜は辛いだろうに……
「さあモーラ。このお湯の中に入ってくれ。温かいぞぉ?」
裸になったモーラを抱き上げて、結界風呂に入れてやる。
子供だから深さはお腹くらいだが、身体も洗うから良いだろう。
「ふわぁ〜!あったかぁい!」
怖がるかと思ったけど、大丈夫そうだな。
俺は手桶を手に取り、湯を掬う。
「モーラ、頭にお湯を掛けるから、目を瞑って下を向いててな。」
俺の言う通りにしたモーラの頭に、怖がらせないようゆっくりとお湯を掛ける。
「わぷっ!?」
「ははは!大丈夫だよモーラ。頭を洗うから、そのままじっとしててくれよ?」
シャンプーを軽く泡立て、髪に馴染ませる。
むう。
やっぱり一度では脂が多くて泡立たないな。
頭皮を指の腹で優しく丁寧に擦り、汚れと皮脂を落としていく。
「お湯を掛けて、もう一回洗うぞー。」
丁寧に、ゆっくりと。
始めてのお風呂を怖がらないように、声を掛けながら洗ってやる。
「よし、今度は身体を洗うからなー。足はお湯に入れたままで良いから、この台に座ってくれ。」
結界の形を弄り、湯船の縁にイスを創る。
そこに座らせたモーラの身体を、柔らかいスポンジにボディソープをたっぷり泡立てて、優しく撫でるように洗ってやる。
おお、お湯の色が……
まあ、孤児が水浴びなんかするわけないもんな……
洗う片手間にもうひとつ結界の湯船とお湯を用意して、綺麗なお湯を贅沢に使って流してやる。
「よし、こんなもんか。それじゃあ、こっちの綺麗なお湯に浸かって、身体を温めてろよ?」
新しい湯船にモーラを移してやり、少し深めにしたそこに肩まで浸からせる。
「さあ、どんどん行くぞ?次はどの子かなー?」
汚れたお湯は深い穴を掘ってそこへ流して、また新たに湯船を創る。
そして俺は、残りの5人の子供達も次々に綺麗に洗ってやった。
うん。
みんな雪ん子みたいだね。
みんなをお風呂に入れて綺麗にしてやった後。
あの小屋じゃ寒いだろうから大きなテントを出して、中に毛布を敷き詰め、新しい乾いたタオルで身体を巻いて中で休ませる。
お風呂で失った水分は白湯で補給させ、今はご飯の準備中だ。
とは言っても、お風呂に入れてる間に重湯もお粥も出来てるけどね。
軽い木のお椀にまずは温かい重湯を注ぎ、子供達に配る。
「お腹空いてるだろうけど、先ずは重湯からな。熱いから、ゆっくり飲めよー。」
テントの中で子供達が重湯を啜る。
余程腹を空かせてたんだろう。
ほんのりしか塩味の付いていない重湯でも、みんな慌てて飲んでるね。
俺はその間に、粥に更に水を足して煮立て、米粒を潰していく。
飢餓状態の胃にいきなり固形物は厳禁だからね。
まさか異世界に来てから、前世での介護士の知識と経験が活きるとは。
お風呂の介助と言い、無駄なことって無いもんだなぁ。
クタクタに煮潰れた水分多めのお粥が出来た。
足りていないであろう塩ももう少し足して、味を付けてやる。
「いいか?空っぽのお腹でいきなりご飯を食べると、大変な事になっちゃうからな?ゆっくりひと口ずつ、良く噛んでから飲み込むんだぞー?」
そう伝えながら、子供達のお椀に粥をよそい、スプーンを渡して回る。
「あふっ、あふっ!おいひい!」
「おいちーね!」
「あっちいね!」
うん。
みんな良い顔で食べてくれてるな。
ただのお粥でここまで喜ばれると、ちょっと後ろめたいけど。
もっと元気になったら、もっともっと美味い物食わせてやるからな!!
そうして、俺が子供達を見守り和んでいた、その時。
『主様よ!暴行を受けた童を保護した!今何処じゃ!?』
切羽詰まった感情の篭った、シュラの声が頭に響いた。
『状態は!?』
『頭を強く打ったようで、血が出ておる!意識も失っておるのじゃ!』
不味いな。
頭を打ったなら下手に動かさない方が良い。
『綺麗な布で傷を押さえて、止血だけしておけ!あまり頭を動かすなよ!?俺がそっちに行くから、何か付近に、目印になる物が在るか教えてくれ!』
『ぎるどの近くの路地裏じゃ!頼む!』
ギルド付近ね。
空から行けばすぐだな。
「モーラ、俺の仲間が怪我をした子供を見付けたらしい。俺はその子を助けに行ってくるから、弟達を見ててくれるか?」
俺が行けば子供達を置いて離れることになる。
この中ではお姉ちゃんのモーラに留守を頼むと、彼女は驚き、不安に満ちた顔をする。
「大丈夫。すぐに戻って来るから。モーラはお姉ちゃんだから、俺が戻るまでみんなを守っててくれな?」
目線を合わせて、頭を撫でる。
「……うん。クレイお兄ちゃん、はやくかえってきてね。」
ああ、任せろ。
俺は頷きを返して、テントから出る。
冒険者ギルドは……あっちだな。
飛行魔法を発動して空へ舞い上がり、感知スキルを使いながら、一直線にギルドを目指して飛ぶ。
シュラの反応は…………居た!
上空から見下ろすと、表通りから2本ほど入った路地裏に、地面に倒れた子供と、それを介抱するシュラの姿が見えた。
すぐさまそこへ降下する。
「シュラ、どうだ!?」
「血は止まったようじゃが、意識が戻らん。息はしっかりしておるのじゃ。」
子供……少年だな。
歳は10歳前後か?
パッと観たところ、顔色や唇の色もそんなに悪くはないし、呼吸も規則正しく安定している。
まあ、身体のあちこちに殴る蹴るの暴行の痕は有るが。
俺は無限収納から上級ポーションを2本取り出し、1本を身体中の傷に振り掛ける。
見る見るうちに傷が癒える。
だが、意識はまだ戻らないな。
俺はもう1本のポーションを口に含み、少年の頭を少し起こして、口移しで飲ませる。
喉が動き、嚥下したのを確認してから、更にもうひと口。
それを三度繰り返した時、少年の口から微かに呻き声が漏れた。
「大丈夫か?目を開けられるか?」
驚かさないよう、優しく声を掛ける。
「う、うぅ……」
少年の声が、だんだんとハッキリしてくる。
そのまま待っていると、ゆっくりと目を開いた。
「ここは……だれ……?」
朧気な意識で、誰何する少年。
「俺は、冒険者のクレイだ。お前、もしかしてモーラのお兄ちゃんか?」
俺は正直怒り心頭だったが、それを極力漏らさないよう、できるだけ優しく答えを返す。
「モーラ?モーラを知ってるの……?どうして……?」
「それ以上喋らなくて良いから、寝ておけ。すぐにモーラ達の所に連れて行ってやるから。」
まだ意識が混乱しているんだろう。
だけど、それだけ聴ければ充分だ。
ぼんやりとした表情で呟く少年を制して、弱めに睡眠魔法を掛ける。
眠った少年を抱き抱え、シュラに向き直る。
「此処から東の町外れの朽ちた小屋に、この子の仲間が待ってるから、俺は先にこの子を連れて行く。シュ……ウズメはタマモと合流して、この子をこんなにした奴を突き止めといてくれ。」
頭が沸騰しそうだ。
俺は怒気や魔力を漏らさないよう必死に抑え込み、ウズメにそう頼む。
「うむ。先ずは子らを安心させてやらねばな。用は確と成しておく故、それまでは気を鎮めておくのじゃぞ?」
多くは語らず、買い物をしたであろう財布と魔法鞄を渡して、そう微笑むウズメ。
お見通しだよな。
自分でも険しい顔をしてるって分かるもん。
一度深呼吸し、気を落ち着ける。
「それじゃ、頼んだぞ?」
「うむ。任されよ、主様よ。」
頷き合い、俺は少年と共に空へ、ウズメは路地裏から表通りへと駆けて行った。
アカン……
真日さんがキレてもうた……
折角子供達とキャッキャウフフしてたのに!!
((((;゜Д゜)))))))




