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第二話 この無礼者があっ!!

いつもお読みいただき、ありがとうございます。


これからもよろしくお願いいたします。


m(*_ _)m


〜 ダンジョン【惑わしの揺籃】 六合邸 リビング 〜



「うんそう。こっちの受け入れ体制は大体OKかな。あとは、ダンジョンから砦を領域で繋いで、入口の転移施設を造るくらいかな〜。」


 現在俺は、家のリビングに安置しているダンジョンコアで、姫さんに渡したダミーコアとを繋いで情報交換している。


 実はこのダミーコアだが、単なるコアの偽物や囮ではなく、生成時にオプションを付けることができたのだ。それに気付いた俺は、王都との連絡用として、通信機能のみをオプションで加えて生成し、姫さんに渡したのだ。


 まあ、姫さんの仲間が使っている、通信用の術具みたいな物かな。

 ダンジョンコアとダミーコアはパスで繋がっているため、どれだけ離れても通信出来るという点は違うけどね。


『なるほど。この短期間でよくそこまでできたな。迷宮の権能というのは、本当に恐ろしいものだな……』


 まあねえ。これって、ぶっちゃけこれ神様の能力と一緒だと思うのよね。


 まあ神様は世界っていう超巨大な舞台で全能で、ダンジョンマスターはダンジョンの中でのみっていう規模の違いはあるけど。


 あ、ちなみにだけど、移民を受け入れる街の名前は、【幸福の揺籃(ウィール・クレイドル)】に決定しました!

 決定も何も、また姫さんに考えてもらっちゃったんだけどね。

 満場一致だったから良いのだ!


『こちらも、第一弾の移民の募集を締め切ったところだ。選考により多少は減るかもしれんが、今のところ最初の移民団は1000人程だと思っていてほしい。』


 ほーう。よく1000人も集まったな。もうちょい二の足を踏むと思ってたけど。

 迷宮で暮らすなんて! とか、魔族なんか信用できない! とかさ。


「了解だ。思ったより多くて驚いたよ。」


 素直な気持ちを姫さんに伝える。

 きっと、それだけ姫さんとか国王様とかが頑張ってくれたんだろうね。


『あー、それなんだがな。移民に希望した者達なんだが、どうも女性が多くてな。流民や難民を除いた、その大半がマナカに感謝を伝えたいと言っていたそうだ。』


 あん? なんじゃそら?


「え、どういうこと? 俺そんな感謝を言われるようなことしてないぞ?」


 俺がやったことなんて、ほぼ裏工作ですけど?

 あとは、ズタボロでドナドナされたのと、ブチ切れて元王太子を殺し掛けたくらいだぞ?


『どうも、王太子の廃嫡が理由らしい。なんでも、その感謝を伝えている女性達は皆、兄上の道楽の被害に遭った者達らしくてな。兄上の失脚に胸を撫で下ろしたらしいのだ。兄上の手癖の悪さには、我等家族も家臣達も度々苦言を呈していたのだが、治っていなかったようでな……』


 あー。アイツ女癖悪そうだったもんなぁ。

 あの時もアネモネ達に対して下衆なことを……!


 やべ、思い出したらムカムカしてきた。

 今から元王太子(ウィリアム)んとこ行って、前歯全部折ってこようかな?


『それでだ。そんな被害女性達が、お前の役に立って恩を返したい、新天地で心機一転、新たな人生を歩みたい、と訴えてきたそうだ。』


 はー、なるほどねぇ。

 知らず知らずの内に、彼女達の無念を俺が晴らした事になってるわけだ。


「そりゃあ願ってもないし、恐縮だが……アイツ、そんなに沢山の女性に手を出してたのか?」


 お盛んにも程があるだろうが。

 まあ、王太子って身分にあの見た目だからなぁ。声を掛ければ入れ食いだったかもだけど。


『そうだな。今回の1000人中、200人程が被害女性らしい。まったく、身内の恥を数えさせられた気分で、頭が痛かったぞ……!』


 にひゃっ!!?? バッカじゃねえのアイツ!? そりゃ恨まれるだろうよ!


 て言うか継承権1位の王太子がそこまで遊興に耽ってて、この国大丈夫だったのかよ!? アイツに国王継がせなくてマジで大正解だったわ!!


『そういう訳だ。移民団がそちらに着いた暁には、時間を取って彼女達の想いを受け止めてやって欲しい。そうすれば、彼女らが前を向き直すキッカケになるだろうからな。』


 そりゃまた責任重大だなおい。


 でもまあ、それでその娘達が前向きに生活できるってんなら、会って話を聴くくらいどうってことないか。


「まあ、多かれ少なかれ、俺が彼女達の人生を変えたようなもんだしなぁ……OK、分かったよ。キチンと話を聴いて、前を向いて生きられるように応援するよ。」


 そう返事をした途端、ダンジョンコア越しに小さくない溜め息が聴こえる。


『それを聞いて安心した。よろしく頼む、マナカ。』


 姫さんにとっても頭の痛い問題だったんだろうな。

 言ってみれば身内の恥、立場が立場だけに、他国に漏れれば国の恥になるところだったわけだしな。


 国王様、王位を渡すのを渋ってたって聞いたけど、英断だったんだな。

 やっぱりあの王様は人を見る目が有るよ。敵に回さなくて良かったと、心底思う。


 あ、そういえば。


「そういや、姫さん。結局元王太子(ウィリアム)の処遇って、どうなったんだ?」


 確かあの時捕まって、身分を剥奪されてからずっと捕らえられたままなんだよな?

 国の汚点に成りかねない存在だ。甘い沙汰は下らないんじゃないか?


『…………家臣達は、処刑を望んでいる。事が国への謀叛だからな。相応の報いを与えねば、他国へも示しが付かない、とな。だが…………』


 そりゃあ、苦しいよな。国のためとはいえ、好き好んで身内を殺したい訳ないよな。


 きっと国王様もそうなんだろう。だけど、国王という立場がそれを許さない。


「嫌なんだよな? 姫さんも、国王様も。立場が邪魔をしているだけで。」


 彼女の胸の内を敢えて言葉にしてやる。


『っ! 当たり前だろう!! あんな下衆な男でも、血を分けた我の兄上だ! ……父上も、本心では処刑などしたくないに違いない。だが、我等は王族なのだ。家臣の貴族達や国民達に、常に(しるべ)となる厳格な姿勢を見せねばならんのだ!』


 打ち明けられる痛々しい想い。その泣きそうな震える声は、容易にその悲しい表情を俺に想像させる。


「…………よっしゃ! なあ姫さん。俺、今からそっち行くから、国王様との謁見の支度頼むよ。」


 思い立ったが吉日ってな。姫さんが悲しむ時間なんて、即座に終わらせてやるさ。


 …………ま、俺のためでもあるし。


『は? い、いやちょっと待て! 今からだと!? 用向きは? 時間は!? 何と言って進めれば良いのだ!?』


 慌てふためく姫さん。うん、その姿が目に浮かぶようです。

 でもまあ、詳しくは会ってからで良いだろう。


「とりあえず、俺がお願いしたい事があるってだけ伝えといてくれ。時間は、そうだなぁ……全力で行くから、4時間くらい後でよろしく頼むよ! あ、今回は堂々と行くから、普通の謁見で良いって伝えといてね!」


 そうと決まれば、善は急げだ。

 えーと、ついでだから物資も持ってくか! あとはアネモネ達に声を掛けて……あ、あれも借りてくか!


『おい、マナカ?! 聞いてるのか!? おいっ!!??』


 悪いね姫さん。俺は自分勝手だからさ、今は姫さんの小言は聞いてあげないよ。




〜 王都ユーフェミア 外壁 中央門 〜



 はい! やって参りましたユーフェミア!

 いやあ、全力で飛んだら早い早い。僅か3時間足らずで着いちゃったよ。


 ちなみに、今回もアザミが同行しております。


「マナカ様……少々着いて行くのが大変でしたが、それほど大切なご用事が有るのですか?」


 うん、アザミさんはだいぶお疲れのようです。

 そりゃあ、最初の時と比べれば、姫さんを背負ってないんだから早いに決まってるよ。


「まあ、大事な用というか、我儘を言いに来たというか……それよりアザミ、急がせて悪かったな。お疲れ様。」


 頭を撫でて労う。アザミも息が調い、大人しく俺の手を受け入れている。


「さて、王都まで来たは良いけど、この行列を待たされるのも嫌だしなぁ。貴族用の列に行くか。」


 一応国王と謁見する客だしな。

 都市への入場待ちの列を横目に、アザミを連れて貴族用の入場列へ移動する。


 その際スムーズに進めるよう、俺の角や、アザミのケモ耳とケモ尻尾を魔法で隠蔽するのも忘れない。


 そうして、一般入場口とは比べ物にならない早さで俺達の番がきた。


「止まれ! 此処は貴族や国賓用の入場口だ! 一般人は向こうの列に並び審査を待て!」


 門の番兵に案の定停められました。だけど、こちとらちゃんと王様に用事が有って来てるからね。

 槍を交差して通せんぼしている彼等には悪いが、通してもらうとしよう。


「これはすみません。無用の騒ぎを起こさないために、こうして来たのですが……」


 そう言って、俺だけ角の隠蔽を解く。


「ま、魔族だとっ!?」


 すぐさま迎撃態勢を取り構える門番さん。

 俺は手を振り、宥めるように声を上げる。


「待って下さいよ。当方に、危害を加えるつもりはありません。責任者の方に、迷宮の主であるマナカが来たと、お伝え願えませんか?」


 言うが早いか、後方に居た兵士が門の脇の詰所に駆けて行くのが見える。

 それを確認し、再び角を隠蔽する。


 待つこと暫し。


「こちらに来い。いいか? くれぐれもおかしな真似はするなよ?!」


 伝言を伝えられ、俺を阻んでいた兵士が舌打ちと共に構えを解き、案内してくれた。


 いや、舌打ちはどうなのよ? 流石の温厚な俺もちょっとイラッとしたよ?


 ちょっ!? アザミさん顔が怖いよっ!? 落ち着いて!!??


 アザミを手で宥めつつ、兵士の後に続く。

 そして詰所の扉を潜ると、そこには厳つい顔をした、ムキムキなチョビ髭のおじさんが苦い顔で座っていた。


「警備隊隊長のオルドだ。貴殿がかの迷宮の主、マナカ殿というのは本当か? 証は有るか?」


 特に席も勧められず、入室と同時に声を掛けられる。


 本当だったらどうすんのよ? 無礼を咎められるのはアンタだよ?


 そんな嫌味を思うが、それは億尾にも出さずに。


「証、と言われましてもねぇ。生憎と、俺にはこの2本の角しか己の身を証す物がありません。あ、でしたら彼女に頼みましょうか?」


 隠蔽を解きつつ語る。

 そして振り返り、アザミの隠蔽も解いて、さらに人化を解くよう命じる。


 即座に光に包まれるアザミ。部屋の中の警戒が一気に高まるが、身振りで宥める。

 そして現れる、九尾の狐。


「どうですか? 彼女の姿でしたら、割と有名なのではないでしょうか?」


 呆気に取られ口を開いたままの警備隊長に訊ねる。


「尾が9本の白銀の狐……! 確かに、先の動乱で王城を襲撃し、国王陛下と王女殿下を囚われの身から救い出した、あの時の魔獣だな……」


 おや、どうやらこの人も目撃していたらしい。それなら話が早いね。


「彼女の名はアザミ。俺の配下で、仰った通り、陛下や殿下を救い出した、先の動乱の立役者です。信用していただけましたか?」


 再び人化し、獣人の姿となるアザミ。

 隊長は、それを驚きと共に眺め、ややあって大きな溜め息をつくと、


「城に伝令を送る。遣いが来るまで、此処で大人しくしていてくれ。」


諦めたようにして、ぶっきらぼうに窓際のテーブルを勧めてきた。


 よしよし。これでお迎えも来るし、一件落着だね。


 勧められたテーブルに着き、無限収納(インベントリ)からティーセットとお菓子を取り出す。

 俺とアザミの分をカップに注ぎ、休憩がてら寛がせてもらう。


「マナカ様、このような面倒なことをせずとも、直接王城まで飛べば良かったのでは?」


 俺が差し出したティーカップを受け取り、そう訊ねてくるアザミ。

 いやいや、そうもいかんでしょう。


「ダメだよ。俺達とこの国は、言わば対等の立場だ。盟約を結んで友好を誓った以上、礼を欠いた行動は、今後の俺達と王国の関係に少なくない影響を与えるからね。


 火急の用事なら兎も角、ちゃんとアポを取って、且つ余裕を持って着いたんだ。正規の手順通りに受付を通って行った方が、余計な反感を買わないで済むってもんさ。」


 言って聞かせつつ、マナエ作のガトーショコラを食べる。うん、また上達したな!


 生地はフワッと柔らかくも、しっとりしていて舌触りが良い。甘過ぎず適度なカカオの苦味も感じ、クドさを感じずに次々に食べられそうだ。


 有り体に言ってとても美味しい。


「ほら、アザミも食べてみろよ。マナエってば、また腕を上げたぞ?」


 そう言ってのんびりと、アザミにも菓子を勧めて、一緒にお茶を楽しむ。


 室内の警備隊の面々の視線が割と険しいが、そんなもんは無視だ。


 そうして、しばらくの間ティータイムと洒落込んでいた俺の耳に、騒がしい声や足音が飛び込んできた。


 騒音は徐々に近付いて来て、詰所の扉の向こうに到達すると、壊れるんじゃないかという勢いで、大きな音を立てて開く。


「此処かマナカ!! まったくお前という奴はいつもいつも! 少しは振り回される我の身にもなってみろッ!!」


 扉に恨みをぶつけるようにして勢い良く開けて登場したのは、姫さんだった。


「ふ、フリオール王女殿下!!??」


 警備隊長(オルドさん)を筆頭に、室内の警備隊の面々が慌てて襟を正して跪く。


 しかしどうやら、姫さんはそんな彼等は眼中に無いようで。


「到着時間と、手続きの方法の確認くらいせんか!! そもそも通行証も渡しておらんというのに、どうして堂々と門を通ろうとしているのだ!? 我はてっきり城に直接来るのだと思って、城門前でずっと待っておったのだぞ!?」


 わーお、姫さん怒涛の剣幕でございます。

 そういえば何かで来る必要がある時のこと、相談するの忘れてたね。


「お、落ち着けって姫さん! 悪かったって。できるだけ急いだ方が良さそうだと思ったからさ、つい色々すっ飛ばしちゃったよ。ごめんごめん!」


 どうどう。落ち着くのだ姫さんよ。

 そんなフシャーッて威嚇する猫みたいに睨まないでおくれよ。


「やはり、直接城に乗り込んだ方が良かったようですね、マナカ様。」


 う、うるさいよアザミくん!


 何はともあれだ。こうして姫さんが迎えに来てくれた以上、こんな居心地の悪い部屋とはおさらばだな。


「まあまあ姫さん、そう怒るなって。ほら、さっさと城に行こうぜ? 姫さんにも、マナエの手作りお菓子をお土産に持って来てるからさ。」


 姫さんの背を押し、歩みを促す。

 うん、まだわーだのきゃーだの喚いてはいるが、一応素直に先導してくれた。


「誰のせいで怒っていると思っているのだ、まったく…………まあいい。馬車を表に待たせてある。乗ったらすぐにマナエの手作りお菓子を出せ。いいな?」


 はいはい。仰せの通りに、フリオール王女さま。


 そうして、多少のゴタゴタはあったにせよ、俺とアザミは無事、王都への入場を果たしたのであった。




フリ「美味い!マナエはまた腕を上げたな!」


真日「ふっふっふっ。そうだろうそうだろう。なんてったってマナエは天才だからな!」


フリ「まったくだ。お前の妹だというのが未だに信じられんぞ」


真日「あん?どういう意味だおい?」


フリ「そのままの意味だな。お前のような粗忽者と、あの天使のように愛らしいマナエが兄妹などと、とても認められん、と言ったのだ」


真日「おおん?さてはお前喧嘩売ってやがるな?受けて立つぞこら?」


フリ「望むところだ愚兄め。お前を捩じ伏せ、今度こそマナエを救い出し、我が幸せにしてやるのだ!」


真日「上っ等だこのヤロウ!俺が勝ったらマナエのお姉ちゃん呼び、止めさせるからな!?」


フリ「な、なんだと!?貴様……やって良いことと悪いことがあるだろうが!!??」


真日「知らんなそんなこと!俺とマナエの絆を邪魔する者には、俺は一切容赦せんのだ!!」


フリ「くっ……!この、悪魔めがぁっ!!」


真日「その通りだこの人間め!悔しかったら俺に力を示して見せるが良いわ!!」


アザ「あ、最後のひとつですね。いくら食べても飽きが来ない、丁度いい甘さです(モグモグ)」


真フ「「なん…………だと!?」」



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― 新着の感想 ―
[良い点] 身の証を立てるものを用意せずに、敵対種族の証を見せておいて、 俺が本物だったら無礼だぞなんて、まともな仕事をしてる人を貶したりするとは。 悪魔だ悪魔がおる、悪魔でしたね。 [一言] 3時間…
[気になる点] 先日この作品を見つけ、ここまで読みましたが勿体ないなぁと。 最初から頭空っぽ主人公で周りの登場人物がサポートして補っているのであればまだ分かる流れなんですけど、中途半端に王子達の事を予…
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