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ダンジョンだからって戦わなきゃいけない決まりはないと思う  作者: テケリ・リ
四章 新都市【ウィール・クレイドル】
69/225

第十二話 受付嬢にはスルースキルも必須らしい。

いつもお読み下さり、ありがとうございます。


前話のギルドカードの記載事項の説明にて、種族を加え忘れていましたので、修正しました。


本編の流れには影響はございませんが、ご承知おきください。



良ければ、感想、評価、ブクマをお待ちしております。


これからも、よろしくお願いします。


m(*_ _)m




〜 領都ブリンクス 冒険者ギルド ブリンクス支部 〜



俺の目の前には、蛇に睨まれた蛙……もとい、怯えた冒険者ギルドの受付嬢【フィーア】さんが、顔を真っ青にして座っている。


「そんなに怯えなくてもよくない?まあ確かに?まだ冒険者にも成ってない一般人である俺達が、柄の悪い冒険者に絡まれているにも関わらず、助けを求めて投げ掛けた視線を思いっきり逸らされた事には、思う所がございますけども?」


一般人との折衝をするのが、ギルド職員なんじゃないのかな?と、若干(?)の嫌味が篭ってしまうのは、致し方ないだろう。


「ももっ、ももも申し訳ございませんっっっ!!??」


おいおい、そんな涙目で懇願するように頭を下げられちゃうと、俺が悪者みたいじゃないか。


「主様よ、いたいけな女子(おなご)に酷なことを言うでないのじゃ。儂らにとっては、群がる蚊を落とすより容易い事だったじゃろうに」


むう、それを真っ先にキレかかってた奴が言うのかよ。

アザミもフンフン頷いてないでよ。


「はぁ……悪かった。別に気にしてないから、楽にしてくれよ。俺達は冒険者登録に来ただけなんだから」


「と、登録……ですか……?」


うん?

なんでそんな不思議そうな顔すんの?


「なに?登録するのに、なんか必要な資格とかあんの?」


もしや見落としが有って、俺達では登録できない何かが有ると言うのだろうか?


「い、いえ!み、皆さん、とてもお強く見受けられますので……態々これから冒険者に成られるというのが……」


ああ、なるほど。

元々強いなら冒険者じゃなくても食い扶持は有るだろうって話ね。


「いや、さっきも聴いてたと思うけど、俺達は迷宮に用が有るんだよ。軍とか騎士に興味は無い。だから、冒険者登録して、さっさとDランクに上がりたいんだ」


本当に簡単に、登録したい訳を話す。


「そそ、そうなんでしゅか……そ、それでは、新規登録の前に、こ、こちらの、しし申請用紙に、ご、ご記入をお願いしましゅ!」


どもりまくりの噛みまくり。

顔を真っ赤にして涙目で、ワタワタと3人分の登録申請の紙を差し出してくる。


差し出された紙には……なになに?


名前、年齢、職業、出身地を書く欄が設けられている。


「これって、全部書かないとダメなの?」


名前や年齢なら兎も角、職業や出身地を聞かれても困る。

職業はダンジョンマスターだし、出身地なんて人類の禁忌の地、惑わしの森ですからね!


「い、いえ。飽くまでこれは参考ですので、お、お名前だけでも構いません!」


なるほどね。

それじゃ、名前を【マナカ】、年齢を【20】っと。


うん、固有スキル【全言語翻訳】が有って良かった。

日本語で書いたつもりが、自動的にこの世界の言葉になっている。


ついでに、アザミとシュラの申請書も一緒に書いてしまう。


「はい。これで良いかな?」


「あ、ありがとうございます。そ、それでは登録料として、おひとり様につき銀貨5枚を頂戴致します」


ふむ。

3人で銀貨15枚か。

事前情報通りだね。


前もって用意しておいた皮袋の財布から、小金貨を1枚、銀貨を5枚取り出してカウンターに置く。


勿論DPで創造した、俺のお金だよ?


因みに両替レートはこちら。


・銅貨100枚=小銀貨10枚=銀貨1枚


・銀貨100枚=小金貨10枚=金貨1枚


・金貨1000枚=大金貨10枚=白金貨1枚


・白金貨100枚=虹貨1枚


こんな感じだね。

屋台の串焼きが1本銅貨5枚だったことから、銀貨5枚ってのは中々な値段だと言えるな。


まあ、ギルドに登録すれば仕事の斡旋から情報まで、かなりのサポートが受けられるんだから、初期投資としては妥当なところかな。


「はい。確かに頂戴致します。それでは、こちらの術具におひとり様ずつ手を翳して、魔力を込めてください」


ようやく口調がまともになったフィーアさんが、ステータスを読み込み、ギルドカードに書き込むための術具をカウンターに乗せ、まっさらな板のようなカードをセットする。


「それじゃ、俺からね」


固有干渉魔法【欺瞞工作(トリックメイカー)】の具合をさり気なく確認してから、術具に手を翳す。


うーん、なんだろうか。

シュイーンガリガリって……ああそうだ、PCのハードディスクみたいな音を出して、淡く発光している。


「ステータスを確認させていただきますね。お名前がマナカさん、年齢が20歳……わたしと同い歳ですね。それから……れ、レベル61っ!!??」


ガタリと椅子を倒して立ち上がるフィーアさん。

うん、ホントは0歳なんだけどね。


Lv61って、そんなに高いんだろうか?


周りを見回すと、フィーアさんの叫び声が聴こえたのか、いくらかの冒険者達がこっちを見てどよめいている。


おい、守秘義務仕事しろ。


「あのさ、ヒトのステータスを大声で叫ぶのはどうなの?」


「あ、あ!?す、すみませんっ!!つい驚いてしまって……!」


Lv61はどうやら高いらしいな。


お、そうこう言っている内に術具が音を停めた。


「す、すみませんでした!こちらが、マナカさんのギルドカードです。内容をご確認ください」


差し出された硬質の素材で出来たカードを手に取り、表記を確認する。



ランク:【H】 名前:【マナカ】 性別:【男】

種族:【人間】年齢:【20】 レベル:【61】

性向:【31】 職業:【魔闘士】

登録ギルド:【ユーフェミア王国ブリンクス支部】

受注依頼:【無し】



なるほど。

こんな風に表示されるわけね。

職業は、ステータスとスキルの傾向から、既存の職業に振り分けられるらしい(メイソンさん談)。


「うん、問題無いね。それじゃ、あとの2人のもよろしく」


「はい。どうぞ、こちらへ」


アザミとシュラも同様に術具に手を翳し、無事にギルドカードの登録が完了した。


因みに2人の職業は、アザミが【魔法戦士】で、シュラが【狂戦士】だ。


うん、物凄く納得したね。

特にシュラ。


そしてステータス偽造の狙い通り、2人は獣人族と鬼人族として登録されている。


「これでギルドカードの登録は終了しました。続けて、カードや依頼についての説明をしますが、お時間は大丈夫ですか?」


大事な事柄も有るかもだしね。

ここは素直に聞いとくかな。


「うん、よろしく頼むよ」


すると、フィーアさんはあからさまにホッとした様子で、自然な笑顔になった。


「なに?説明聞かない奴とか居るの?」


思わず気になり訊ねると、彼女は笑顔を苦笑へと変えて、話しはじめた。


「ええ、実はそうなんです。これから説明することには、依頼不実行によるカードの失効についてや、違約金制度のこと、カード紛失の際の対応などが含まれるのですが……登録できたことで安心するのか、説明を断って行く方が多いんです。そしてそういう方に限って、聞いてないだの、話が違うだのと、問題が起きた時に文句を言って来るんですよね……」


良くある話だわな。


前世でも居たなぁ。

取説読まずに滅茶苦茶な操作して製品壊して、文句言ってる奴とか。

契約書をちゃんと読まずに後から後悔する奴とか。


「ご苦労さんだねぇ。まあ、そんな奴のためにチラホラ強いのが配置されてるんでしょ?」


例えばテーブル席の隅の一角。

槍を傍らに置いた、佇まいの静かな痩せた男が、水の入ったコップだけをテーブルに置いて腕を組んでいる。


例えば2階の手摺に凭れ掛かったやる気の無さそうな偉丈夫。

ボーッと1階を眺めているように見えるが、その目付きだけが鋭い。


「……凄いですね。初めて来られて見破られた方は、わたしの知る限りマナカさんが初です。ご察しの通り、トラブルの際には彼らが対処することになっています」


やっぱりそういうことなのね。

さっきの騒ぎで介入しなかったのは、俺達の実力を見抜いていたか、あの3人組に思う所が有って既成事実が欲しかったとかかな。


「まあ、問題さえ無ければ良いわけだ。スッキリしたところで、説明をお願いできるかな?」


「はい。それでは説明いたしますね」


それからフィーアさんに、冒険者稼業をする上での諸注意を教えて貰った。



・ギルドカードの偽造は不可能。未遂であっても発覚した場合は、犯罪奴隷となるか、最悪は死罪。


・カード紛失時は、速やかに最寄りのギルドに届け出ること。再発行には小金貨2枚が手数料となる。


・依頼の不実行期間が一定期間経つと、ギルドカードは効力を失効する。登録も抹消となり、再登録には金貨1枚が必要となる。


・失効猶予期間はランク毎に定められており、ランクが上がる毎に期間も長くなる(初期のHランクは1ヶ月)。これは、高ランクになるほど依頼の難易度が上がり、準備や遂行に時間が掛かるためである。


・依頼のキャンセルまたは失敗時には、違約金が発生する。大体の相場は、依頼料の1割である。緊急事態――高ランクの魔物の乱入など――には、情報を精査した上で酌量あり。


・依頼達成報酬の内2割は、冒険者ギルドへと納める。これには依頼の仲介手数料と、税金が含まれる。(例:達成報酬金貨1枚の場合、小金貨2枚が引かれ、8枚が手取りとなる。依頼遂行中の経費は対象外。飽くまで達成報酬からのみ引かれる。)


・依頼受注は、自身のランクの上下1ランクの範囲のみ受注できる。パーティー受注の場合は、最も高ランクの者に準拠する。


・依頼には期限が在り、依頼毎に定められた期限内に達成できない場合、失敗扱いとなる。(期限の無い常設依頼も存在する。)


・ランクアップには、採取系、討伐系、奉仕系の3種類の依頼を、定められた回数達成することが必要。上級冒険者であるBランク以上に上がるには、それらに加えて試験を受ける必要が有る。(多大な功績が有り、支部長以上の上層部が承認した場合は、これに限らない。)


・冒険者が犯罪行為を犯した場合、発覚した時点で登録は抹消、以降の再登録は不可能となる。


・冒険者の犯罪行為が明るみに出なくとも、カードの性向値が【-15】になった時点で、カードは効力を失効する。その状態で使用しようとしても、即座に犯罪者として捕縛される。


・冒険者の私闘は禁止。罰則金の対象となる。合意の下での決闘や、正当防衛が認められる場合はこの限りではないが、事情聴取への協力は強制である。



こんなところかな。

詳しくは此方をってことで、冒険者の心得的な冊子も貰ったし、一応後で確認しておこう。


まあ要は、期限を守って、他人(ひと)様に迷惑掛けんなってことだな。


「うん、よく分かったよ。丁寧にありがとう」


実際分かり易い説明だったからね。

俺だって素直にお礼を言うことはありますとも。


「い、いえ……それで、マナカさん。よろしければ、この後模擬戦を受けていただきます。あなた方には必要無いかもしれませんが、当方で登録冒険者の実力を把握する目的も有りますので、ご協力をお願いします」


実技試験ってとこか。

まあ、有ることは知ってたから、文句は無いね。


「了解だ。何処でやるの?」


「ギルドの地下に修練場が在ります。そちらにご案内します。一旦ギルドカードをお預かりしてもよろしいですか?」


どうやら待たされる心配も無さそうだし、素直に3人分のギルドカードを手渡し、受付を交代して先導するフィーアさんについて行く。


地下修練場には、1階奥の通路から階段で繋がっているらしい。


降りてみると、高い天井に広い石造りのフロア。

壁も厚い岩盤で覆われていて、ちょっとやそっとじゃあ音も衝撃も上に漏れない造りになっていた。


フロアの隅には木製の人型やら、訓練用らしい木剣や刃を潰した金属武器等が並べられている。


直剣に刀、短剣、片手斧、戦斧、戦鎚、長槍、短槍、薙刀、斧槍、メイス、モーニングスター、短弓、長弓、弩弓etc、etc……


中には鎖鎌やら、手甲鉤など、使う奴居るの!?って類の物もチラホラと見受けられる。


「お待たせしました。あなた方の実力を勘案して、元Aランク冒険者だった方達に試験官をお願いしてきました。彼らは引退こそしたものの、ギルド職員の一員として、日夜情報収集等に携わっていますので、腕は確かです」


見学していたところに、そう言って3人の男達を引き連れて、フィーアさんが戻って来た。


ふむ。

確かに、上の酒場で屯していた連中に比べれば、佇まいにも雰囲気が有るね。


「試験は一騎打ち、真剣にて行う。時間は無制限。降参か、気絶等続行不可能と判断されるまでだ。事故ならば兎も角、故意に相手を殺害した場合は即座に登録は抹消させてもらう。質問は?」


真剣での試合ね。

スキンヘッドの厳つい男が説明する。


「武器は自前で良いのかな?それともあの並んでる中から?」


「自前で構わん。お前らは実力は確からしいからな。俺達も自前の武器を使わせてもらう」


俺の質問にそう答え、それぞれに武器を取り出す男達。


大剣、長槍、双剣か。


頷きを返して、双方の準備が整う――――


「ちょっと待てよ。獣人の姉ちゃんの扇は兎も角として、お前はなんで素手なんだ?それに鬼人族の姉ちゃんの()()は、いったい何なんだよ?」


まあツッコまれますよね。


「あー、俺もシュラも基本は素手の格闘戦が主体なんだよ。俺は魔法も使うけどね。シュラのこれは……膂力が高過ぎるから、模擬戦の時はいつもこの【猫パンチグローブ】と【猫キックブーツ】を着けさせてるんだけど……問題有るかな?」


俺の素手も大概だけど、毎度ご活躍の肉球の可愛らしいこの装備は、やはり異色に映るようだね。


「素手だって?!おいおい、そりゃあいくら何でも舐め過ぎじゃねえか?」


まあ、武器を持った相手に素手で挑むのは、正直狂気の沙汰だとは俺も思うよ?


でも俺やシュラには剣の心得なんてモノは無いし、しょうがないじゃん?


「別に舐めてなんかいないよ。シュラ、1回見せてやろう」


「うむ。仕方ないのう」


そう言って片手だけグローブを外させて、2人で並んで立つ。


「せーのっ!」


そして2人同時に、石造りの頑丈な床に、拳を叩き込んだ。


「……………………………………」


俺の拳は綺麗に肘まで床にめり込み、シュラが殴った箇所は、そこを中心にちょっとしたクレーターのように抉れている。


おやおや皆さん、言葉も無いようで。


「ね?だから俺は兎も角さ、手加減の下手なシュラには、相手を瀕死以上にさせないこのグローブとブーツが必要なんだよ」


お分かりいただけただろうか。


「あー……因みに、獣人の姉ちゃんの扇は……?」


「ああ、あれは鉄扇とは言っても素材は魔黒金(アダマンタイト)だし、勿論刃も付いてるよ。アザミ、見せてあげて」


「はい、マナカ様」


返事をしたアザミは、フロアの隅の木製の人型と、鋼鉄製の鎧を此方に持って来て、人型にその鎧を装着する。


「では、参ります」


徐に、なんの力みも無く扇を一閃。


その開いた扇をパチリ、と閉じると、人型は肩から横腹に筋が通り、ズレ始め、やがてふたつに分かれて上側が床に落ちた。


うん、人型も微動だにしてなかったし、腕を上げたね。


「まあ、こんなところかな?問題無いよね?」


そう言って試験官の男達を振り返ると、全員顔が真っ青だ?


「おいフィーア!どこが()()()()だよ!?それどころか思いっきり化け物じゃねえか!?」


「こんなのS級の連中じゃないと相手になんねーだろ!?」


「無理無理!文句無し!冒険者登録完了おめでとう!!試験は終了だ!!!」


あれ?

おーい?


アタフタするフィーアさんを置いて、俺が引き止める間も無く、彼らは逃げるようにして、修練場から退出して行ってしまった。


「えーと、フィーアさん……?」


「あ、あははは……お、お聞きした通り、これで登録作業は完了……みたい、です……?」


いやめっちゃ疑問形じゃないですか!?


え、いいの!?

ホントにこれで試験終了!?


「で、では改めて、皆さんのギルドカードをお渡しします。申し遅れましたが、本日よりマナカさん達の担当になります、フィーアと申します。何か質問や確認事項、問題等有った時は、いつでもご相談ください」


俺の心の声を華麗にスルーして、カードを渡してくるフィーアさん。


うん、マジでこれで良しとするつもりらしい。


なんだか煮え切らない思いを抱えつつ、3枚のカードを受け取るのだが……


はっ!?

殺気!!??


慌てて振り返ると、肩透かしを受けて見事に落胆し、怒気を滲ませているシュラさんが居ました。


「主様よ……儂のこの、行き場を失った闘志は、何処へ向ければ良いのじゃ……」


これアカーン!?


落ち着けシュラ!?

帰りに魔物の巣にでも放り込んでやるから!

なんだったら俺のダンジョンで暴れて良いから、今は落ち着け!?


「主様……勿論主様が、相手をしてくれるであろう……?」


あ、はい。


これは断れないっす。

ムリムリの無理やね。


帰ったら、存分に相手をしてやろう……


はぁ……




悪魔だけど冒険者な兼業ダンジョンマスターの爆誕です。


真日さんの冒険のステージは、どうやらダンジョンには収まらないみたいですね。


……ほのぼのどこ行った?



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― 新着の感想 ―
[一言] ほのぼのなんて最初からなかったんですよ... だってはじめの方からゴブリン大虐殺してますし。
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